エグさがさらに加速する「東京タラレバ娘」2巻の名セリフと感想(ネタバレあり)



さて、3巻まで一気に買って読んでしまった東京タラレバ娘。

作者の東村アキコは30代女に恨みでもあるのかってくらい、現実を突きつける。
これがもう、エグいのである。
タラレバ娘だけじゃない、タラレバ息子としても胸が痛い。

私事で恐縮だが、俺自身は30代の女性がけっこう好きだ。
なんというか大人だし、一緒にいて楽な人が多い。

しかし「タラレバ娘」は世間一般から見た30代女子の現実を語る。
どうやら、30代女子への風当たりは強いらしい。

というか、作中では「女子」ではなく「おばさん」と呼ばれる。


第一巻の終わりで、モデルのKEYと身体の関係を持った倫子。
すぐさま友達を召集し、ベラベラと「どうすればいいの?」みたいな話を大声で繰り広げる。

店の中で大声で、周りの客に聞こえるような声で、やったことを語る倫子。

そのことを知ったKEY(鍵谷)は、倫子に対してこう言う。

昨日の今日でベラベラ人に喋ってんじゃねーよ

だからあんたたちはダメなんだよ

何かあったらすぐ女子会女子会って

ヒマな女同士でつるんでギャーギャー騒いで

今日はオレの話で盛り上がったんだろ?

オレとやったって話で


最低だよアンタ


作者の東村アキコは、男の気持ちを代弁してくれているかのようだ。
実際、ほとんどの女はベラベラとやったことを喋り過ぎなのである。


恋がうまくいかない女に限って、自己憐憫に駆られて「自分がいかにかわいそうなのか」を語ったりする。
これがまた全然面白くない。


「まぁ、私ったらかわいそう」

「うるせぇ!お前が選んだんだろうが!」



身体の関係を持った相手の悪口言わない!
彼氏の愚痴も言わない!
可愛そうな自分を気取って不幸自慢しない!


これだけで女の人ってずいぶん素敵に見えると思うんだけど。
女よ、前向きなお前は美しい。




倫子さん・・・

本当は分かってるんレバ?

なんで彼が倫子さんのことを

抱いたって何の得もない倫子さんのことを抱いたのか

なぜ彼が自分から倫子さんに迫ったのか


ただ単に 魔が差したんタラ

それ以上でもそれ以下でもないタラ。

男にはそういう夜もあるんタラ


「なぜ私と関係を持ったのか」について悩む倫子。
またしても現れたタラが語った言葉。


「なんでなの!?なんで私とHしたの?」

というありがちな悩みに、これほどまで簡潔に答えた例は初めて見た。



「なんでしたのよ!」


「魔が差した。」



この答えは最強だ。


なんであの人、私のこと抱いたのかな

うーん、魔が差したんじゃないかな



なんでデートに誘ってくれたんだろ?可能性あるのかな?

いや、魔が差したんじゃない?



元カレの家に誘われた!どうしよう!

ただ魔が差しただけなんじゃないかな。



実際は、魔が差したというより、「『やりたい』と『一緒にいたい』は違う」というのが一般男性の心情に近いかな。
魔が差さなくても、基本はやりたいはず。


あの女より顔もスタイルもマシ

もう33歳だけど 40オーバーの独身女よりは全然マシ

でも いくら「マシ」を数えたって
私の人生全然幸せじゃない

もし私がもっと若かったら

アイツとつり合うくらい 若くて美しければ

なんてまたタラレバ言ってるバカな女なんです


フリーターよりはマシ。
もうオッサンだけど、電車に乗ってるハゲたデブよりは全然マシ。


でも いくら「マシ」を数えたって
オレの人生全然幸せじゃない。


もしオレがもっと若かったら

美女とつり合うくらい 金持ちでイケメンだったら

なんてまたタラレバ言ってるバカな男なんです。


これは下手なビジネス本より心に響きますね。


もう少し給料が上がったら
あの資格があれば


なんてタラレバ言ってるうちは何も変われない。

俺に必要なのは、具体的な行動なんだ。

現実の時間の流れはこの回転寿司のレーンとは違うんタラ

時間の流れは一方向。回転なんてしないんタラ。

毎日毎時間 一分一秒

あなた達は歳を取っていくんタラ

レーンは一方向に進む

時間は絶対に巻き戻らないんタラ

タラレバ娘の登場人物の一人である香。
別れた元カレが有名バンドマンになった姿を見つけて、出世魚になって帰ってきたと喜ぶ。

偶然の再会に旨をときめかせたのも束の間。
バンドマンの元カレには既にモデルの美女彼女がいたのである。

回転寿司みたいに、取り逃した寿司が回ってくると思っていた香に、嫌味なタラが吐いたセリフが上のセリフである。


ちなみに、登場人物については以下のサイトに書いてある。
http://kisscomic.com/kc/tarareba/index.html


余談だが、上のタラの言葉を見て、伊坂幸太郎の「砂漠」という小説を思い出した。

「学生時代を思い出して、懐かしがるのはかまわないが、あの時は良かったな、オアシスだったな、と逃げるようなことは絶対に考えるな。そういう人生を送るなよ」と強く言い切った。

そして最後にこういった。

「人間にとって最大の贅沢とは、人間関係における贅沢のことである」

心に響きますよね。

「真の贅沢というものは、ただ一つしかない、それは人間関係という贅沢だ。」

これはサン=テグジュペリ『人間の土地』の言葉の引用です。

おまえらは愛されてなんかないんタラ

あれは愛の行為なんかじゃない

愛という言葉に踊らされておまえらはいつも

リングの上でサンドバックになってボコボコに殴られてるんタラ

33歳にもなってどうしてそれに気付かないんタラ?

「女」というリングから降りられない30代女は「いつまでたってもリングの上から降りられない哀れなパンチドランカー」だと言う。
男から見ても「ここまで言うか!?」って感じなんだけど、作者は周りの女に相当腹が立っていたのではないだろうか。

ずっと言いたかったことを、漫画のキャラクターに代弁させているに違いない。

東村さんの言葉は、30代の女だけではなく、20代の女子や、タラレバ息子の心にも閉まっておくべき教訓のようにも思える。



※Kindle版

東京タラレバ娘(2)

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※単行本

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