初めてミスチルの「未完」コンサートに行くので張り切ってセトリ予習したら「お前は何もわかってない」と説教された。



桜井さんの歌声を聴きながら、僕は間違いなく濡れていた。

隣の女も濡れていた。
前の男もきっと濡れていた。


秋雨前線真っ只中に行われたMr.childrenのコンサート「未完」

ゲリラとも呼べそうな豪雨の日産スタジアムで、コンサートは行われた。

アーティストのコンサートに行くのは初めてで、初体験がミスチルなのは幸運だった。
昔からミスチルが好きだったからだ。



高校時代。
彼女に振られたときに何度も聴いたのが「over」という曲だった。


「いざとなれば毎晩君が眠りにつく頃 あいも変わらず電話かけてやる」


という桜井さんの歌声に背中を押され、元彼女の家電に電話をかけまくったら、元カノの母親にキレられたことがある。


中学生のとき。

当時は家電から電話をするというのがカップルの常識だったんだけど(お前ら「家電」って知らねーだろ)
初めてできた彼女に電話越しに「抱きしめたい」を熱唱したら、サビのところで親に「うるさい」と怒られ電話を切られた。

ついでに彼女にも二週間で振られた。

あのとき僕は童貞で、ミスチルを信じていた。
愛してるの響きだけで強くなれる気がしたよ。


僕の青春時代の思い出は、ミスチルと共にある。




★ ★ ★


コンサート中、左側の男が泣いているのを見つけた。

歌いながら、涙を流していた。


初めはそんな彼を見て、俺は冷静に、

泣きながら歌っててワロスw

などと思っていた。

しかし周りを見ると、他の人も泣きながら歌ってた。

69,000人で歌う「終わりなき旅」。
繰り返すサビ。


終わりなき旅~


(みんな泣きながら歌っててワロタw)


終わりなき旅~


(泣きながら歌っててワロタw)


終わりなき旅~


(ワロタ・・・)


・・・いつの間にか俺も泣いてたw


何この一体感。
69,000人が声を合わせて歌ってる。

何これ、つられて泣いてしまうわ。

なんだよ、初めてなんだよ、こういうの。
恥ずかしいよ、やめてくれよ。


・・・イントロでワーッて盛り上がって、聴いたことある懐かしい曲が流れて。
みんなで一つの曲を歌うのって、家にいたらできないもんな。

みんなで歌うって、いいな。
初心者丸出しの俺も、コンサートの一部になれただろうか。


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ゲリラ豪雨かっつーくらい土砂降りの雨の中、みんなで歌うイノセントワールド。

大人も子供も混じりっけなしに、そこには無垢な世界ができているようだった。


どしゃ降りの雨でよかった。

流れているのが、雨なのか涙なのかわからないから。



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★ ★ ★


「セトリ」という言葉はみんな知ってるものなのだろうか?

最近初めて知ったんだけど、セトリは「セットリスト」の略で、コンサートで演奏する曲を一覧にしたものらしい。


コンサート慣れした友達は、


「今回は『未完』のライブだから『Reflection』を予習しなきゃいかん」


と言う。

俺も最初はReflectionを聴いて、ひと通り歌詞を覚えようとしていたが、途中素晴らしいアイディアを閃いた。


過去問を見ればいいのだ。


受験勉強だって、過去問を見て、出そうなところから勉強するのが近道だったはずだ。
ライブだって、過去の「未完」ライブでやった曲を見れば、効率よく予習できるはずだ。

早速Googleで

「ミスチル 未完 演奏曲 一覧」

などと検索した。

すると
「ミスチルライブスタジアムツアー2015『未完』セットリスト(福岡・長居・広島・新潟・東京・札幌・名古屋・日産・宮城・大阪)」
というサイトが見つかった。


これだ!


trendsokuho.com



俺はドヤ顔でURLをコピーし、友達にLINEで送りつけた。


「コンサートで歌う曲わかった!これで予習できるわ!」


普段は返信が遅いくせに、即レスで返事がきた。


「お前はアホか」


なん・・・だと?
調べてから予習したほうが効率がいいじゃないか。
曲がわかったら歌えるじゃないか。



アホ。
コンサートの曲は知らないからこそいいんだよ。


なんだと?


何を歌うかわからないから、昔の曲が出てきたときに盛り上がれるし、感動できる。
お前はエースが死ぬってわかってたら頂上戦争を楽しんで読めたか?(ONE PIECEという漫画の話です)


