俺の遺言を聴いてほしい

これは俺の遺言だ。

名古屋のクラブ「iD Cafe」でナンパしてみた。




「落ちている100円を拾わない」

これは、友人と交わした言葉の一つだった。

俺は貧乏症なため、目の前に「美味しいもの」が落ちていたらつい拾ってしまう癖がある。

恋愛も同じだ。
100メートル先に手に入れられるかわからない美女がいるとしても、目の前に手招きしている女がいたらそっちを拾ってしまう。
そんな自分を戒めることが目下の課題だった。
そしてこの記事は、タイトルの通り、戒めを守れなかった自分への反省である。


先週末の結婚式は素晴らしいものだった。
同世代の友人が次々と結婚していく中、俺は未だに街で新しい女の子を引っ掛けようと目論む。

披露宴の丸いテーブルでは、円の半分向こう側の男達は家のローンの話をして、円のこっち側の男たちはニヤニヤと合コンの話をしていた。
家庭を持つ人と、持たない人の人生への責任感の違いを感じた。
羨ましいとは思えなかったのは、俺がまだ結婚に踏み切ることができないという証左だったのかもしれない。

ちょっとしたタバコ休憩中に、結婚式に来ていた新婦側の友人の女の子と話した。
俺はタバコを吸わないが、友達について休憩していたのだ。


「ちょっとその格好寒くない?めっちゃ肩出てるじゃんw」

「や、ほんと寒いんですよw
ってか、お兄さん誰かに似てますねw」

ストリートでナンパするのと大違いだった。
女の子がフレンドリーなことに驚く。
これがアットホーム・アドバンテージというやつなのだろうか。

結婚式場の人たちは、警戒するような相手ではない。
街で話しかける男は基本的には拒絶の対象だが、結婚式場では皆、友人だ。


そして、街で話しかけるよりもずっとずっとハードルが低かった。
女の子も一瞬でこっちに興味を示した。

とはいえ、結婚式の主役は俺ではない。
友人がせっかく招いてくれた結婚式だ。
メインは友人を祝うこと。

結婚式に忍び込み女を口説く殺し屋のような真似をするわけにはいかない。

俺は相手から関心を持たれていることを確認しつつもそれ以上何をすることもなく、会場に戻った。
式は素晴らしいものだった。

昔から知っている二人が無事に結婚し、涙が出てくる。


一次会が終わり、二次会の会場へ流れると、そこでも色んな女の子と話す機会があった。

「XXXくん、チャラいー」
「ノリが軽い」

みたいな、結婚式で言われがちなことを何度も言われ、俺も何も成長していないなと苦笑する。

独身の女はこの軽さを歓迎しているようにも見えた。


ここからがメインの話だ。

二次会の終わり頃、女の子がおもむろに隣に座ってきた。

「もうすぐ二次会終わるね」

隣にいた子は、こちらを見ながら話した。

「このあと、どこか飲みに行くの?」

明らかな誘いだった。

どうやら、2対2くらいで、次も飲みに行きたいらしい。

目の前に落ちてきた100円だった。
1,000円ではない。100円である。

ドレスの丈は短く、細い太腿が見えた。

「ちょwスカート短すぎでしょww
セクシーすぎる人妻w」

なんていじりながら、相手は身体をくねらせる。

しかし、目先の100円を拾うつもりはなかった。

断固たる意志で俺はクラブに行きたかった。
新婦の友人に手を出すわけにはいかないという気持ちもあった。

大事な友人の祝い事だ。
汚い性欲を向けるわけにはいかない。

俺は、彼女たちの誘いを無視し、

「クラブに行くわ」

と断った。

彼女たちは、別の男とどこかに飲みに行ったようだった。

誰でもよかったのかよーーー
と思いつつ、後ろは振り返らない。

俺には、忘年会シーズンの人に溢れたクラブが待ってる。
目の前の100円を拾わなかった自分が、誇らしかった。

結婚式で運命的な出会いを演出するのも夢があるが、結婚式で夢を見るのは俺じゃない。

軽やかな足取りで、クラブに向かう。

前にクラブに行った反省を活かし、一緒に行く友達とは、

「中に入ったら自由に行こう。コンビでもいいし、ソロでもいいし、やりたいことやろう」

みたいな話を事前にしておいた。

友人も快く了承してくれた。


土曜の夜のクラブ。

血湧き、肉踊るこの感覚。

勝利の予感がした。

エントランスにお金を払い、ゲートをくぐる。


ロッカーに荷物を預ける。時刻は2時。

さぁ、ゲームの・・・・


ん?


