なぜ若者は会社の飲み会に行きたがらないのか

人が何かに時間を使うとき、その動機は3つに分けられる。


一つ目は、楽しいこと。

二つ目は、自分の役に立つこと。

三つ目は、生きるために必要なことである。



一つ目の「人は楽しいことに時間を使う」のはわかりやすいだろう。


会社の飲み会は嫌でも、仲の良い友達との飲み会を嫌がる人はあまりいない。

それは、仲の良い友達との飲み会が楽しいからである。


映画に行くのも、漫画を読むのも、テレビを観るのも、皆それなりに時間とお金がかかるが、

それでも人が時間を費やすのは、それが楽しいからである。


会社の飲み会を考えてみよう。


特に新人の頃を思い出してほしい。

別に仲が良いわけでもない年上の社員にお酒を注ぎ、隣に座ると延々と


「俺の若い頃はこうだった」


と武勇伝を聞かされ続ける。


それほど尊敬しているわけでもない一般会社員の「仕事論」を延々と聞かされ、

ははあと頷き、


「それだからお前はダメなんだ」


と説教される。


どう考えても、こんな飲み会が楽しいわけがない。


なぜダメなおっさんの語る仕事論が楽しくないかというと、それが全くサービスになっていないからである。

誰かを楽しませようとか、誰かのタメになる話をしようという意識が全くなく、自分が気持ち良くなりたくて口を動かす。


これだと若者が


「会社の飲み会はキャバクラと同じ」


と考えてしまってもおかしくない。





経験上、雰囲気の良い飲み会ではむしろ、年上が若者の話をじっくり聴いているように見える。

年上が偉そうにするでもなく、若者が畏まるでもない飲み会はギスギスした雰囲気が生まれにくく、若者の不満も出にくいように感じている。


二つ目の、「人は自分の役に立つことに時間を使う」について。


英会話をやるのも、ジムに行くのも、わざわざカフェに行って簿記の勉強をするのも、将来それが自分の役に立つと考えているからである。


会社の飲み会が嫌だ〜と言っている若者でも、落合陽一さんの講演には目を輝かせて足を運ぶだろうし、有料サロンの会合に参加する若者もいるだろう。

尊敬する経営者の話を目を輝かせて聞いているかもしれない。


若者だって、自分の役に立つことには時間とお金を惜しまないものである。


翻って会社の飲み会を思い出してみると、そこでの会話は会社の噂だったり、若い頃の残業自慢だったり、若い頃の苦労自慢だったり、将来に役に立ちそうな情報を得られる機会は少ない。


こういう話をすると、


「話が役に立たないのはお前の聞き方が悪いからだ。

役に立つ情報は自分で引き出すんだ」


とか言うおっさんが現れるが、聞き手に配慮するのは年上のマナーである。


相手が楽しんでいるだろうか?

気を遣わせすぎていないだろうか?

相手に興味のある話ができているだろうか?

話している内容をわかりやすく伝えられているだろうか?


などを飲みの途中でこまめに観察し、振る舞いを修正していくのは、会社の飲み会だけではなく合コンでも役に立つ基本スキルだ。


もちろん、一緒にいる相手を完璧に楽しませることは難しいし、相手の役に立つ情報を適切に与えられるとは限らない。

だからといって、


「俺さまの良い話を聞けえ」


と若者に押し付けるのは年上の甘えなのだ。



三つ目は、「人は生きるために必要なことに時間を使う」について。


僕たちはお腹がすいたらご飯を食べるし、嫌だと思っていても会社に行く。

それが生きるために必要だからである。


会社の飲み会が嫌だと思っていても参加してしまうのは、それが生きるために必要なことだからだ。


会社の外で稼ぐ術を知らない若者にとって、生きるとはすなわち、会社から給料をもらうことである。


給料をもらう場である会社での心理的な安全を確保するために、嫌でも飲み会に参加する。


この「生きるために使う時間」というのは最も強く我々を縛るものである。


楽しいことよりも、役に立つことよりも、生きる方が大事だからだ。


だから、口では嫌だ嫌だと言っていても、多くの人は会社の飲み会を休むことができない。


「好きなことだけで生きていく」ためには、そもそも生きていくための土台がなければいけないのだ。


かつて福沢諭吉先生はこう言った。


「独立の気力なき者は必ず人に依頼す。

人に依頼する者は必ず人を恐る。

人を恐るる者は必ず人にへつらうものなり」



独立の気力がない者は、人に依存して、人を恐れ、人にへつらって生きていくものだと。


若者は若者で、力を蓄えなければならない。


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嫌なことには嫌と言える力を



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嘘をつくことなく、好きなことは好きと言える力を



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力の源泉は、金である。


金がなければ何もできない。


その次に、強い意志。


独立自尊の精神である。



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もちろん、すぐに自分の足で立つのは無理かもしれない。


会社にも良いところはたくさんある。


それでも、会社に依存しすぎることなく、精神的に自立するように努めることは間違いではないはずだ。



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