「いつまでも僕を思ってくれている、なんて思っているのは男だけだ。
お前が女を気遣ってる一方で、女はさっさと切り替えて、次の男を探しているよ。
お前のことなんて覚えちゃいない」
恋愛の達人はため息をつきながらこう言った。
「男は別フォルダに保存。女は上書き保存だ。
それも、男の数倍の早さで」
「ペアーズですごい食いつきある子がいるんだけど」
ラーメンを食いながら、タカシは言った。
「えっまじ?どんな子?」
「別にかわいくない」
タカシは豚骨を飲みながら言った。
「あっちから食いついてくるから、とりあえずやっとこうかと思ってるだけ」
タカシは顔が良く、給料が高い会社で働いている。
ハイスペックな総合商社マンだ。
「写真はあるの?」
僕は好奇心で尋ねた。
「コレ」
タカシは興味もなさげに、ラーメンを頬張りながらスマートフォンを渡した。
写真を見て、驚いた。
この子は・・・。
・・・二週間前に僕がペアーズで出会い、
「これからたくさんデートしようね」
などと笑い合った子だ。
かなり深い愛情を示していてくれたように見えたのに、そんな馬鹿な・・・!
なんということだろう。
あっちから来たLINEをちょっと放置したことがあったかもしれないが、でも僕は勝利を確信していたのだ。
しかし、そう思っているのは、僕だけだった。
女の子は、割と合理的に動く。
彼氏がいながら他の男と関係を持つ女の子もたくさん知っているし、僕自身、彼氏がいる女の子と食事に行ったこともある。
彼女たちは悪びれず、一晩楽しんで、彼氏のもとに帰っていくこともあれば、こっちに乗り換える子もいる。
彼女たちは、男の魅力を天秤にかけて、合理的に相手を選んでいるのだ。
あ、こいつはショボいな、と判断されると、本当にゴミのように捨てられたりもする。
相手を縛れるのは、自分の魅力だけ。
堂々と、自信を持っていくしかないのだ。
乗り換えられない唯一の方法は、
「やっぱりこの人以上の人はいない」
と思わせることである。
そして、そう思わせるのに最も有効な方法は、「自分を持つこと」なのだ。
自分を持つこととは何か?
自分の優先順位を明確に持つことだ。
そして、その優先順位の上位を彼女にしないことだ。
まっすぐに目標を持って、それを最優先に追いかける。
逆説的だが、彼女のことを最優先にする男は、彼女にとって優先すべき彼氏ではない。
彼女は優しい彼氏が大好きだけど、自分を何よりも優先して一番に考える男を尊敬しないからだ。
彼女にrespectされること。
respectに値する男になることが、浮気を防ぐ唯一の方法である。
もし既に浮気されてしまったり、二股をかけられている場合はどうすればいいか?
答えは一つ。
「興味をなくす」
ことだ。
他の女の子と遊びに行ってもいいし、仕事に夢中になってもいい。
一番ダメなのは「二番目でもいいから」みたいに食い下がることだ。
そういう男を見て、女の子はどう思うか。
「あ、こいつ、ショボい男やわ」
である。
軽んじられるのだ。
男は絶対に、軽んじられてはならない。女もそうだけど。
僕はこれまでただひたすらに、軽んじられてきて、このまま宙に浮いてしまうのではないかと思われるほどだったんだけど、そんな軽んじられ生活の中で見つけた活路が、堂々と、自分に重みを持たせる、ということである。
さて、そんな堂々とした僕に、タカシから連絡があった。
「やっといたわ」
女の子から僕に連絡が来ることは、二度となかった。