俺の遺言を聴いてほしい

これは俺の遺言だ。

福岡ひとりナンパ~感じ取れないIOI~

ミステリーによると、女が会ってから身体を許すまでの過程を違和感なく感じるのは、おおよそ7時間くらいが過ぎてからだということだった。
7時間ならば一晩でも、または数日掛けてでもいい。

近づいて話をして1時間。電話で話して1時間。会って酒を飲んで2時間。また電話して1時間。そして次に会ったとき、さらに2時間を外で費やして、それから一緒にベッドへと潜り込む。

7時間もしくはそれ以上の待ち時間を持つことを、ミステリーは「ソリッドゲーム」と呼んだ。
7時間よりも短い時間で行為まで簡単に進むこともある。ミステリーはこれを「フールズメイト」と呼んだ。


『The Game』 Step3 価値を見せつける より

ナンパ用語でIOIとは、女性から自分に向けられる関心のことを指す。「Indication of Interest」の略で、手を握り返してきたり、潤んだような目でこちらを見てくるときのアレをIOIという。


俺は即にこだわらない。

「身体よりも先に、心を抱くこと」

それは自分の中の哲学でもあるし、予期せぬ怨恨を避けるための自衛手段でもあった。

しかし、人生にはルールを破らなければならないときもある。

青信号で進むだけが人生ではない。
赤信号を渡る勇気が道を切り開く時もある。



2015年 冬 日曜日。

少し慌ててホテルを出た俺は、改めて自分の意志を確認した。


「今日は即にこだわるんだ。俺は、即るために街に出る」


即とは、女性と出会ったその日に、身体の関係を結ぶことである。
ミステリーがいう、フールズメイトに相当する行為だ。


大きな通りを歩く。


優しい冬の風が頬をかすめる。
外が温かい。

今日はナンパ日和だ。

ウイングはいない。
一人で街に出て、一人で即るんだ。


軽い足取りで、繁華街に向かう。

すれ違う女の子が皆、異常にかわいい。

色が白く、目鼻立ちがハッキリとしている。
彼女たちの美しい遺伝子は、黒田長政の時代から脈々と受け継がれてきたものなのだろうか。


少し歩くと、明るい通りに出た。


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福岡の歌舞伎町、中洲川端である。
時刻は19時。


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あたりを見回しても、ターゲットは少ない。

まだ中洲の時間ではなかった。

そのまま真っすぐ、天神駅に向かって歩いた。

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向かう先は西通り。福岡の若い子が集まる街だ。

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日曜日ということもあって、夜の人通りはそれほど多くなかった。
それでもすれ違う子はかわいい。


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「こんばんは!博多の美人なお姉さん!」

ひと声かけ目は適当に声をかけた。
最近思うのは、オープンは適当に褒めても全然いいということだ。

間接法や偶然法以外の、直接的なナンパの場合、最初は適当に褒めると、たいていが笑ってくれる。


「ちょっと東京から旅しに来てまして!一人で飲めるとこ探してるんですけど!なんかお姉さんいかにもバーに詳しそうだなと思いまして」


いやいやいやわかりませんよ、ごめんなさい、と笑いながら立ち去ってしまう。
残念。でも、ゲームはこれからだ。


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数回声かけ、ガンシカ、一部オープンするも、連れ出しできず。

ぐるぐると駅を回るだけでもターゲットに苦労はしなかった。
女の子の数に対して、ナンパ師の数はとても少ないように見えた。


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天神のLOFT付近で、肌が白くて綺麗な女の子が歩いていた。
イヤホンをしている。

「こんばんは!

あ・・・

お姉さん、気付いてしまったんですけど、もしかして・・・」


反応なし。でも、聞こえているようなので続ける。



「もしかして、博多のローカルアイドルというやつですか?

いや、そのきめ細やかな肌、間違いなくアイドルでしょ!

(相手がニヤニヤしてるので、肌を見つめて)

いやこれ、CGかと思ったわー、いやむしろファイナルファンタジーですか!

何この白さ!ここだけ雪降ってるみたいな!
季節外れのサンタか!」


クスッと笑う。


「いま笑ったでしょ。本当は少し話したいと思い始めたでしょw
顔に出てたらアイドルやれないよ!

