ネットワークビジネスに勧誘された体験談



デートだと思ったらその場でネットワークビジネスに勧誘された話。


銀座のクラブでずいぶん前に連絡先を交換した女の子から突然LINEがきた。


「ご飯食べに行こうよ」


(な、なんだと...この俺に...デートの誘い...?

何かの罠か?)


と、迷うこともなく、即答で「行きます」と返信した。


が、その後のやりとりのペースは遅く、

「本当に飲みに行く気あるのか。

もしかして罠だったんじゃないか?」

と疑い始めた。


こいつの狙いは何だ...?


不安を拭いきれないままやり取りをして、なんとか約束と取り付けた。


デート当日、待ち合わせに10分遅れで現れた彼女はなんと!すっぴんだった。


なぜデートにすっぴんで来るのか...。

もしかして、化粧をする価値もない雑魚だと思われているのではないか...とさらなる疑念がつきまとうが、私の下心は止まらない。


そのままデートを続行した。

不思議な女だった。


会話のペースが遅く、こちらの話を聞く気がない。

「自分がどれだけ楽しい旅行に行ってきたか」という話。

「旅行に安く行けた」という話ばかりをしてきた。


「すっごく安く旅行に行けたんだよ。すごくない?伊豆の一流のホテルに3,000円で行けたの」

という女に対して、

「ま、マジか!なんでそんなに安く行けたの!?」

と理想的な返事をすると、

「それはちょっと言えないかな」

と言う。


なんなんだお前は〜〜〜〜!!!


もったいぶるなし。

それに会話がなんだか妙に説明的だ。


マンガの必殺技を解説するキャラクターみたいな会話してんじゃねぇよ。


私が鼻の下を伸ばして

「彼氏いるの?」

みたいな話を振っても答えない。


なんだこいつは...?


「休みの日は何してるの?」

「旅行かな。

安く行けるから。

私のサークルに入ってたら、特別に安く行けるんだよね」


旅行を語るときだけはやたらと饒舌になる。


な、なんだこいつ?


「日本でもすごく有名なサークルなんだけど」

「仲良くていいね」


会話が弾まない。

ブログで紹介しようと料理の写真を撮っていたら、

「写真、趣味なの?」

と聞かれた。

スマホで料理の写真を撮ったタイミングで「写真が趣味なの?」と聞かれたのは初めてだった。


「お、おう写真大好き。写真家と言っても過言ではないね」

「私の友達に写真好きな子いて、モデルみたいに可愛いから、紹介しようか?」

「まじ?紹介してほしい

「その子、本当に写真好きなんだよ。いつも写真撮ってる」

(俺、そんなに毎日写真撮るわけじゃないんだけどなー)


趣味・写真・紹介をつなげようと無理に会話しているように感じた。


「今度紹介するから会おうよ」

「じゃあ、日曜の昼なら」

「あ、日曜はダメかな。土曜日ならいいよ」

なんだ、こいつ?

なんで日曜はダメなんだ?

会話が成り立たない。

言い訳じみてしまうが、この会話の成り立たなさは尋常ではない。

私のコミュ力の問題ではないはずだ。


その後も何度もしつこく旅行の話をしてきた。

なんだこいつ?


「妹もサークルに入ってて、このサークルに入ると日本中にすっごく安く旅行に行けるの。

ちなみに、今日はクルージングしてきた」

「へー安く行けるってすごいね^^」

「私が入ってるサークルがすごいんだよね。秘密なんだけど...

と言いながら、女はかばんの中からファイルを取り出した。

「ここに秘密の手紙があるの。ここに安く旅行に行ける秘密が書いてあるんだけど......」


「秘密秘密うるせえな。いいから俺と秘密の関係になれよ」

と言いたかったが、女の勢いに圧倒されてしまった。


クリアファイルの中には怪しげな、明らかに何らかのブログをコピーしたようなペラペラの紙が10ページ分くらい入っていた。

「ここに書いてあることを、一言一句逃さず読んで」

お前が説明してくれるんじゃねえのかよ...。


読むことがベッドにつながっているかと思い、とにかく読んでみた。

一言一句すべてが怪しかった。


「これは面白いネタになるに違いない!」と、熱心に読んでいるフリしてその写真を撮ると、

「写真を撮ってるの?絶対ダメだから。何してんの」

と本気で怒られた。

なんだこいつ?

そんなに大事か?俺よりも写真が大事なのか?

撮った写真は公開できないが、書いてある内容はこんな感じだ。

私が「“無料”で友達とセレブ旅行に行く方法があるよ」と言った時、多くの友人が笑いました。しかし、実際の話を聞いた友人は...

