俺の遺言を聴いてほしい

これは俺の遺言だ。

「デートした女の子を部屋に誘う方法」を恋愛の達人に聞いてみた。

「魂を吸い取られるような、出会いだってある。

当たり前だ。世の中には色んな奴がいる。
会社にいるような、面接で選ばれたような人間ばかりではない。

世の中には、男をすべて疑ってかかり、出会う男の魂をすり減らすような女もいる。

まぁ、交通事故みたいなもんだな」


恋愛の達人は笑いながら言った。


それにしても、先日会った子はひどかった。
会った女性のことを悪く思うのは、ずいぶん久しぶりのことだ。

僕はあいも変わらず、ネットで出会った子とのデートに明け暮れていた。

その日の相手は大学4年の女の子だった。

待ち合わせは1時間遅刻し、好き嫌いが多く、写真より顔がでかかった。
それでも僕は、主人の帰りを待つ犬のように彼女を待った。

出会った瞬間、彼女の顔が曇ったことを僕は忘れない。
どうやら、好みではなかったようだ。

俺は顔がでかくても愛したいと思っていたというのに!


定番通りの暗い店に行ったものの、会話中はどこか警戒されている様子だった。
会話が弾まない。


どこか違和感があった。


これは...なんだ?

僕の中の金田一がざわつく。

大丈夫、じっちゃんの名にかけて、僕はこの子を落としてみせる!


店を出るとき、ハンドテストをした。
ハンドテストというのは、手をつないでみて、相手の反応を伺うテストのことだ。
恋愛の達人は、ハンドテストの工程を飛ばしてはいけないと言った。

僕は彼のアドバイスに従った。

「ちょっと寒いね」

別に寒くもないし、どちらかというとコートを脱ぎたくなるような日だったけれど、僕は達人のアドバイスに従った。

そしてなんとか手はつなげたものの、どこかよそよそしかった。
触ってはいけない何かを触っているような顔をしていた。


途中、この子は言った。

「明日予定が早いから早く帰らないと」

僕はこのサインを見逃すべきではなかったのだ。

この見逃しが、後の悲劇につながる。

僕は少しだけ納得した顔をして、こう言った。

「少しだけ散歩しよ。バーで一杯飲もう。オシャレで、冷蔵庫に入ったビールが飲めるバーがあるんだ」

バーと言いながら、実は自分の家に行こうと企んでいた。
なんと卑怯な!戦国時代で言うだまし討ちか!

僕は家に帰れば、きっと...などと画策していたが、あっさり見破られた。

彼女は僕の目をまっすぐに見てこう言った。

「その手には乗りませんよ」

「すみませんでした」

僕は平謝りし、彼女はまっすぐ駅に向かって帰っていった。
家に帰り、一人でワインを飲んだ。

赤いワインがどこか苦かった。

恋愛の達人に電話したら、「事故のようなこともある」などと他人事のように言われた。

彼は僕を救う気はあるのだろうか?