なんだっけ、どっかで見たことある・・・・HK・・・HK・・・T・・・」

ブハッと笑う。

「もう何なんですかwスカウトじゃないんですか?ww」

「どこがスカウトさ。どちらかというとスカウトされたいわ。スカウトされたくてモデル歩きしてたら芸能関係の君を見つけたくらいよ。

なんかHKTの後ろの方にいそうな感じだよね」

「何してるんですかw」

「居酒屋探してるんよ。一人で飲める居酒屋」


「じゃあ私の店来てくださいよー」

「おっバイトしてるん?」

「いま面接行ってきました」

「受かってないじゃんw

何受かった気になってんのさw」


「時給4000円だったんですよー」


「4000円?・・・やるじゃんw夜の店?」


「そうそう!どこにしようか迷ってて~」


この子は自分に自信があって、ネグが効くタイプに見えた。


「夜の店の割に髪型ショートカットじゃんw

夜の巻髪どこ行ったー

これはあれだね、店に行ったらいじめられるパターンやね。

ロリ顔のチンチクリンて呼ばれるね。

それかオッサンに愛されて鬱になるパターンだわ」


「もうなんでそんなにペラペラ口回るんですかw

髪は最近切ったんですって!

お兄さんどこに住んでるんですか?」


「東京だよ東京w一人旅行」


「あーなんだー東京かー。

こっちにいれば友だちになりたかったのにw」

福岡に住んでることにすればよかったのかも。
食い付き落ちる。


「なんだそれw
学校は休みなの?」


「いま春休み中なんですよーって大学生って言いましたっけ?」


「その人生をなめてる顔は、就活前の大学生しかありえないじゃんw

君、絶対1限出ないタイプでしょw

男に代返させて、必修の英語落とすタイプだと見たねw」


「出てますって~w」


なんて会話をしながら、これから違うバイトがあるというので、とりあえず連絡先交換。

番ゲ。番ゲしても後で会うことは100%ないので、

「バイト終わったら連絡ちょーだい」

とだけLINEを入れて、削除。


少し疲れたので、警固公園へ。
女の子2人で座っている近くの石段に腰を掛ける。


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「ここが有名な警固公園ですか?」

「え、はいw」

「めっちゃイルミネーション綺麗ですね~。ちょっと疲れて休んでて」

「そうなんですよークリスマスはもっと綺麗でしたよ」

「二人でこんなところでデートしてたんですか?」

「いえ、友達を待ってるんですw」

「この寒い中待たされすぎでしょw」

なんて話しながら、30分ほど休憩がてら話し込む。
20歳の女の子。

福岡ですれ違う子は、若い子が多い。

西通りの年齢層は渋谷に近いものがある。
そして、街の女の子は渋谷や新宿よりも優しい。

話し込んでると、女の子の方から、

「この子と友だちになってくださいよーこの子、本当になかなか彼氏できないんです」

と、ブスがアシストパスをくれる。
連絡先交換。興味を持ってくれたようだ。

でもごめんな、俺は、この街の住人じゃないんだ。


「じゃあ、また」


別れを述べて公園を去り、西通りでサージングを続ける。
時刻は21時を回っていた。

何声かけかするも、オープンしても和めず。
若干、疲れが出てきた。


そろそろ、連れ出さないと。
でも、ブスを連れ出しても意味は無い。

一人でやるときは、ダメでも誰にも迷惑をかけないんだから、美女に絞って声をかけるのがいい。
俺は自由だ。


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岩田屋前を髪を巻いた女の子が歩いてた。

後ろ姿しか確認していないが、雰囲気はあった。

かばんには特徴的な人形がついていた。


「ちょw

思わず声をかけずにいられなかったんですけど、
かばんについてるキティちゃんめっちゃオシャレですね!」

「えw」

「いやー福岡のファッションリーダーかと思いました!」

目をじっと見つめる。

「めっちゃ可愛いですよね。

・・・キティちゃん」


「なんなんですかw」

「いま帰るところ?」

「仕事帰りですよw」

「俺、知ってるんですよ。福岡の伝説のアイスクリーム屋。

仕事の疲れ全部取れるアイスあるの。観光ガイドに載ってた」

「なにそれw」

「食べたくない?

だってこのまま家帰っても寝るだけでしょ?

