「Googleに学ぶ良いチームの作り方。謙虚・尊敬・信頼のHRTの原則を大切に。」という記事で、良いチームを作るためには
- 謙虚(Humility)
- 尊敬(Respect)
- 信頼(Trust)
の3つを大切にしなければならない、という話をしました。
前の記事ではTeam Geekの第3章までの話をざっくりまとめたのですが、この本には他にも良い話が書いてあったので紹介します。
一つ目は「ユーザーの信頼貯金を増やしていく」という話です。
信頼貯金を増やしていく
ユーザーがチームやサービスを信頼するときに裏になるのは論理ではなく、感情です。
「XX社のプロダクトを信頼しているのは、あれこれこういうことがあって、リスクがないからだ」
と論理的に説明する人はいません。
トヨタの車が好きな人も、熱烈なアップルファンも、根本にあるのは
「正の感情の積み重ね」
です。
Team Geekでは、ユーザーの信頼を獲得することがとても大切だと説いています。
ユーザーの期待に応えて、ポジティブな感情が積み重なった結果、そのチームのサービスを信頼してくれるのでしょう。
ユーザーがプロダクトについて語る時の言葉が穏やかなものになるまで、「信頼貯金」を増やしていく必要があります。
信頼について、Team Geekでは以下のように書かれています。
信頼は危険なものでもある。すぐに吹き飛ぶからだ。
会社がユーザーに対する敬意を忘れてしまうと、信頼貯金は一気に空になってしまう。信頼は最も大切なリソースだ。残高に気を配ろう。
何か行動するときには、必ず残高への影響を考えよう。短期的な利便性ではなく、長期的なイメージを大切にしよう。
Team Geekでは主に、ソフトウェアに対する信頼について書かれていますが、これはソフトウェアに限らずブログのようなメディアの運営にも大切なことだと思います。
僕がツイッターアカウントを作ってから3年くらい経ちますが、その間にたくさんのアカウントがマネタイズに失敗して存在感を失っていきました。
多くは短期的な利益を求めてユーザーをないがしろにした結果、信頼を失い、ファンを失っていったように見えました。
強烈な光を放つアカウントがマネタイズに失敗し、ポジショントークに走り、少しずつ輝きを失っていく様子は寂しいものでした。
マネタイズが悪だとは全く思いませんが、ユーザーの信頼貯金を念頭に置かなければいけません。
アホなユーザーを騙してチョロまかしてやろう、なんて考えていると、いつか必ず見破られます。
そして信頼を失います。
マネタイズする時は、自分が本当に良いと思った情報を届けて、その対価としてお金をいただく、ということを忘れてはいけないと思います。
ユーザーに集中する
今の若い人は知らないかもしれませんが、10年ほど前、僕がすごく好きだったSNSがありました。
mixiです。
当時の大学生はみんなmixiが大好きで、お互いに紹介文を書きあったり、日記を書いてコメントしたり、家に帰ってもmixiを開けば誰かがいるみたいなつながりがあって、本当に楽しかったんです。
あんなに楽しいSNSはなかったんじゃないかな。
「mixi中毒」
という言葉もあったくらいで、僕なんか常に「ログイン5分以内」になっていてそれがちょっと恥ずかしかったくらいです。
でも今、僕の周りにmixiをやっている人は一人もいません。
10年前は誰もがやっていたはずのmixiに、今は誰ひとりとしてログインしていないってすごいことだと思いませんか?
ユーザーを置き去りにした改悪を積み重ねた結果、mixiは信頼を失い、一気に人が離れていきました。
あれほどのスピードで人が離れていくサービスは過去、例になかったと思います。
ユーザーとの対話が大切です。
Googleにはとても有名なモットーがあります。
「ユーザーに集中すれば、他のことはすべて後からついてくる」
というものです。
あれやこれやと機能を追加して、幕の内弁当のようなプロダクトを作ってはいけません。
mixiが輝きを失っていったときは、ツイッターを意識してあれやこれやと変な機能を追加しては失敗し、何がしたいのか全くわからないSNSになっていったと記憶しています。
ユーザーが本当に求めていた機能(=足跡機能)を無くしてみたり、めちゃくちゃでしたよね。
成功するソフトウェアというのは、問題を限定してそれをうまく解決したものです。
あらゆる問題を下手に解決するのではなく、多くのユーザーの共通の問題をうまく解決することが大事なのです。
Team Geekにはこう書いてあります。
Less is more(少ないことは良いことだ)
ユーザーは人間である
ソフトウェア開発者はユーザーの意見を真摯に聞く必要があります。
ユーザーの要望全てに対応しろという話ではなく、フィードバックに耳を傾ける姿勢が大切です。
顧客サービスという仕事は、頭のおかしい人に対応する仕事でもないし、魂を吸い取られるような作業でもありません。
ユーザーとの関係について考える哲学的な仕事です。
多くのユーザーは会社やチームと関係を築きたいと思っています。
どこかに意見を言える場所がほしいと思っています。
たとえば、いま僕がこの記事を書いているのは「はてなブログ」ですが、はてなブログには「ユーザー問い合わせ窓口」というページがあります。
はてなユーザーはここからはてなに意見を投げることができるし、はてなブログ開発者ブログにコメントを残すこともできます。
ユーザーを「ページビュー」のようなただの数字として見るのではなく、一人の人間として扱うことが重要です。
ユーザーも顔のない会社、すなわち何を考えているのかよくわからない人間味のない会社には関心を持ちません。
感情の見えないマネタイズBOTのようなツイッターアカウントにはなかなか興味を持ちにくいのと同じ話なのかもしれませんね。
ユーザーに対してもHRT(謙虚・尊敬・信頼)を大切にして、決して見下すことなく、親密な関係を築いていくことが必要があるということです。
どのようなソフトウェアを作ろうと、どのようなメディアを運用しようと、相手にしているのは人間だということを忘れないようにしましょう。
Team Geek ―Googleのギークたちはいかにしてチームを作るのか
- 作者: Brian W. Fitzpatrick,Ben Collins-Sussman,及川卓也,角征典
- 出版社/メーカー: オライリージャパン
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