男だけどVIOレーザー脱毛したら痛すぎて悶絶した



なんとしても身体から無駄な毛を消滅させてみせる、と決意した私は、数年前からレーザー脱毛を始めた。

ある時はヒゲにレーザーを当て、またある時は腕にレーザーを当てたりもした。

「滅ッッ!」

と心の中で唱えながら、

ジュッ...

と毛が焼ける痛みに耐えてきた。

長い長い、終わりの見えない脱毛の旅だった。

これまで身体の中の様々な部位にレーザーを当て、顔や手、指や足の毛はずいぶん減ったように思う。

しかし私には、否、私の身体には、まだレーザーが届いていない未開の大地があった。


試される大地、VIO。


VIOとは、デリケートゾーンのことである。

上品な人の間では「ハイジニーナ脱毛」と呼ばれているらしい。
アルプスの少女である。


普段は排泄時とベッドの上でしか見ることはない部位。使われる予定のない部位。

2018年1月。私は決意した。

VIOの毛を滅しようと。
この世に生まれて三十余年。

まだ手のつけられていない大地に足を踏み入れようと。

屯田兵、開拓使、征夷大将軍...

かつての先駆者(パイオニア)達を頭に浮かべ、自分の股間に手を伸ばした。

そこには誰にも踏まれたことのない草原が広がっていた。アルプスの草原だった。

指で触れると温もりを感じた。優しい温もりだった。


VIOの脱毛で一番の困難は、レーザーを当てる前に

「自分で毛を剃っておく」

という準備である。


レーザー脱毛を経験したことのない人には意外かもしれないが、レーザー脱毛をする前の準備として、該当箇所の毛は事前に剃っておかなければならない。

顔や腕なら何の問題もなく剃ることができるのだが、お尻に関しては目で見えない。

風呂の中で四苦八苦しながら、カミソリを当てなければならない。

念のため、レーザーを当てる一週間前から剃り始めたが、完全に逆効果であった。


剃った毛は、また生えてくるのである。


一週間前に剃り、また生えてきやがって、3日前に剃り、また生えやがったので当日に剃った。

頭の毛はどんどん薄くなってきているというのに、不要な毛はいつまでも生えてきやがるから困ったものである。


なんとか事前処理を終えて、本番を迎えた。
こんなに本番に緊張したのはセンター試験以来だった。


しかし本番直前で、また一つ大きな問題にぶち当たってしまった。


なんか、トイレに行きたい気がする。


お尻を見られ、レーザーを当てられる...
その最中に"実"を漏らしてしまったらどうしよう...と不安で仕方なくなった。

レーザーを当てられてるときにウンコを漏らすわけにはいかない。レーザーに"実"が直撃してしまうと何が起こるかわからない。

まさに、悪魔の実である。

絶対に...絶対に漏らすわけにはいかないッッ...!

僕は改めて腹に力を入れ、絶対に漏らさぬと決意した。
かつてないほどの固い決意だった。便秘気味のうんこのように固い決意だった。


名前を呼ばれ、ベッドに案内された。
僕はトイレのことばかりが不安だった。


ベッドに横になり、ズボンを脱ぐ。
そしてパンツを脱ぎ、あられもない姿となった。

なんという辱め!死を宣告されたかのよう!

「仰向けになってくださーい。はーい、では当てていきますね〜」

と呑気な調子でレーザーを用意する看護師は、この世の全ての悩みと無関係な世界にいるようだった。

目隠しされ、下はすっぽんぽんで、ローションのようなものを塗られる。
一見するとかなりエロいシチュエーションに見えなくもないが、全然エロくない。

待っているのは拷問である。


レーザーを当てられ始めると、便意は不思議と収まってきた。

ピッピッピッピッ

と一定のリズムを刻むレーザーを、心を無にして耐える。

最初は股とへその間の毛に当ててくれたのだが、ここは全然痛くなかった。

ああ、これは───。

俺は"進化"したのかもしれないな。

あの地獄の"鼻下のレーザー"を耐え切って、死地から復活したサイヤ人のようにパワーアップしたのかもしれない。

と、油断した矢先。

ピッ

プギャア!

ピッ

痛い!

な、なんだこれは...

股に近くなるにつれ、そしてちょうどVの字の部分。つまり割れ目に近付くにつれ、明らかに痛みは増していった。

ピッ

ぐおお...

ピッ

ふおぉぉぉ

歯を食いしばり、脂汗をかきながら拳を握った。


耐えろ…耐えろ…ここが…試練の時ッッ!


片足を曲げて、股の部分に当てるレーザーを受け切り、看護師の手が止まったことを確認し、僕は地獄が終わったことに安堵した。


が、闘いはここでは終わらない。


「はい、ではうつ伏せになってくださーい」


!?


ま、まだあるの!?

仰向けで当てたのは股の部分の「V」と正常位のあそこの部分の「I」で、
次はうつ伏せになって、今度はお尻の穴の周り、つまり「O」にレーザーを当てていく必要があるのだ。


ピッ

お尻の穴が…

ピッ

ギャア!

ピッ

ギャア!

ピッ

痛い痛い痛い!

うつ伏せになってベッドの縁を握り締めながら、俺はなぜこんなことをしているのかと疑問に思わずにはいられなかった。

なぜ、こんな辛い思いをしてVIOを処理しているのか。
使う予定があるわけでもないのに。

いや、違うな。

俺は"進化"したかったんだ。

使う予定がない雌伏の時期に、進化を望んでいたんだ。

絶対に耐え切ってみせる。


看護師は時々心配して


「大丈夫ですか?」


と声をかけてくれた。

僕は「大丈夫、平気です」と答えた。

息をするのも辛い約90分のレーザーを終えた。
初体験を乗り越え、大人になった乙女の気持ちがわかったような気がした。


「次は麻酔も使えるので言ってくださいね」

看護師は僕があまりにもプルプル震えていたので、気を使ってくれたのだ。

「大丈夫です。修行ですから」

清々しい気分で答えた。生まれ変わったような気分だ。

家に帰り、素っ裸になって鏡を見た。

股間に毛が少ない。
減りに減った股間の毛。

鏡で改めて眺めてみて、驚いた。


俺のちんこは...こんなに小さかったのかと。


毛によってずいぶんと下駄を履いていたのだと。
羽根を広げて自分を大きく見せる孔雀のように、僕は毛によってちんこをデカく見せていたのかもしれない。


毛を剃り、初めてVIOにレーザーを当て、改めて自分の小ささに気付いた。
ちんこの小ささを自覚することで、謙虚になれた気がした。


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