初めて六本木ヒルズを見たのは10年前だった。
当時はライブドアショックの影響で、ヒルズ族の凋落が叫ばれたりもしたけれど、田舎の若者にとって、六本木ヒルズは栄光の象徴であった。
六本木ヒルズ・森ビルの前に立ち、天を仰ぐように空を見上げた。
ヒルズの頂上は見えないくらい高かったけど、そのとき抱いた東京への漠然とした憧れは、今でも変わらず胸の中にある。
こんな風に、東京に対して真っ直ぐな憧れの気持ちを持つことができるのは、田舎者の特権だと思う。
千葉の女の子とか埼玉の女の子に東京の素晴らしさを説いても、全く響かない。
やっぱり千葉がいい、埼玉がいい、トウキョウコワイ、と。
たわけが!
トウキョウに恋い焦がれた男がここにいるぞ!
と、言ってもやはり埼玉には伝わらない。埼玉人に東京の魅力はわからないようだ。
さて、最近、某barで連絡先を聞かれた子とLINEをしていたら、
「私、麻布十番に住んでるの(ドヤ)」
みたいなメールが来た。
あまり乗り気ではない俺を食いつかせるには、十分な一言だった。
麻布十番・・・だと?
麻布十番といえば、芸能人が住んでそうで、なんかキラキラとしてそうで、高級住宅がたくさんありそうな駅じゃないか。
asapenさんの名エントリ、
「たどり着かない大江戸線」
というタイトルにある、大江戸線が通る駅でもある。
http://asapen.org/?p=265
そんな大江戸線が通るセレブの街・麻布十番でアポだったんだけど、そのとき行ったのは、
「ファンタジスタ ドゥエ」
という店だった。
http://tabelog.com/tokyo/A1307/A130702/13167230/
六本木に住んでる友達にとりあえず。
「気軽に行けてうまい店を教えてくれ」
とメールして教えてもらったのがこの店。
麻布十番駅の5番出口から出て、歩いて3分くらいのところにある。
行く前に憧れの麻布十番を軽く散歩したんだけど、とにかくコンビニが多い街だった。
犬も歩けば棒に当たるかのごとく、ちょっと歩けばコンビニに当たった。
採算取れてるんだろうか。
麻布十番という響きはカッコイイくせに、意外と庶民っぽい店もあって、駅の近くに鳥貴族を見つけてしまい、少し残念な気持ちになった。
さて、「ファンタジスタ ドゥエ」
店は横並びではなく、普通の正面に向きあう形の配置だった。
カジュアルイタリアンということで、そんなに格式ばった感じでもなく、気軽に入れる感じ。
実際、20時頃に予約しないで行ってもすんなり座れた。
ふたつ横の席では楽しそうな合コンをしていた。
店に入るとメニューを渡される。
一枚目はコースの案内になっていたが、迷わずアラカルトを選択した。
コースは3,000円とか4,000円とか色々あったけど、ピザだけで十分。
ふんわりと焼きあがったボリューミーなピザが出てくるので、二人で半分ずつ食べてもお腹いっぱいになる。
実際、ビールを一杯ずつ、サラダとマルゲリータで、満腹になった。
お会計は二人で4,800円くらいで、リーズナブルに美味しいピザを楽しめたと思う。
出てきたピザはこんな感じ。
ダメな店のピザはペラペラな変な奴が出てくるけど、ここのは厚みもあってとても美味しかった。
サラダは普通。俺はシーザーサラダが好きなんだけど、メニューになかった(笑)
お腹いっぱい食べて、店を出たあとに、
「麻布十番の家でビール飲も」
と麻布十番を強調して聞いてみたら、普通に家でビールを飲むことになった。
部屋はわりかし普通で、麻布十番の狭い部屋に住むなら、もうちょっと違う駅の、広い部屋に住みたいと思ってしまった。
現実は意外と厳しいようだ。
家でビールを飲み、色々とあった後、一緒に外を散歩した。
純粋に東京の街が楽しかった。
首都高の脇から、東京タワーが見えた。
赤く光る東京タワーは、東京の夜を照らすロウソクのようだ。
後ろを振り返ると、俺が昔感動した六本木ヒルズが、あのとき憧れた姿そのままに、威風堂々とそびえ立っていた。
俺は六本木ヒルズに敬礼し、麻布十番を後にした。
大江戸線にはあっさり辿り着くことができた。