某日。
僕は腹をすかせて一人、福岡の街を彷徨っていた。
牛丼が食いたい。
頭の中には吉野家のことしかなかった。
でもどうせ福岡の街で飯を食うなら、可愛い女の子と一緒に牛飯を食らいたかった。
こんばんは!
お姉さんお腹すいてません?
ちょっと牛丼食べに行こうと思うんですけど・・・
無視。
ちょっとめっちゃお腹ペコペコみたいな顔しとうよ!
ご飯食べたくないと!?
この辺にすげーうまい牛丼の店、知っとうよ!
無視。
心が折れて一人で牛丼を食らう。
今日の目的は、福岡のクラブ、「ハッピーコック」でナンパすることだ。
時間を無駄にしている暇はない。
午前0時。
ハッピーコックは、西通りの「大央」という店の通りを曲がり、20メートルくらい歩いた場所にある。
0時に行くと、並んでいるのは10人前後だった。
エレベータを上がるとエントランスがあって、身分証明書を見せて、エントランスフィーを払う。
金曜の夜で、
・飲み放題 男 3,000円
・2ドリンク 男 1,500円
となっていた。
安い。
僕は2ドリンクのチケットを購入し、中に突入した。
鳴り響く爆音。
耳に刺さるようなボリューム。
人はまばらで、一般的なクラブのイメージからすると、少なめだった。
中では音楽に合わせて皆が身体を揺らせ、ナンパをしている人は本当に誰もいないように見えた。
みんなが音楽を楽しんでいるように見えたし、実際リズムに合わせて踊る人々は幸せそうだった。
DJが煽る。
皆が踊る。
クラブに詳しくない俺でも知ってるような曲が流れていた。
ナンパをしている人は誰もいなかった。
俺はカシスオレンジを頼み、あたりを見渡した
クラブでナンパするときは人混みに紛れることで話しかけやすくなる。
しかしハッピーコックではひと目で全体が見渡せる上、人口密度が低いので、次々に声をかけるということができない。
その上、旅行してナンパしに来ている人にとっては大変厄介なことに、どれが身内でどれが遊びに来た人なのかすごくわかりにくい。
おっ、一人でいる!
と思って声をかけようとすると、近くの常連と「へ~いっ!」とハイタッチしたりする。
俺以外の人間はみんな知り合い同士のようにも思えた。
この状況は、まずい。
なんとか打開しなければならない。
思いついた苦肉の策が、
ブスに話しかけること
だった。
このクラブで一番のブスに話しかける。
ブスをきっかけにして、流れをつかむ。
逆転のチャンスはここしかない・・・!
僕は目をつけておいたブスめがけて、一直線に歩いた。
そして、旅行者を装い、クラブナンパではダメとされているつまらない質問をした。
クラブよく来るの?
今日って盛り上がってる?
うーん。
人っていつもこれくらい?
まぁまぁ。
冷たい。
なんて冷たいブスなんだ。
心なしか、顔も憎らしく見えてくる。
さっと踵を返し、他を探す。
さが・・・す?
いない。
ここには誰もいない。
ナンパされに来ている女子がいないのだ。
皆が身内で、楽しく週末を騒ぐために来ている。
他の大学のサークルの飲み会に一人で混じったような気分だ。
自分が駆除されるべき害虫のようにも思えた。
周りにいる人同士は、本当に仲良い知り合いのようだった。
店員とも顔見知りのようだ。
どっちを見てもダンス・ダンス・ダンス。
村上春樹か!
僕は途中から、ナンパを諦めた。
音楽に耳を傾けると、自然と身体が動いた。
せっかくだから楽しく踊っていこう。
ハッピーコックは、DJが盛り上げるついでに、簡単に曲の説明もしてくれる。
クラブ初心者の俺にとって、曲の話はありがたい。
クラブミュージックの勉強ができるからだ。
はーい次はcall me babyで有名な~、really love youですー
DJが話すと、客が盛り上がる。
ひと通り音楽を聞いた後、俺はクラブを後にした。
8月1日の大濠公園の花火大会の後、浴衣で来てね~
とDJが話していた。
福岡最大の花火大会、大濠公園花火大会の後には、浴衣女子が大漁にクラブに発生するのだろうか。
それでもハッピーコックには身内が集まりそうな気がする。
ナンパするならcat'sの方がいいだろう。
福岡親不孝通りのクラブcat's(キャッツ)に一人で行って惨敗した話
店を出るとき、エレベータに居合わせた女の子が話していた。
インフィニいこっか~
そうだね~
インフィニティというクラブにはしごするみたいだ。
福岡のクラブ「インフィニティ(infinity)」に一人でナンパしに行ってみた。
帰りに西通りで一人でチャリをこいでいる女の子がいたので、声をかけた。
お疲れ!
ちょっと一杯飲んでいきません?
おれ今、クラブ帰りで!
今から帰りですか?
えっ、今からクラブ行くんですよ~
えっ今から!?
こんな遅い時間に出歩いて!
しかもかわいそうに、一人で!
何してるん!
友達いるんですよっ!w
どこ行ってきたんですか?
ハッピーコック。
えーハッピー!?わかっ!
ハッピーコックって若いの?w
うん、大学生のイメージ。
大人が行くのは?
インフィニとかミルズかなー
てか、シラフでクラブに行くのも寂しいじゃん。
一杯行く前にお酒付き合って。
ビール一杯に限り、奢る。
えーいいよ。
一杯だけね!
おー一杯で帰るわ^^
で、近くのバーに入って、一杯飲んで帰りました。
LINE交換して、また会えたらいいね、と話して解散。
聞くところによると、ハッピーコックはやっぱりちょっと若者が行くクラブみらいですね。
大学生が多いみたい。
どうりで、サークルっぽい雰囲気を感じたわけだ。
こうして、福岡のクラブ一人探検は幕を閉じた。