俺の遺言を聴いてほしい

これは俺の遺言だ。

合コン行ったら「年収1000万以下の男は無理」と言われた。


女と話すのは久しぶりだった。

友達と、ではない。新たに出会う女子である。

あの日、半年ぶりに合コンに呼ばれた僕は緊張で震えていた。

男側の幹事の名はGという。
ゴキブリではない。ゴッホである。

Gは優秀な男であった。

低スペックな僕でも安心できるリーズナブルな店のチョイス、メンバーの人選、そして何より、美魔女を合コンに連れて来てくれた。

繰り返しになるが、新規の女子の会話は半年ぶりである。

合コンが始まった途端、僕は何を話していいのかわからず、とにかくポケモンの話をすることにした。

2016年夏。
ポケモンは老若男女問わず、必ず共通の話題になり得る魔法の言葉である。

僕は隣にいた女の子のポケモン図鑑をディスり、自分のレベル7のポケモンを自慢した。

Gは大変優秀な男なので、合コン中にポケモン博士を名乗り、おそらくは直前にインターネットで入手したであろう、ポケモンのにわか知識をふんだんに披露していた。


Gは言った。

「最初に出てくるポケモンを放置すれば、ピカチューをゲットすることができるんだ」

ツイッターに書いてあった裏技である。

僕は心の中で、

「ピカチューよりも、お前のチューをゲットだぜ」

と呟いたが、スベるのを恐れてセリフ発することができなかった。
なにせ半年ぶりの実践である。

皆がトークのマシンガンを携える中、竹槍で突っ込むようなこの状況に、僕は震えていた。

とにかく酒を飲むしかなかった。


合コンの中盤で自己紹介が始まる時に、美魔女は言った。

「名前と一緒に職業を言って」

「仕事と一緒じゃないと、名前を覚えられない」

僕はこの言葉を聞いた時、Google社員のふりをして女の子を引っ掛ける男がいたことを思い出した。

なんてこった!

Tシャツのロゴに検索窓つけてくればよかった!
そうすれば、語らずともGoogle社員のフリができたのに!

そんなことを考えていると、結局職業を聞かれぬまま自己紹介が終わり、

「どんな人と付き合いたいか」

という話が始まった。

僕は「巨乳で可愛い子がいい」という本音を隠し、皆の話に耳を傾けた。

その時。
美魔女はたしかに、たしかにこう言ったのだ。


「付き合うならやっぱり最低1000万円。40歳までに年収2000万くらい約束された職業の人がいい」


僕はこのセリフを聞いた時、ツイッター上で戦ってきたキラキラ女子達のアイコンに思いを馳せた。

「年収1000万も稼げない男には魅力はない」

「港区では天から金が降ってくる」と言ったキラキラ女子の魂は、現実の世界にも生きていたのだ。

彼女たちの話を聞いている時、僕のiPhoneが震えた。

pokemonGoを開くと、見慣れた画面にモンスターが映っていた。


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僕が投げつけた年収350万のモンスターボールは、彼女たちにカスリもせずに明後日の方向に飛んで、港区の方に転がって消えた。

僕の股間のミニリュウは下を向いたまま一度もバトルに参加することもなく、半年ぶりのGOコンは静かに幕を閉じた。