俺の遺言を聴いてほしい

これは俺の遺言だ。

オナ禁を50日続けたらジャンプの恋愛漫画「クロスアカウント」にときめいた。


スポンサーリンク


オナ禁を始めて50日が経った。

無論、オナニーを禁じるだけではない。
その間、生身の女性にも触れておらず、性的なものの一切を遮断した。

最初は溢れ出る欲を抑えることに一日を費やした。インターネットに溢れるポルノの欠片を目にするたび、私の心は揺れたと言ってもいい。

そんな禁欲生活も、30日を過ぎたあたりから変化が見られた。
性的な映像がまるで別の世界の物事のように感じられるのである。

エロが目の前にあっても、どこか自分と無関係なような、ファンタジーを見ているような感覚。
禁欲30日の果てに、私は性を置き去りにしたのだ。

さて、最近の話である。
少年ジャンプで新連載が始まった。

「クロスアカウント」

という恋愛漫画である。

主人公は冴えない普通の男、玉梨大地。
そしてヒロインは1000年に一度レベルの国民的アイドルである皐月菜乃花。いわばジャンプ界の橋本環奈だ。若干、紹介してる私が恥ずかしい。

冴えない男である大地は、周りの女子には「無害くん」と呼ばれ、たとえ体育の直前に女子更衣室に入ってしまったとしても女子からは何とも思われない、という特殊能力を持った草食系男であった。

こういう設定を見るたびに、「現実世界ではどうなっているだろうか?」と考えずにはいられない。

おそらく現実世界の「無害くん」は存在しないことにされるだろう。
「害がない」のではなく、「認識されない」のだ。そして、女子更衣室を覗いて許される男など存在しない。

あくまで、これはファンタジーなのである。

さて、そんな無害くんこと玉梨大地には裏の顔があった。
彼は「有害くん」というツイッターアカウントを運営し、フォロワーは3000人にのぼる。

ツイッターで裏の本音を撒き散らし人気を得た無害くんは、いつか現実世界でも人気者になりたいと考えていた。

一方で、国民的アイドルである皐月は、アイドルであるがゆえに本音を話せず、いつも偽った自分で居続けることにうんざりしていた。

そんな中、「有害くん」アカウントを見つけてしまう。

「今日も一日ニセモノの自分」

という言葉に共感し、彼女が作った裏アカウント「くそみそ男」で「有害くん」をフォローし始める。

冴えない男がツイッターの裏垢で仲良くなった相手が実は国民的アイドルだった

という設定なのである。

な、なんということだろう?
こんなことが起こり得るだろうか?

私が中学生の頃、「アイズ」というエロ漫画があった。

グラビアで大人気の伊織ちゃんと冴えない主人公の話なのだが、中学生だった私は毎週毎週伊織ちゃんにチンコをふるい立たせ、

「未来は明るい。こんな素晴らしい高校生活が待っている」

と、夢を見ていた。

当然、夢見ていた高校生活は叶うことなく、好きな子には振られ、好きじゃない子がストーカーになり、散々であった。

現実は漫画のように都合よくはいかないのである。

「何の取り柄もない男がモテまくる」

というのは、作者の願望というか、世の中の大多数の男の願望を描いたファンタジーに過ぎない。

考えてみると当たり前だろう。
高校にはイケメンがいて、ひたむきに努力する部活のヒーローもいる。

そんな奴らがいる中で

「本当の自分をわかってくれる」

天使が突然現れ、偶然自分に恋してくれる...なんてストーリーはありえない。

そう、ありえないんだよ。


なのに...なぜだろう。

頭ではありえないとわかっているのに、私はときめきを...抑えることができない。

このコマは今週のジャンプのワンシーンである。

(クロスアカウント第3話より引用)

皐月の握手会のチケットが当たった無害くんこと玉梨大地。

リアルで初めて出会うシーンだ。
いわばオフ会だ。

握手会でキモい告白をした玉梨大地の手を

「ありがとう。あなたのおかげで前より自分を好きになれた」

と手を力強く握り返してくれる、というオタクの願望をくすぐるワンシーンに私はときめきを覚えた。ときめきがメモリアルした瞬間だった。

少し前の私なら、このようなシーンを鼻で笑い「ありえない」と一蹴しただろう。

しかし、今の私はオナ禁欲を40日続け、

「女」

という存在がファンタジーになりつつある。

そんな私にこのシチュエーションは響いた。心を掴まれたと言ってもいい。

中学生2年生の時、初めて自慰を覚えてから数十年。こんなにもオナニーを禁じたことはない。こんなにも女と関わらなかったことはない。

一見すると何も変わらないようにも感じられたこの禁欲生活は、確実に私の内面を変えていた。

新鮮なときめきを取り戻すことができたのである。

思えば変化はオナ禁20日目あたりから起こっていた。

「見知らぬ女と話すときに緊張して、何を話していいかわからない」

という童貞特有の特質が現れたのである。
これが第一段階と言っていい。

「恋愛漫画にときめく」

というのは第二段階だろう。
おそらく、第三段階で私の心は童貞に戻る。
予想ではオナ禁90日目。つまり、3ヶ月目で童貞の精神状態に立ち返ることができるだろう。

「アルジャーノンに花束を」という小説を思い出した。

手術で驚異的な知能を得たあとに、徐々にその知能を失っていったアルジャーノン。
そんな彼のように、長年の女遊びで身体に染み付いた私の軽薄な振る舞いが徐々に徐々に抜け落ちていくことが予想される。

やっとまともな人間に戻れそうだ。
今までの自分が頭おかしかったのだ。

「世に生を得るは事を成すにあり」

と坂本龍馬は言った。

「左を制するものは世界を制す」

と誰かが言った。

私はここに新たな格言を刻みたい。

「人間は性欲を制して初めて、成すべき事に集中できるのだ」