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俺の遺言を聴いてほしい

これは俺の遺言だ。

「もう少し早く出会ってたらよかったのに」と彼女は言った。

ネタ

「あと半年早く出会ってたら良かったのに」

「声をかけてくれるの、少し遅かったよ」

ベッドの上で彼女は言った、
消えてしまいそうな声だった。

僕は静かに彼女を抱き、

「恋愛はタイミングが大事なんだな」

と言った。


* * *

彼女と食事に行くのは二回目だった。

最初の食事で彼女に触れることはなかった。
ただ心の距離だけを縮めた。

彼女はやさしく笑い、

「また会おうね」

と言って別れた。

次の食事は自宅の最寄駅の店を選んだ。

「次は私がそっちに行くね」

とLINEが来ていたからだ。
一日に何通かメールのやり取りをして、アポの日を迎えた。

彼女は相変わらず綺麗な子だった。
六本木や銀座の街が似合う女だった。

街を颯爽と駆ける彼女は、前に会った時よりも美しく見えた。

食事中はいつもと同じように、彼女の話を聞いた。
いつもより早めの時間の、早めの食事。

店を出る時間になっても、まだ終電までの時間は十分に残されていた。

一緒に街を歩きながら、彼女からのサインを感じ取る。

「この辺に住んでるんだね」

「どんな部屋なの?」

適当に話しながら、まっすぐに道を歩いた。
いつの間にか、自宅の前にたどり着いた。

「ここだよ」

と言うと、彼女はついてきた。

部屋に連れてくるのに、小細工はいらない。

「アイスクリーム食べよう」

なんて言う必要もない。

「DVD見よう」

なんて誘う必要もない。

ただまっすぐに自分の家の前に来ればいい。

マンションの前で、

「もう少し飲も。美味しいワインあるから」

と言うだけ。

これで、「絶対部屋なんて行かない」と断られたことは今のところ一回もない。
20人以上同じように誘って、一回も断られていない。

友達には何度も何度も繰り返し強調しているんだけど、女の子とうまいことデートしたいなら、繁華街が近くにあるところに住むのがいいと思う。少しくらい家賃が高くたって問題ない。
ホテルに何回も行くよりずっといい。

部屋に入って用意していたワインを飲む。
彼女の顔が赤らむ。


「あれ?立ったら意外と背、高いんじゃない?」

と背を比べながら、ハグする。

「ダメだよ」

と答えながら、彼女の表情には迷いが見えた。

「・・・ダメなの」

葛藤している様子で、彼女は言う。

「・・・わかってる。嫌なら何もしないよ。彼氏がいることも知ってる」

「少しか魅力を感じてくれてるなら、このまま少し、抱きしめさせて」

「・・・うん」

彼女も手を回し、ハグし合った。

唇を合わせようとすると、彼女はうつむいた。

「大丈夫。"俺が"したいだけだから。XXがしちゃいけないって思ってることはわかってる。俺がしたいだけ」

唇を合わせた。
甘く上質なワインのようなくちづけだった。

僕は部屋の電気を消し、ゆっくりとやさしく彼女の服を脱がせ、自分の服も脱いだ。
そして抱き合った。

暖かい雨の夜で、我々は裸のままでも寒さを感じなかった。

最後には彼女は僕の体をしっかり抱きしめて声をあげた。
僕がそれまでに聞いたオルガスムの声の中で、いちばん哀しげな声だった。


・・・という村上春樹風の小説を書きたい。