「王様達のヴァイキング」というハッカーが世界を救う漫画が超面白かった。



あらすじ

たまにネットで話題に上がる「王様達のヴァイキング」。



何これ面白そう。


ということで、Kindleで8巻全部大人買いして読んでみたら、東京姉妹のオススメのくせにめちゃくちゃ面白かった!

特にベンチャー企業で働いてる人や、IT業界で働いている人には絶対響くと思う。

この話の主人公の是枝一希は18歳の高校生。

映画「ソーシャル・ネットワーク」のマーク・ザッカーバーグしかり、ドラマ「リッチマン、プアウーマン」の日向徹しかり、天才プログラマーはだいたいにおいてコミュ症で変な奴として描かれる。まともなのは「ブラッディ・マンデイ」の高木藤丸くらいだった気がする。


是枝一希もハッカーの例に漏れず、コミュ症変人の社会不適合者として描かれている。

コンビニのバイトは3回やって3回ともクビになった。
人とも上手く話すことができない。

幼い頃に義父に買い与えられたPCだけが、自分を理解してくれるモノだった。

大手金融会社をクラッキングしたときに、わざと自分の居場所を示すようなログ(痕跡)を残す。
それを見つけた坂井大輔はすぐに是枝の元に向かう。

坂井大輔は会社を成功させ、上場したときの売却益で20億円を稼いだ。
エンジェル投資家として、若い可能性に投資を行っている。

夢は世界征服。


坂井は是枝を警察に突き出すのではなく、その腕に賭けることにした。




多くの優秀なハッカー達の、絶え間ない探究心と限りない労力で、新しい世界が創られてきたんだ。

だからもう一度言う。

俺は世界征服がしたい。お前の手を使って。



是枝はこれまでどんな仕事をやってもうまくいかず、高校も中退した。

そんな是枝の話を唯一聞いてくれたのが坂井だった。

その坂井の期待に応え、天才的なスキルを駆使して数々の事件を解決していく。


引きの言葉がまた素敵だ。



今はまだ名も無き若者と仕事中毒の天使。

これは-----

のちに王冠を抱くことになる二人の、宝探しの航海記である。


Hacker Way

ハッカーとクラッカーは混同されがちだ。
日経新聞などでは犯罪が起こると「ハッカーが~」などと書かれるが、本来ハッカーとは、最高の技術者に対する賛辞である。
犯罪を起こすのはクラッカーだ。


作中でも、坂井は是枝に対してこう言っている。

「ハッカー」ってのは、俺らの世界じゃ最高の褒め言葉だろ。

知識と技術に秀でた者に送る称号。

ハッカーの生き様は、「ハッカーウェイ」として知られる。
Facebookの創業者であるマーク・ザッカーバーグが、IPOの際に株主に向けて公開した手紙の内容を紹介したい。

私たちは「ハッカーウエー」と呼ぶ独自の文化と経営手法を育んできました。


「ハッカー」という言葉はメディアでは、コンピューターに侵入する人びととして不当に否定的な意味でとらえられています。しかし本当は、ハッキングは単に何かを素早く作ったり、可能な範囲を試したりといった意味しかありません。他の多くのことと同様に、よい意味でも悪い意味でも使われますが、これまでに私が会ったハッカーの圧倒的多数は、世界に前向きなインパクトを与えたいと考えている、理想主義者でした。


ハッカーウエーとは、継続的な改善や繰り返しに近づくための方法なのです。ハッカーは常に改善が可能で、あらゆるものは未完成だと考えています。彼らはしばしば、「不可能だ」と言って現状に満足している人びとの壁に阻まれますが、それでも問題があればそれを直したいと考えるものなのです。




フェイスブック上場へ、ザッカーバーグCEO「株主への手紙」
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK0200P_S2A200C1000000/?df=4


1994年に世界で初めて商用検索エンジンがリリースされた4年後。
スタンフォード大学の2人の学生が、「極めて関連性の高い結果を返す超人的なアルゴリズム」を開発した。
ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンが作った「ページランク」という仕組みは、ウェブに散らばる雑多な情報を整理し、ユーザに最も必要な情報を瞬時に弾き出す。

2015年。カリフォルニア州メンロパークのガレージで生まれたGoogleは今、世界中の情報を整理し、世の中をより便利に、より革新的なものへと変え続けている。


1976年にホイットフィールド・ディフィーとマーティン・ヘルマンが開発した暗号化の仕組みによって、インターネット上で安全にクレジットカードの番号を送信できるようになった。Amazonで気軽に買い物できるのも、巨人たちの肩に乗ってシステムが作られているからだ。


優秀なハッカー達の、絶え間ない探究心と限りない労力で、新しい世界が創られてきた。
偉大なハッカー達の功績の上、我々は現代の便利さを享受しているのである。

サイバー犯罪の増加とセキュリティ対策

素晴らしい技術が素晴らしい世界を創るためだけに使われるとは限らない。

警視庁の「サイバー犯罪の現状」というサイトによると、サイバー犯罪の検挙件数は増加の一途をたどっている。

情報セキュリティ白書2014
https://www.ipa.go.jp/files/000040704.pdf

2015年9月2日の日経新聞2面に「企業の基幹システムハッキング危機」という記事があったが、クラッキングはもはや他人ごとではない。


「王様達のヴァイキング」の話に戻そう。
是枝は元々は超人的な技術を持つクラッカーである。

犯罪者の心理は、自分が一番良くわかるという。
だからこそ、守ることができる。


今や世の中のほとんど全てにIT技術は使われているが、それはすなわち、世界中のクラッカーから狙われる可能性があるということでもある。
インターネット上にいる無数の目に見えない攻撃者達。是枝と同等の力を持つクラッカー。

これは、サイバー空間を戦場とした戦争とも言える。

警察の力では手の施しようがない知能犯罪を、超絶技術を駆使して解決していく様子が臨場感あるタッチで描かれている。
文章では伝えきれないが、物語を通じて是枝が人間的に成長していく様子も心を打つだろう。


王様達のヴァイキング(1) (ビッグコミックス)

王様達のヴァイキング(1) (ビッグコミックス)

作者のさだやすさんはものすごく丁寧に取材していて、細かい設定も凝りに凝っている。
個人的には、ピクシブ社長の片桐孝憲氏が消費者金融から金を借りてサーバを動かしていたシーンをなぞっている描写が響いた。


【追記】
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