パンツになってテレビ見て、仕事疲れたなーって一日終わるの寂しいじゃんw
そこでもう、アイスですよアイス。それか、すごい福岡で流行ってるコーヒー飲ませてあげる」

「コーヒー?」

「めっちゃ流行ってるやつですよ。ほら、星みたいな。スター・・・スター・・・」

「スタバじゃんw」

「そうそう、スタバ。コーヒーとアイス、どっちがいい?」

「え、アイスは食べたい」


で、歩いているときに見つけた西通りにあるアイスクリーム屋に入る。
普通にうまい。

アイスを食べながら、他愛もない話をした。

彼氏持ちのエステ職の子。
26歳。

昔は高級キャバでかなり稼いでいたらしい。

例のごとく、キャバクラ的な話は無視した。
一緒にいる女の子の相対的な価値を上げる必要はない。


正直、キャバ嬢とかフリーターの女の子は苦手だった。
学生のときは楽しく絡めていたんだけど、社会人になってからは、共通の話題がなさすぎて困ることが多い。


でも、この日はここで勝負をかけるしかなかった。

なんでもない会話から、突破口を見出すんだ。
盛り上がりそうな話題がなくても、楽しい気分にさせる。


彼女はずっと、彼氏の存在を気にしていた。
頻繁に連絡が来ているようだ。彼氏は暇なんだろうか。
彼女がいない時こそ、メールなんてしてないで、ナンパに行くべきだ。


この日の俺のスタイルはいつもと明らかに変わっていた。

この子からIOIは感じない。
いつもは食いつきを待って、女の子の心を先に抱くのが自分のスタイルだった。

何もないところから持っていくしかない。


つまり、フィジカルに攻めて、その気にさせる必要があるということだ。

そのためのルーティーンは2つ。

ルーティーン

「クリタッチ」

「touch my son」


問題は、どのタイミングでルーティンを発動させるかだ。


アイスを食べ終わる頃、

「俺、歌が苦手なんよ。
もうめっちゃ音痴だからちょっと練習したくて。

少しカラオケの練習付き合ってw」

と話す。

「カラオケめっちゃ好きなんだよね」

と快諾。
掴みどころがない子だった。

近くのカラオケ屋に入った。

カラオケ店内で軽くキス。
拒まれないものの、

「ダメだよっ」

と言われる。
無理矢理することは絶対ない。

軽いボディタッチをしつつ、歌をうたう。

一連のやりとりでわかったのは、この子は自分の意志があまりない女の子であるということだ。
他の人に流されやすいタイプなのかもしれない。


カラオケ内では肩を抱き寄せながら、普通に曲を入れて歌った。
カラオケは得意ではないが、普通に楽しかった。

世代を共有できる人とのカラオケは楽しい。
歌いながら、時折キスをした。

2時間の間に、キスしかできなかった。
ルーティーンは発動させることができなかった。


店を出る。

「散歩しよっか」

ケータイを見る女。
彼氏からLINEが入っている。

「うーん帰るよぉ」

「少しだけ、ね」

「うーん」


西通りを歩く。
ホテルは、どこだ。

あたりを見渡す。
話しながら、グーグルマップで検索。


今泉に向かう。


「そっちは危ない方だよ」

「危ないことは俺はしないし、危ないことがあったら守ってあげる」

「えー」

「大丈夫、逃げ足だけは自信あるから」

「逃げちゃダメじゃんw」

歩く。遠い。
くそ。今泉はまだか。

「そっちはダメだよ・・・」

こういう「ダメよ、ダメダメ」的な話をされたときは、全然違う話をする。
仕事の話とか、カラオケ楽しかったね、とか。

適当な話をしながらホテルの前に来ると、明確なグダはなく、

「少しだけなら」と言いながら中に入った。

最初はグダりつつも、ルーティーン「クリタッチ」と「touch my son」が決まり、一連のことを終えた。


終始、明確なIOIは確認できなかった。
釈然としない思いが残った。

俺は彼女を雰囲気に流してしまっていただけなんだろうか。
帰りのタクシーの中で、彼女はこの日のことをなかったコトにしたいかのように見えた。

「ナンパについてったのは初めて」

「彼氏いるときに他の人としたのは初めて」


こういう女のポジショントークは、IOIがある子の場合はスルーするけれど、今回は本当だったのかもしれないな、と思って、少し心を痛めた。

「お互いに惹かれ合って結ばれるのは悪いことじゃないよ」

「うん、そうだよね」

「いや、むしろ俺が全部悪い!全部雪のせいだ」

「何言ってるのw」

彼女は寂しげに笑った。やってしまったなぁ、という表情だった。

ホテルに戻ってシャワーを浴びる。

帰り際に彼女に送ったLINEが既読になることはなかった。



<参考文献>
ザ・ゲーム フェニックスシリーズ