俺の遺言を聴いてほしい

これは俺の遺言だ。

高石宏輔「あなたは、なぜ、つながれないのか: ラポールと身体知」を読んだ感想。




この本は宗教のようだった。
あるいは道徳の本とも言える。

「他人とつながる」ための具体的な行動を求めている人がこの本を読んでも失望するかもしれない。
なぜなら、この本に問題への具体的な行動指南の記述はそれほど多くないからだ。


他僕自身、自分が抱える問題への解決策を求めて、この本を手に取った。
この本は、行動ではなく、価値観を変えたい人のための本である。

高石さんの価値観に共感できる人が、彼の素晴らしい理想を吸い込み、共感し、自分を変えていくための本だと言える。


本の中で述べる高石さんの問題意識は正しい。圧倒的に正しい。


「自分を守るための殻が、恐れが、自分自身を観察する目を曇らせる」


高石さん自身がナンパ師であるように、ナンパ師の多くが感じる感情だろう。

あるいは、ナンパをしなくても、人と関わって生きる全ての人が感じることなのかもしれない。
取り繕った自分、定型の会話で相手の感情を操り、身体の関係を結ぶ。


自分の気持ちってどこにあるの?
僕の本心ってなんだろう?


これはナンパに限った話ではない。
友だちと話す時や、会社の人間と関わるときも同様に、「自分を守るための殻」が内省するための壁となる。


自分の予想通りに相手が動くことを期待し、それを望むこと。

それは結果として、「緊張したコミュニケーション」となる。


「どうなるかわからないけど、どうなるか楽しみだ」


という感覚で人と接することができれば、その緊張から開放されると高石さんは言う。
人をコントロールしようとしないことが大事なのだ。


高石さんは「無意識の癖」を意識せよと述べている。

人には「意識していないコミュニケーションの癖」がある。

それは僕達が無意識のうちに自動的に処理してしまっている部分で、意図せずに自分の状態が作られてしまっている。

その無意識を「観察」し、自分の中にある感情の流れに耳をすまし、感覚を意識せよと言う。

感情の蓋を取り除き、自分の素直な感情を見つける。
自分の動作の中に、自分の本質が現れている。


自分の本質を表す無意識の動作によって、他人に影響を及ぼしてしまっている。
だから、無意識の動作を意識し、他人にどんな影響を与えているか、観察することが大切だ。

目の前に人がいるのを感じて、感覚や感情が自ずと生まれてくるのを待ち、言葉にする。
自分自身の感情を感じ取る作業から逃げずに、向き合うことについて、優しい口調で語っているのがこの本だ。



高石さんの言っていることはすごくよくわかる。痛いほどよくわかるが「無意識」を意識することが難しい。


やってはみるけど、本当にそれができているのか。

それは「本人ができた」と思い込むしかないのかもしれない。
信じることが救いにつながるという意味で、この本はある意味では宗教的であるとも言える。


「なぜ、つながれないのか」は、日々の鬱屈した生活からすぐに開放されたいビジネスマンの期待に応える本ではないのかもしれない。

自己啓発本がドヤ顔で語るような、「人とつながれないことをすぐに解消する10の方法」などはこの本には存在しない。

あくまで真摯に、自分を見つめるきっかけとするための本だ。
高石さんの優しい口調で語られる丁寧な文章は、自分を内省するための良いきっかけとなるだろう。

そして、人によっては、読んでいる途中で催眠にかかっているような感覚に陥ることがあるらしい。
高石さん自身が、そのような仕掛けを施したとツイッターで述べていたのを見たことがある。


優しくない彼氏をなぜか追い続ける女の子、自分の気持ちに迷いがある男の子。

そんな心の中の不安と向き合ってきた先人たちの経験が言葉となって、本に散りばめられている。


この本は「人と人との感情的なつながりとは何か」を再確認するための本だ。
感情的なつながりは、人間関係の全ての基礎となる。


高石さんの文章は、心に響くものがある。

この本は良い意味で小説的だ。むしろ高石さんの問題意識は小説として語られると、また違った共感を得られるのではないだろうか、と思った。


まとめると、
「あなたは、なぜ、つながれないのか」は高石宏輔の長い長いエッセイのようなものだった。


彼が問題意識を、本一冊にわたって語ってくれる。
彼の豊かな感性を持って、文を紡いでくれる。



この本は、「なぜ、つながれないのか」の答えを書いている本ではない。

「なぜ、つながれないのか」を読者に考えさせる本だ。

読者に気付きを与え、自分自身で考えるきっかけを与える。


答えは本の中に提示せず、読者自身に委ねる点で、優しくも厳しい本であると言える。


※Kindle版

あなたは、なぜ、つながれないのか

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※単行本

あなたは、なぜ、つながれないのか: ラポールと身体知

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