「東京タラレバ娘」という漫画がある。
ドラマ化するほどのヒット作品で、知っている人も多いだろう。
ざっくり言うと、アラサー婚活女が
「あの時の彼がもう少しダサくなかったら...」
「あの時の彼とうまくいってれば...」
などとタラレバ言いながら、うだうだと結婚できずに迷走する話である。
さて、そんな婚活迷走中の倫子(33)が7巻にしてついに、大変居心地の良い男とお付き合いすることになった。
その男は、倫子が20代前半の頃ダサすぎるという理由で一度振った男・早坂である。
時の流れの洗礼を経て男の振る舞いは洗練され、でもあの頃の優しさはそのままに、早坂は倫子の前に帰ってきたのであった。
7巻の前半では、早坂との「普通」で「安心できる」日々が描かれる。
早坂も元々結婚に乗り気であったため、トントン拍子に話が進む。
49ページ目には
鎌田倫子 33歳
怒涛の数ヶ月を経て
おさまるべきところにおさまりました!!
と書かれている。
この一コマを持って、倫子の婚活は終わりを告げられたかのように見えた。
しかし、である。
酔った勢いで優勝して以来、倫子がずっと気になっていた男がいた。
モデルのkeyという男である。
一度は優勝したものの、その後はそっけない態度を取られ続けていた倫子だった。
しかし、婚活仲間たちが、「keyは実は倫子に想いを寄せていた」ということに気付く。
そして、
「ごめん倫子 状況が変わった」
と、頼まれてもいないのに他人の恋愛に首を突っ込むアラサー仲間の登場で7巻は終わる。
彼女たちは、同棲先のマンションに、keyが倫子に思いを寄せていることを伝えにきたのだ(本当に彼女たちは倫子の幸せを願っているのだろうか?)
その後の展開が描かれる第8巻はまだ発売されていないのだが、kissという女性向け雑誌の情報が少しだけ漏れていた。
タラレバ娘7巻が発売と聞いて早く読みたいんだが、こないだkiss立ち読みしたらすごいことになってた pic.twitter.com/7m16Tf9X4H
— ゴッホ (@goph_) 2017年1月14日
ちなみにkissを立ち読みしているゴッホなる人物は、おっさんである。
結婚を前提に、というか、結婚確定の付き合いを進め、優しく誠実で思いやりのある彼と同棲の準備までしている倫子は、なんと、浮気をしたのだ。
このシーンを見たら、世間の人は
結婚できそうだったのに、この女は本当にアホや
優しい彼の信頼を踏みにじるダメ女
のように罵倒するかもしれない。
しかし、彼女の行動は女性の心理を見事に表現したものだと僕は思う。
これまでの人生でたくさんの女の子と関わってきた。
その経験からほぼ確信を持って言えるんだけど、優しくて誠実なだけの男は、マジで簡単に浮気される。
恋人を第一に想い、仕事もできて、誠実で、優しく、大切にしてくれる彼氏。
文字にすると、どう考えても理想の彼氏である。
冷静に考えて、これ以上の条件はないように見える。
しかし、ここには足りない条件があるのだ。
恋人を第一に想い、仕事もできて、誠実で、優しく、大切にしてくれる彼氏で、
かつ、
異性としての魅力を感じ、尊敬できる要素がある。
後者を指して、俗に膣キュン要素というが、これがないと、優しい彼氏はしれっと浮気される。
そして、彼女は彼女で浮気相手に本気になってしまう。
彼氏は心の安定のためにキープするけど、いつも会いたいのは浮気相手。
カッコよくて、ドキドキする浮気相手と優勝してからは、彼氏とは試合したくなくなった。
なんて女の人を僕はたくさん見てきた。
一緒にいて楽で、素でいられる相手は貴重かもしれない。
(「東京タラレバ娘」第7巻より)
でも、
「あの人のために可愛くなりたいな」
とか、
「もっと綺麗な自分を見てほしいな」
とか、そういう風に思えない相手は結局ダメなんじゃないだろうか?
そもそも君たち、この首にタオルを巻いたショボ眼鏡に抱かれたいと思うか?
思わないだろう。
(「東京タラレバ娘」第7巻より)
優しくて一途な彼氏は素晴らしい。
世の中の恋愛アドバイザーは皆一様に、
「自分を大切にしてくれる人を選びなさい」
と言う。
それはたしかに正しいけれど、ちょっと言葉が足りない。
「自分を大切にしてくれて、かつ、追いかけたくなるような男が最強」
というのが実際のところだろう。
「追いかけたくなるような男」はなんだかんだモテる奴が多いので、うまくいかないことが多い。
それでもなんだかんだ、会った時に安心するだけの男よりも、ドキドキしてしまう男と会ってるときの方が、女の子はいい顔をしてるんじゃないかと思う。
逆に言うと、男は優しく尽くすだけじゃダメで、つい追いかけたくなるような、たくましさを持たなければならないということなのだろう。
- 作者: 東村アキコ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2017/01/13
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログ (2件) を見る