俺の遺言を聴いてほしい

これは俺の遺言だ。

恋人ができない理由は「自信過剰」にあると思う。




中学のときから今でも付き合いがある友達に吉田(仮名)という男がいる。
彼はアラサーになるまで一切モテなかった。

「なるまで」と言ったら語弊があるかもしれない。
アラサーになっても、全くモテなかった。

数年前、彼は全く彼女ができずに本気で悩んでいたので、割と真面目に相談に乗った。

見た目やトーク、出会い方に関するまで、私の経験に基づく知見の全てを授けた。

しかし─────。

真の問題は見た目でもトークでもなく、もっと深い部分にあった。


自信過剰なのである。



そして、この「over confidence(自信過剰)」こそが、彼女ができない大きな原因なのではないかと考えるようになった。
これは吉田だけではなく、世の中のほとんどの男女に当てはまることだ。



吉田は決してイケメンではない。
個人的な紹介、合コン、ナンパ、パーティ・・・。

これまで合計300人以上の女と吉田を会わせてきたが、吉田を「イケメン」と評価する女はたった一人もいなかった。

その代わり、「優しそう」「いい人そう」という評価はよく聞く。

ペラペラと口が回るわけでもなく、気の利いた冗談が言えるわけでもない。
これは吉田に限ったことではなく、世の中にはイケメンも少ないが、面白いことが言える男はもっと少ないのである。


さて、女性から見た吉田を客観的に評価するならば、甘く採点しても100点中20点~30点といったところだろう。もっと低いかもしれない。


しかし、吉田はメンクイなのだ。


ほとんど女性経験がないにも関わらず、一丁前に「あの子はブスだった」「あれは抱けない」などと女を評論する。



恋愛の話をすると、いつもこう言っていた。


「なんで俺に彼女ができないのかわからない」


「俺の何が悪いのかわからない」


あえて主語を大きくして言おう。

吉田に限らず、ほとんどの人間は、自分を客観視することはできない。

他己評価よりはるかに高く自己を評価している。


ツイッターを徘徊していたら、面白いツイートを見つけた。



この左側の男性は、誰がどう見ても昔のホリエモンそのものである。


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しかし、ホリエモン本人は、「全く似ていない」と言う。

これは本人の自己イメージと、他者から見た姿がかけ離れているということを端的に示している。

誰だって、イメージの中では自分は二宮和也なのだ。



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★ ★ ★

一度吉田にペアーズをやらせた。ペアーズは相手を選ばなければ必ず誰かと出会えるし、彼女を作ることもできる。
まずは女性との付き合い経験し、女に慣れることが必要だと思い「誰でもいいから会ってきたらいい」と伝えた。

すると、2週間後、見事に彼女ができた。

吉田にとって、高校以来、人生で2人目の彼女だった。


「おめでとう!」


と私は心から祝福したが、吉田から漏れた言葉は次のようなものだった。


「いや、全然可愛くないんだわ。好きになれない」


たしかにその子は可愛くなかったが、仮に容姿・トーク・スペックなどに採点することができるなら、吉田とその子は釣り合いが取れていたはずだ。

それでも、吉田は言った。


「もっと可愛くないとダメだわ」


そして吉田は、10年ぶりにできた彼女と別れ、また可愛い子を探し始めた──────。



★ ★ ★

リアルな飲み会で「東京姉妹」という単語を聞く日が来るとは思わなかった。


「ネットに『東京姉妹』っていう女がいるんですよ」


大学の後輩である小林かなえは、開口一番切り出した。


「キラキラした女子アカウントなんですけど、その人たちの合コン日記みたいなやつに、前に働いてた会社が紹介されてたんです」

不意にみぞおちに蹴りを入れられたような気分になりながらも、平静を装う。

「へぇ、ネットにはそんな奴らがいるのか」

「はい、けっこう色々言われてたんですけど、意外と当たってるなぁと」

かなえは笑いながら言った。

「東京姉妹のブログを参考にして、今度こそ本気で彼氏を作ろうと思うんです」

「やめとけ」

「えっ」

「いや、なんでもない」


東京姉妹とは、ネットの片隅で愛を叫ぶアカウントである。
正直なところ、「お前は俺のリアルに出てくんじゃねぇ」と声を大にして言いたいが、残念ながら東京姉妹は意外と知名度があるらしい。



