俺の遺言を聴いてほしい

これは俺の遺言だ。

デートで会計は男が支払うべきか、割り勘にするべきか。

「ネットは会うまでが勝負だ。会ってからは、よっぽどのミスが無い限りは勝てる闘いなんだ」

彼はそうつぶやいた。

「ネットでの出会いは勝てる闘いだ」と彼は言った。
会うまでが勝負で、会ってからの勝率は8割を越えるらしい。

理由は「出会いを求めていないストリート」と違って、「相手も出会いを求めているから」だという。
彼氏とラブラブしている女を落とすよりも、出会いに飢えて彼氏を求めている女のほうが落としやすい。

僕はネットを通じて初めてのアポに、心躍らせた。


20時の待ち合わせ。
そこにいたのは、写真よりも可愛らしい女の子だった。

高校のクラスだと、40人中3番目くらいには入るだろうか。
僕の胸は高鳴った。これはもしかして...恋?



「会った瞬間に、主導権を握れ」

彼は口を酸っぱくして言っていた。
主導権主導権うるせえよ、と思ったが、それが恋愛の達人になるための第一歩らしい。


「主導権を常に握らないとダメなんだ。」

僕は見よう見真似で、主導権を握りにかかった。

「お疲れ~!写真よりかわいいじゃんw
誰かわからんかったわw
てゆか、約束どおりかわいいスカートはいてきてくれたねw」

「ふふふ」

彼女は失笑した。

「ありがと。君はいい子ねー(おどけた風に)
いい子な君を日本で3番目にうまい焼き鳥屋に連れてってあげる。じゃあ、行こっか」


感触はまずまずだった(ように感じた)


歩きながら、他愛もない話をした。
終始、主導権を握ることを意識した。

お酒を飲みながら、仕事の話を聞いては、

「大変じゃない?」

「逆に、大変じゃない?」

という『大変じゃない理論』を実践した。
大変じゃない?と聞くことで、なんだか相手と同調しているような気分になれる必殺技だ。

恋愛の達人の彼が教えてくれた。

また、過去の恋愛遍歴を聞き出すことも忘れなかった。

その子は、過去の恋愛経験から、男を素直に信じられなくなっていたそうだ。

僕は恋愛の達人マンのセリフをパクった。

「いいな、って思った人には、思い切って飛び込んでいくのも大事だよ。
A子は自分から壁を作っちゃってるから。

最初から壁を作られたら、どんなにいいなって思ってもこっちは辛くなってしまう。
だから、ダメな理由を探すんじゃなくて、いいところを見て。

いま、一つだけ、壁を壊してよ。そしたら、もっと仲良くなれると思うんだ」

彼女の価値観を刺激しつつ、ラポールを築いていった。
ラポールというのは、信頼関係のことだ。NLPという学問の中で使われる。

慎重に、積み木を積むようにラポールを気付く。
でも時々、積み木を崩すみたいに乱暴に。

会計の時間になった。
彼女がトイレに行っている間に会計を済ませたが、カードの返却が遅く、ちょうど支払いの内容を見られることになった。

彼女は財布を取り出した。

どれだけお金を払ってもらうかは、人の価値観によると思う。

達人はこう言った。

「世の中には、女に奢りたい奴もいれば、奢らない奴もいる。
絶対やっちゃいけないのは、女に高い飯を奢ることだ。

そこで非モテの認定を受けてしまう。

目的を忘れてはいけない。

逆に、お金を払ってもらったからって、それで『できないか』と言われたら全くそんなことはない。
むしろ、払ってもらったほうが、成功確率は高まる。

でも、お前は払ってもらうのをためらってるんだろ?

じゃあ、こう言うんだ」


僕は、財布を開けようとするA子に、彼の必殺スクリプトを使った。

「A子。
お金はね、そんなにいらないよ。

じゃあね、3つ選択肢あげる。
もし今、俺のことすごく良いって思って、今日はもう一緒に帰りたいと思うくらい気持ち動いてるんだったら、500円だけちょうだいw
それだけでいい。

俺のこと、悪くないなって思って、また話したいなって思ってたら、1,000円もらっていい?

こいつとは二度と会いたくねぇって思ってるなら、半分の2,000円ちょーだい。
きっちり割り勘でキッパリお別れできるじゃないか」


彼女は2,000円を僕に渡し、まっすぐ駅に向かっていった。


脳と言葉を上手に使う NLPの教科書

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