(略)


今から話す内容は、これから先のあなたのライフスタイルを大きく変えることになるでしょう。

でもあなたにとって、かなり刺激的な内容が書かれているので、今のライフスタイルに満ち足りているのであれば、次のページ以降は読まないほうがいいかもしれません。

(略)


心の準備はいいですか?

それでは、次のページ以降を読み続けようとしているあなただけにお伝えしていきます。


怪しいーーーーーー!!!


どこの与沢翼だ

小太りか!

こういうブログにありがちな、赤い文字を黄色く塗るスタイルの強調。

「あなただけ」

「期間限定」

などの文字を散りばめた胡散臭い文章。

「紹介料だけで生活している人もいます」

という話。


読みながらガックリとうなだれてしまった。


これは...これは...

伝説のネットワークビジネスじゃねえか...。


読み終わり、深呼吸をして、冊子を閉じる。


「すごいね。俺を紹介したら、紹介料っていくらもらえるの?」

「それは秘密だから言えない」


なんでやねん。


「その仕組みについて書いてある手紙があるから、見せてあげる」


と、二冊目の冊子を渡された。

もううんざりだと思って、流し読みしていると、


「そうやって適当に読むならダメ」


と怒ってきた。

意味のあることは一つも書いていない。

思わず苦笑いしてしまう。


「ネットワークビジネスの説明会に参加せよ」と最後の方に書いてあった。

説明会は土曜日に開催され、日曜日には行われないらしい。

だから可愛い子の紹介は土曜日じゃなきゃダメだったんだな。


冊子を返す。

「ありがとう」

「でも、俺はやらないよ」


「なんで?24歳で月収700万稼いでいる人もいるんだよ」

「金に困ってるわけじゃないんだ。それに、俺には俺の目標がある。」

「なに?どうやってお金を稼ぐつもりなの。月収700万稼げるの?」

女の口調がやたらとキツくなる。

なんだこいつ?

「いつか俺も月収700万円を稼げるようになるかもしれない。

ただいくら収入を得るとしても、虚業で金を稼ぐつもりはない。

何かしらの価値あるものを世の中に生み出した対価として、金を稼ぎたい」


「じゃあ具体的なプランを言えるの?言えないでしょ」


なんだこいつ?

やたらと攻撃的になってきた。

こんな早口な奴だっけ?


「あなたの作りたいものって何?言えないってことは何もないってことでしょ」


なんだこいつ。


「俺は自分のことを語る相手は選びたい。少なくとも自分の夢や目標は信頼関係ができた相手に語りたい」

「金も稼げないくせに」

「たしかに俺の貯金はここ数年、全く増えていない。

というわけで、悪いけどここの飯奢ってもらっていい?

とお願いするとマジでキレられたので、仕方なく会計は私が払った。

金持ちなんだったら奢ってくれよ...。

店を出てすぐにお別れをした。

「ごちそうさま」は一言もなかった。


「まいったな」

店を出て、女の後ろ姿を眺めてため息をついた。


東京は怖い街だ。

汐留の高層ビルを眺めながら頭を抱えた。


関連記事:与沢翼さんのダイエット前後の見た目の変化がすごすぎる件

ネットワークビジネスの手口と対策

今回のデート詐欺女のケースから学べるのは、ネットワークビジネスのお決まりの誘い文句だ。

「無料で」

「期間限定で」

「秘密の」

「あなただけの」

みたいな、古くから使われているセールス用語を使って、豪華で贅沢な暮らしの夢を見せる。

それが虚構であっても「儲かってそうな雰囲気」を醸し出すのが大事なのだ。

小ネズミから巻き上げることで親ネズミが儲かるビジネスは、とにかくカモとなる小ネズミを集めなければならない。

そのためには、「憧れのライフスタイル」を見せて、「ネットワークビジネスをやればこんな世界に行けるんだ」と夢を抱かせる必要がある。


このようなネットワークビジネス的なやり口は、ツイッターの情報商材屋の手口を酷似している。

「借金を抱えて破産寸前だった私でも今は稼ぎまくってる」

とアピールし、「月収100万円達成しました!」とことさらに収入をアピールしようと精を出す。

ネットで稼いでいるアピールは基本的にはマイナスになるはずなのに、やたらと収入をアピールしたがるのは、収入をアピールすることで金持ちワナビーから金を巻き上げるためである。

サロンやnoteなどの情報商材を買わせて、自分が金持ちになるために収入をアピールするのだ。

簡単に稼げる仕事などなかなか見つからないし、仮にあったとしても赤の他人には教えないだろう。

「簡単に稼げる」「あなたも金持ちになれる」とネットワークビジネスに誘われたなら、それはあなたがカモだと思われているということだ。


関連記事:【副業】「誰でも簡単に稼げる仕事」に騙されてはいけない