さて、そんな後輩女だが、全然彼氏ができない。
聞くところによると、前の彼氏と別れてからもう3年以上まともに彼氏がいないらしい。

20代の女で3年彼氏がいないというのは、何かしら問題がある。
出会いがないか、出会っても恋に発展しないか。


彼女は、後者であった。

婚活パーティやら街コンやら合コンなど、色んなイベントには参加しているらしい。

しかしそのどれにも「まともな人はいなかった」と彼女は言う。

ケチでブサイクな奴ばっかりだったと。

たしかにバリキャリで3ヶ国語を自在に操る彼女に比べたら、世の中の大半の男はケチに見えるかもしれない。
が、彼女も決して美しいとは言えないのである。


いや、あえて言おう。

ブスであると。

外国語は操れても、男心は全く操れやしないと。


しかし、世の中のブスの大半は、岡田准一のようなイケメンが好きだし、秋葉原を歩くキモいオタクに嫌悪感を抱く。

20点のブス(♀)が20点のブサイク(♂)を愛することはほとんどないのである。
同様に、20点のブサイク(♂)は20点のブス(♀)に「妥協」することもない。

なぜなら、自己評価では自分はそうとうに魅力的な人間で、「自分には80点以上がふさわしい」と思っているからだ。


そして、この自信過剰こそが、恋人ができない元凶であると思う。


「俺にはもっと可愛い子がいるんじゃないか?」

「私にはこの人はレベルが低すぎる」

などと考えてしまう。


他者と比較して、羨望を受けたいという気持ちもあるかもしれない。


美しい女と付き合って、羨ましいと思われたい。
金持ちでイケメンな男と結婚して、勝ち誇りたい。

・・・というような、他人に自慢できる恋人を手に入れたい、という欲求だ。

正論を言うならば、あくまで恋愛は男と女の1対1のストーリーなはずで、そこに他者の評価を介在させる必要などないはずなのに。



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株式市場で取引される銘柄のように、全ての男女が数値化され、適正に評価される市場は、恋愛には存在しない。

7203番 吉田 7,525円

みたいに、需要と供給に基づいて適切に評価されるのであればわかりやすいが、恋愛市場は基本的に自分の周りに閉じた世界の中で、歪んだ価格付けがなされている。

それゆえ、自分の評価がやたら高騰するし、逆に言うと、なぜか自己評価が低い美女をワンチャンゲットできたりもする。

なるほどたしかに、恋愛で「幸せ」を感じるためには、「素晴らしい」と思える人を手に入れたほうがいいかもしれない。


しかし、真面目に結婚を意識して、ちゃんと彼氏彼女がほしいと思っている人は、一度高望みをやめて、「自分の評価」を「客観的な評価」に近づけていった方がいいと思う。

現実を見て、他人との比較をやめ、自分を大事にしてくれる「釣り合った人」を大切にすれば、恋人は思ったより簡単にできてしまうに違いない。

そうじゃないと、いつまでも夢の国のピーターパンの世界で生き続けることになり、目の前にいる貴重な機会を不意にしてしまうことになりかねない(これは今、自分自身に言い聞かせていることでもある)

モテルや芸能人みたいな「理想の恋人」を望み続けるうちに、どんどん年を取り、恋愛市場における客観的な価値は下がっていくのである。


余談だが、ペアーズのいいね数は純スペック(顔×肩書き)をわかりやすく示すには良い指標だとは思う。

もちろん、「スペック×女の扱い方」でどれだけモテるかは変わってくるけど。

あるいは、自分に起きた恋愛関係の出来事をノートに書き出してみるといいかもしれない。
それを小説を読むかのように評価することで、自分を客観視することができるだろう。