俺の遺言を聴いてほしい

これは俺の遺言だ。

経験人数が増えると幸せは増えるのか?→増えない。

4年前に駅で出会った女の子は、俺の人生で出会った女の子の中で最もキレイな子だった。
"偶然"、声をかけることができ、運良く付き合うことができた。
そこには何の計算もなかった。

恋愛の理論を何も知らない俺が、いきなり人生史上最高の女と出会い、完全に浮かれていた。

終始、主導権を握られていたと思う。
一度だってネグることはできなかった。
彼女の相対的な位置付けはどんどん高くなっていった。


結局、天真爛漫な彼女のワガママに振り回され続けて別れてしまったけれど、その後もずっと、彼女との出会いは、俺の人生の中で特別な位置を占めていた。


ドラクエのさまようヨロイのように街を徘徊し、可愛い女の子に声をかけるのがナンパ師だ。

俺は何を求めてさまよっているのだろうか?
彼女の幻影を追い求めているんだろうか?


あのときの俺は、たしかに、「この子がいれば他の女なんていらない」って思っていた。


笑った顔、怒った顔、悲しそうな顔全てが愛おしく思えた。
もうずっと、そんな感情が湧いてくることはない。


ナンパをしていると、自分が驚くほど無感情になっていることに気付く。

どんな子と話しても特別な感情を持つことなく、淡々と仕事をするように会話を進める。

アポが決まった時の飛び跳ねたくなるような胸の高鳴りも。
キスできただけで嬉しくて仕方なかった喜びも。

もう何も感じない。


俺は、ナンパして、いろんな女の子と出会って、幸せになっているんだろうか?


幸せの源になるのは、脳から放出されるホルモンだと聞いたことがある。
俺の脳は、少々の刺激ではホルモンを出さなくなってしまっているのかもしれない。

ナンパを続けると、刺激への耐性がどんどん強くなってきているような気がする。
コーヒーを飲み続けると、カフェインが効かなくなるみたいに。


今は麻酔を打たれた患者みたいだ。
何も感じない。仕事をしているみたいに、ルーティーンを使う。


幸せになるためにナンパをしているのに、逆に不幸に突き進んでいるような気もして、
俺は一体どこに向かっているんだろうという気持ちになってくる。


本当に、幸せになるためにやっている?
それとも、ただ刹那的な刺激を求めているだけ?


未だ答えが見つからないまま、あの頃たしかに見つけた幸せの亡霊を探しに、今日も街をさまよう。

肉体を求めて街を徘徊するゾンビみたいだ。