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俺の遺言を聴いてほしい

これは俺の遺言だ。

【感想】映画「デスノート」は正直イマイチだった。

映画・音楽の感想


僕の大学生活は夜神月と共にあった。

月曜の朝5時に起き上がり、近所のセブンイレブンに駆け込んだ。
ジャンプを買い、ちょっとウォッシュレットのあるトイレを拝借し、家に帰り、いの一番にデスノートを読んだ。

大学の教科書よりもデスノートを読んだ時間の方が長かったと思う。

繰り返し繰り返し丹念にデスノートを読み込み、全てのセリフを覚えた。
ときどき、夜神月になったつもりで、僕の成績を不可にした教授の名前をノートに書いてみたが、何も起こらなかった。

同じクラスに僕と同じくらいデスノートを愛した松山という男がいた。

僕は朝一番にデスノートを読み、決して内容の核心に触れないよう、松山にメールを送った。

「松山、今週のデスノートもヤバイぞ」

「たしかにヤバイですな」


朝の7時。
大学生のメールである。

食パンを食って、もう一度デスノートを読んでから、ONE PIECEやNARUTOを読み、もう一度眠り、授業をサボる。

僕は巷で話題の「どうしようもなくダメな大学生」だったが、それでもデスノートへの情熱だけは誰にも負けなかった。
朝まで飲んだ合コンの帰りでも、先輩にボコボコに潰された部活の飲み会の帰りにも、たった一度だってデスノートを欠かさなかった。


批判を恐れずに言うならば、デスノートのピークはLを殺したところだった。
それ以降のニア・メロ戦はネタ切れ感が否めず、序盤の勢いは完璧に失われていた。

強いて言うならば、夜神月の最期のシーン。
「ジェバンニがやってくれました」のあたりは、最後の最後で盛り上がったと思う。

ポテチの中にテレビを仕込んでLを欺いた夜神月。
南空ナオミを口車に乗せて殺した夜神月。
FBI捜査員の名前を手に入れた夜神月。
そして、ノートを手にして「計画通り」と笑った夜神月。

どれも最高だった。
少年ジャンプ史上最高の知能戦だった。

まさかあのラッキーマンのガモウひろしから、あんな秀逸なネームが生まれるとは思わなかった。
小畑健先生の画力があってこそのデスノートだが、あのストーリーは本当に素晴らしい。

デスノートは不朽の名作だと思う。


今から約10年前。

デスノートは映画化し、松山と二人で隣に座りながら映画を観た。
Lは松山ケンイチだったが、僕の同級生の松山は童貞だった。

あのときの監督は金子修介さんで、デスノートのストーリーを活かし、原作に忠実な良い作品だったと思う。

そして今回、2016年に映画化されたデスノートの監督は佐藤信介さんだ。
wikipediaを見る限り、僕の知っている作品はない。



* * *



ここから先は、ちょっと批判めいたことも書いてしまう。
ネタバレも含む。

なので、見たくない人はブラウザをそっと閉じてほしい。

ここから下は、2016年に公開された映画『デスノート Light up the NEW world』への率直な感想だ。



* * *


結論から言うと、2016年版のデスノートは駄作だった。
佐藤監督は原作をちゃんと読んだのだろうか?

「デスノート」という「名前を書くと人を殺せるノート」のネタだけ取り入れたものの、メンバーのキャラクターが崩壊している。


まず、リュークだ。
最後のシーンで、リュークがノートの所有者である紫苑優輝を助けた。
具体的には、兵士のヘルメットを飛ばすような動きをしたが、本物のリュークはそんなことは絶対しないはずだ。

あの時、夜神月も助けなかったリュークが、「仕方ねぇなぁ」なんて言いながら、人間を助けるはずがないのだ。
なぜこんな脚本にしたのか...。


次に、竜崎。
本物のLは知能戦を得意とする。

が、今回出てきた「Lを継ぐ者」とされる竜崎は、あまりにも雑ではないか。

原作のテレビネタを劣化コピーし、全ての行動が力技。
キラの前に姿を現したときも、あまりにも無策すぎる。

キラも竜崎も、お互いの闘いの動機が薄く、なんで争っているのかもよくわからなくなってきた。
死神が最後に竜崎を助けるが、そこまでの絆があるように描かれていなかったように見える。

ミサを助けたレム以上の絆があったとでもいうのだろうか。
僕にはそうは見えなかった。

そして、なんというかピンチを死神に救われるというような、知能もクソもない竜崎は、やっぱり全然Lっぽくない。


次に、紫苑優輝。
サイバーテロリストということだが、なんで部屋の場所を明かしたのか?
他人のPCを踏み台にするなど、色々とやり方があったはずだが、なんというか、色々雑。

キラの映像を全世界に配信したようだが、今の時代にそんな大規模なコンピューターウイルスを作れるとは思えない。
(Youtubeにuploadした方がまだ現実的だ)

そして、全世界に配信したのになぜか日本語だし、夜神月に子供がいたという設定もちょっと稚拙だと思う。

中途半端にLとキラを出すべきではなかったのだ。
完全なるオリジナルなストーリーにするべきだった。

デスノートが6冊というのも多すぎで、ストーリーを冗長にしていた。
しかも、その6冊が日本に集中するのもおかしい。

「1冊のノートがたまたま、かつて夜神月が生まれた日本に落ちてきた」

というなら話はわかるけど。

漫画でも映画でもそうだけど、論理がおかしくなってくると、途端に面白くなくなってしまう。

フィクションだとしても、ストーリーに一本の筋が通っていることがとても大切なのだ。

その意味で今回のデスノートは筋が通っていなかった。

なぜその行動に出たのか。
そのキャラクターの性格を考えて、行動に矛盾がないか。
その行動を起こすに至る、十分な動機があるか。

観ている人を納得させるだけの理屈が通っていることが大切なのだ。

映画では時間が短く、説明に割くコマもない。だから、エピソードは絞らなければいけない。

にも関わらず、今回のデスノートは原作の部分部分をかいつまんでくっつけるようなストーリーにしていたため、ハチャメチャになってしまっていた。
全体的に、デスノートファンとしては不満足な内容となってしまったというのが、正直なところだ。


* * *


原作が傑作である場合、映画がそれを超えることは少ない。
たしかにそうだが、10年前に観たデスノートのラストシーンは、原作のラストシーンより秀逸だったと僕は思う。

10年の時を経て、映像のクオリティは格段に上がったかもしれないけれど、やっぱり肝になるのは監督が描くストーリーなのだ。
そのストーリーが、10年前を超えられなかったのは、とても残念だった。


DEATH NOTE デスノート(1) (ジャンプ・コミックス)

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