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俺の遺言を聴いてほしい

これは俺の遺言だ。

ぼくはオナニーをやめようと思う。

「FC2で見つけたショートカットの女子大生はどうなった?」

「最初の検索で仕掛けた『女子大生 ショートカット』がうまくいきましたよ。サイト内検索をしたらあっさりとイエス。あとはいつものようにパンツをフェーズシフトさせました」

「ナースの女は?」

「この前の『イケない患者シリーズ』で検索した子ですね。週末にDMMで会って課金をクリア。
そのあとは、DVDルーティーンで難なくTSUTAYAでレンタルしました」


その男は、やれやれ、といった表情で僕を見て笑った。
僕も笑い返す。

ディスプレイを見下ろしながら静かに乾杯をして、冷たいビールを喉に流し込む。
モザイクを取り去ったあとの女優は限りなく透明で、股間のビラまではっきりと見える。
数え切れないほどの女優がキラキラと輝いている。


「このパソコンは、僕たちのでっかいソープランドみたいなもんですね」


「ああ、無料のな」



 ★ ★


1年前の夜、とあるサイトで彼を偶然見つけた。
それからパソコンを舞台に、奇妙だが最高にエキサイティングな僕等の大冒険がはじまった。

僕は男の欲望を実現するための秘密のテクノロジーを手にしてしまったのだ。



XVIDEOS。



いまではピンサロやソープなど様々な分野が数理モデルに従って動いている。
かつては文系人間達の妄想で回っていたこうした業界は、いまや複雑な趣向を持つオタクたちが群がっている。

だったら、オナニーだって同じことにはなりはしないだろうか?
答えはイエスだ。

オナニーの世界でも、恐るべきテクノロジーが密かに開発されていたのだ。

僕は、世界最大の半導体メーカー・インテルの元CEO、アンドリュー。グルーブの言葉を思い出した。

"Technology will always win."
(最後にはいつだってテクノロジーが勝利する)



 ★ ★


繁華街と自宅を往復する。
女に声をかけ、飯を食う。家に誘う。寝る。
山のようなLINE、そして会ったばかりの女の中でする射精。

僕のこうした活動のすべてが、わずかながら日本経済に貢献していた。


掃き溜めのような人生を漂っていた。


純愛というものはもはやどこか遠い世界の出来事に思えた。
僕はおまんこスタンプラリーのゲームの真っ只中でもがいていた。


愛って何?


証明することのできない愛を求め、愛と最も遠い位置を歩んでいた。


そう、オナニーに出会うまでは。



 ★ ★


亜鉛を飲み、マカを飲み、精力を自ら放出するのはもったいないと思っていた。
しかし、僕は声を大にして言いたい。

オナニーは最高でした、と。

誰に迷惑をかけることもなく、わざわざ街に繰り出し時間を無駄にすることもない。
一晩かけて、「また会いたい」とは到底思えないような子とセックスし、翌朝虚しい気分になることもない。

オナニーなら15分ですべてが終わる。
お金もかからない。世の中には無料のポルノが溢れている。


僕はナンパをやめ、オナニーに目覚めた。

最高の気分だった。

やっと人間に戻れたような気がした。

感情の入らないセックスをするくらいなら、オナニーした方がいい。
オナニーは誰も傷つけないし、いつも僕を優しく包み込んでくれる。


僕はだんだんとオナニーの魅力に取り付かれていた。
僕は日本一のオナニストだった。

天下無双。
オナニー界の宮本武蔵だ。



僕の日課は、人助けとオナニーだった。


 ★ ★


異変に気付いたのは夏が終わり、秋も半ばに差し掛かる頃だった。

ポコチンが痛い。

オナニーによるチンコの金属疲労だった。

毎日毎日、キーボードを叩いて記事を書くはずが、気付けばGoogle画像検索を駆使し、マスをかいていた。


オナニーはたしかに素晴らしい。
オナニーは人類が生み出した叡智の結晶とも呼べる作業であるが、同時に僕の大切なものを奪っていった。


やる気である。


人間にとって大切なのは、意志の力であり、やる気である。

鉛筆を握っているつもりがイチモツを握っているような男はきっと受験には成功しない。
同様に、キーボードを叩いているつもりがポルノ動画を検索しているような男はきっと、立派なブロガーにはなれない。


僕はブロガーとしての岐路に立たされていた。


オナニーやめますか?
それとも、ブログやめますか?


 ★ ★

窓から差し込んできた太陽の光で、僕は目が覚めた。
身体に心地よい疲労感が残っている。

最高の女優と一晩を過ごした後、僕は一つ決意をした。


もうオナニーは、やめよう。


オナニーは最高にコスパの良い射精だが、結局僕には何も残りはしなかった。
これじゃあ、道を徘徊し、ドブさらいのようにナンパしていたあの頃と何も変わっちゃいない。

精子と一緒に、ブログを書く気力も、勉強する気も失ってしまう。

これでは本末転倒じゃないか。
僕はもうオナニーをやめる。


これは僕のコミットメントだ。


デジタルな愛を捨て、生身の愛を探そう。
味気ないセックスを交わす行きずりの女ではなく、0と1でできた女でもない。


僕は愛したオナニーを捨て、人生を再起動(リブート)するんだ。



 ★ ★

自宅のパソコンのhostsファイルを開く。
hostsファイルというのは、IPアドレスとドメイン名を紐付けるファイルだ。

僕はファイルの一番下に、

「127.0.0.1 jp.xvideos.com」

と付け足した。

僕の中からxvideosが消えた。


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