はっと気付いた。
コンサートは受験じゃない。エンターテイメントだ。

過去問を見ない方が、知らないほうが感動できることもある。

実は最初の3曲くらいカンニングしてしまったが、記憶力がないことに定評のある俺は、残り全てを綺麗に忘れることに成功した。


アンコールの時。

一人のファンがスマホのライトを灯した。

ぽつり、またぽつりとスマホのライトが灯る。

その光はスタジアム全体に広がり、夜空に星が輝いているようだった。

すべての照明が消えて、ファンのスマホのライトだけが灯るスタジアム。
ささやかな光の中で歌う桜井さん。


その光景に素直に感動できたのは、ネタバレを知らなかったからなのかも。


愛とは"想像力"のことなんじゃないかなって。


ツイッターでミスチルのコンサートの感想を集めてみました。


この写真は、アンコールの場面でスマホのライトが灯るシーンです。
ライブ中にケータイを取り出すのは禁止されてるけど、この時だけはスマホの許可が出ました。






ナンパのルーティーンに愛と恋の違いって何?みたいのがあるんですが、桜井さんが語る愛は、僕がルーティーンで語る愛とはまるで違う説得力がありましたw

桜井さんは「愛って"想像力"なんじゃなかな」と語ってて、それがすごい印象的だったんです。

どういうことかって?
詳しく書いてくれているブログが2つあったので、紹介します。

ここから桜井の本腰トークだ。スタジアム級の会場でこんなことを語るようになったのも今回からだ。

桜井は「愛」についてまじまじと語った。「僕なりに愛とは何かについて考えてみたんです。
愛と恋は違う。

英語で愛が何て言うか知ってますか?そう『LOVE』です。
でも、恋も『LOVE』って言うんです。

じゃあ愛って何なのか、僕は調べました、ネットを使って(笑)。愛っていうのは、恋愛の愛もそうだし、家族に対しての愛情もそうだし、日本への愛、新潟への愛、あまりにも領域が広すぎて、とても一言で説明できない。愛の反対の意味って知ってますか?

これもネットを使って調べたんですが、そこには『憎しみ』っていうのがあったんです。

それと同時に、『無関心』というものもあった。『無関心』っていうのもああそうだなって納得したんですね」

なんてことを語り、

ここから更に話は仏陀(ブッダ)の話へ。

ブッダのストーリーを簡潔に語りだす桜井。

「僕はこの作品を初めて読んだとき、胸に突き刺さるような衝撃を受けました」

「僕は政治家でも宗教家でもないですが…」

「ブッタを読んで、愛とは『想像力』なんじゃないかと思いました」

「想像力を持ってこの曲を聴いてください。」

花道中央で披露されたのは「11.and I love you」

メッセージ性の強い桜井のMCの後に披露された曲。「and I love you. and I love you.」と最終部分を強く歌い上げる。ここからミスチルのメッセージ性は更に増していく。


http://ripy-jm.com/news/pickup965_mrchildren_mikan_stadiumdometour_livereport.html


www.youtube.com


桜井さんが引用したブッダの話は、ゴータミー尼の話です。
詳しく書いてくれているブログがあったので、引用します。

MCのテーマは“愛”について。壮大なテーマです。
「愛について歌うにあたり・・・」と切り出してのMCでした。
 
 
まずは桜井さん、Wikipediaや電子辞書で「愛」を調べたそうです。
しかし、スケールが大きいし、分野も広すぎるということで、
ピンとくるものは得られなかったとのことです。
 
 
そこで桜井さんが思い出したのは、手塚治虫さん作の漫画『ブッダ』の一場面。
 
  
それはこんな場面だそうです。
(ここからは桜井さんが話したのを記憶の限り再現して書きます)
 
———————————————————————————— 
生まれたばかりの我が子が死んでしまったが、
それをどうしても受け入れられない母親。
もはや腐乱しかけている我が子を抱いたまま、
ブッダのもとを訪ね、こう懇願します。
 
「ブッダ様、この子をどうか生き返らせてください」
 
するとブッダはこう答えます。
 
「わかりました。では、街へ行って、ケシの実をもらってきてください。
 ただし、そのケシの実は、親も子ども兄弟も、
 誰一人死人が出ていない家からもらってきてください」
 
母親は一目散に街へ向かい、ケシの実を探しました。
 
・・・しかし、一向に「死人が出ていない家」などはなく、
母親は散々走り回り、疲れ果ててしまいます。
 
そして、その疲れ果てた体ながらに悟ったのです。
「そうか。いずれ人は死んでしまうものなのだ。
 私の子だけではく、それはどこにでも起こることなのだ」
 
そのことに気づいた母親はブッダにそれを話して聞かせます。
 
するとブッダは、
「生きている子は生きているまま愛せばいい。
 死んでしまった子は死んだまま愛せばいい」
こう母親に言い聞かせたのでした。
———————————————————————————— 
 
と、ここまでが桜井さんの『ブッダ』からの引用でした。
 
「生きている子は生きているまま愛せばいい。
 死んでしまった子は死んだまま愛せばいい」
この言葉に桜井さんは頭を殴られたかのような衝撃を受けたと言っていました。
 
そして最近、愛について、自分なりの答えが浮かんできたのだそうです。
 
 
 
その答えとは、
“愛とは想像力のこと”ではないか。
というもの。
 
 
自分以外の誰かのことを想像してあげる力。
これが愛ではないかという考えに至ったのだそうです。
 
 
 
この話の最後を、
「僕は哲学家でも宗教家でもないけど、
 音楽を通して何かが伝わればいいなと思っています」
と締めくくっていました。


http://kazu-no-upnote.com/philosophy/735


愛とは、自分以外の誰かのことを想像してあげる力なんじゃないかなって。
それをうまく言葉にすることはできないけれど、音楽なら伝えられるんじゃないかって。

そう言って、桜井さんはand I love youを歌い始めました。


最後に愛のあるツイートを見つけたので紹介します。

このサプライズすげーな!
もし女の子にそんなんされたら即結婚するわ!


彼はきっと、彼女が喜んでくれる姿を想像して、この素敵なサプライズを用意してくれたんだと思います。


お幸せに!