ロッカールームの出口のところに、女の子が二人話している。
友人はまだ、ロッカーに荷物を入れている最中だった。
待っているのも暇だし、声をかけよう。

スポーツもナンパも、準備運動が大切だ。
クラブの中に入る前に、肩慣らしをしておこう。


「暑そうな顔してどしたのさwもう疲れて涼んでる感じ?w」


急に話しかけられて驚いたのか、目を丸くしてこちらの顔を見てくる。

一目見て安心したのか、女の子が笑う。

「ちょっと疲れて休憩してたの」

「夜はこれからって感じなのにwもう休憩なんw」

なんて軽く話していると、隣にいたもう一人の女の子が言った。

「この子、連れてってください!」


「あーうん、・・・えっ!?」


まさかの隣の女からのお持ち帰り打診だった。

話して3分も経っていない。

極稀にこのような弾丸ケースもあるが、これは珍しいケースだった。
というか、一言も口説いていなかった。

「この子を連れて帰ってあげてください!」

逆に俺も戸惑うが、その動揺を悟られてはいけない。
平然を装って、答える。


「うん、いいよ。じゃあ、外行こっか。荷物取ってこれる?」

彼女は素直に荷物を取ってきた。
ジャストサイズのセーターを着て、胸が強調されていた。

荷物入れスペースから友人が出てきた。

使っていないドリンクチケットを友達に渡す。

「俺の分は、誰かにドリンクを奢るときに使ってくれ」

「お前、早すぎだよーw」

なんて、友と別れの言葉を交わす。

「Good Luck!」

友と再戦を誓い、クラブをあとにした。
クラブ滞在時間は10分~15分程度だった。


彼女と外に出て、初めて名前を聞いた。

「私達、実は何も知らないのに、いいのかなw」


「いいんじゃないでしょうか笑。せっかく静かな外で話せるから、ゆっくりお互いのこと知ろうよ」

名前、お仕事、どこから来たの?みたいな、ありきたりな話をする。

コンビニに入る。


「ビール飲める?」

ごく自然と切り出した。

飲めるー、ってかどこいくの?

二人でビール飲めるとこ。

コンビニの隣のホテルに入り、二人でビールを飲みながら、話をした。

出会った1時間しか経ってないね。

なんでこんなところにいるんだろうな。
さぁ、運命なんじゃないかな。

なんて他愛もない話を続ける。

つい勢いで関係を持ってしまった...。

クラブの入り口から見えた若く可愛い女の子たち。
もっと声を掛けることができた機会を失った。

目の前に落ちてきた1,000円を拾わずにいられなかった夜。

ついてきてくれた彼女(というか、逆に連れだされた)はとてもいい子ではあったが、
後悔の気持ちを拭うことはできなかった。

ミリオンダラーを夢見てクラブに入ってきたのに、つい、目先に落ちてた1,000円を拾ってしまった。
もっと綺麗で、可愛い子はクラブの中にいた。
俺はダンスホールに入ることさえしなかった。


こんなことを言うのはすごく失礼だけど、それでも不完全燃焼の感覚が残ったままの夜だった。



・・・そして、ブログを書きながら、ふとある言葉が頭に浮かんだ。



「女スト師」



ブログやツイッター上で噂に聞いていた存在。

あの手際の良さ。
もしかして、彼女は女スト師だったのかもしれない。

秒速で即られた俺のスト値は底辺だ。

女がスト師になると、どんな女でも凄腕になれるんじゃないかと思った。
彼女はもしかしたら、ツイッターでゲット宣言しているのかもしれない。



「クラブに入ってきた男。
弾丸即。
スト2。
ホテル前でビール買ってくるクロージング使われるも、ぎこちなさが残る。
サイズ☓。テク☓。LTR化は考えられないが、ホテル代払ってくれたからよし。

12月10本目」