このことに気付いたとき、僕は思わず
「エウレカ!」
と叫んだ。
これはギリシャ語の感嘆詞で、
「そうか!わかったぞ!」
と何かを発見した喜びを表現するときに使われる。
僕はここ数ヶ月の間、自分がプライベートで立てた目標やタスクをこなせないことに悩んでいた。
たとえば日曜日に、
「今日は10時間、○○について勉強するぞ」
と意気込んでいても、結局やりきれずに終わってしまうことが多々あった。
プライベートで目標を定めて、それを実現できなかったからといって、誰かに迷惑をかけるわけではない。誰に宣言しているわけでもない。
しかし
「目標を達成できなかった自分」
を自分は知っているわけで、どんどん自分が信じられなくなってしまう。
自分を信じられないということは、自信を失うことに他ならない。
なぜ、強い意志を持って立てたはずの目標が雲散霧消してしまうのだろうか?
悩んでいた最中、ツイッターで「オナ禁」というのが流行り始めた。
自分を慰める行為をやめることで、日々の生活を改善するものである。
これで自分も変われるかもしれない...
と早速取り込み、禁欲してみたが、オナ禁自体には成功しても、意志の力は簡単には戻らなかった。
オナ禁はたしかに素晴らしいが、全てを解決する魔法ではなかったのである。
* * *
一日の時間の使い方を観察し、何に時間を使っているのかを数字でわかるようにした。
すると、かなり多くの時間をネットサーフィン、とりわけツイッターに使っていることに気付いた。
なぜツイッターに張り付いてしまうのかというと、ひとえに反応が嬉しいからである。
反応中毒になってしまっているのだ。
ある程度フォロワーが増えたツイッタラーは多かれ少なかれ、似たような感覚を持っているのではないかと思う。
自分の発言に対して誰かが反応してくれる。
そんな反応が気になって、ツイッターを開いてしまう。
これが反応中毒である。
僕は思い切って、ツイッターのパスワードをおそろしく長いものに変更し、そのパスワードを紙に書き残し、スマホとPCそれぞれでツイッターからログアウトした。
パスワードを書いた紙は物置に封印した。
もう何度目かはわからないが、とりあえず簡単にツイッターを見ることができないようにしたのである。
効果はてきめんだった。
朝起きて、とりあえずスマホを眺めてしまうことがなくなり、すぐに自分がやりたいことに取り掛かるようになった。
作業中に気になってスマホを見ることがなくなり、目の前のことに集中できるようになった。
寝る前にスマホを見てネットサーフィンすることもなくなった。
スマホを見ることによる弊害は、時間を奪われることだけではない。
それよりも大きな問題は、スマホを見ることで、意志の力が分散されてしまうことである。
ここで、点と点が繋がった。
僕の意志の力を奪っていたのは、依存症だったのである。
オナ禁とスマ禁。
そして、その他の依存症を断つこと。
意志の力は、依存症と決別することで養われる。
これまで多くの偉人が禁欲してきたのは、大いなる意志の力を発散してしまわないようにするためなのではないだろうか、とさえ思った。
集中力を保ち、意志の力を内に留める。
そのためには、依存症を脱出する必要がある。
世の中の多くの依存症も、つまりは意志力を奪うものなのではないだろうか?
アルコール、タバコ、炭水化物、甘いもの、性的な刺激...
ウィルパワーという単語が若干のバズワードとなり、「人間の意志力は有限である」という説が広まった。
最初はウィルパワーという概念に懐疑的だった。
そもそも目に見えないものだし、頑張れば意志の力は湧いてくると思っていたからである。
しかし、ウィルパワーに限度があることを前提にして、自分の依存症状と依存行動後のやる気の失いっぷりを考えて、合点がいった。
無意識に行ってしまう行動。
つまり、意志力を使っていることを意識をせずに行ってしまうのが依存行動である。
実はここで多くの意志力が使われていて、限りある自分の意志の力を消耗してしまっていたのではないか。
依存症は、何かをやろうとする意志の力を無意識のうちに奪い、そして人を無気力にする。
逆に言うと、スマ禁、オナ禁、タバコ禁などの「依存断ち」をすることで、意志の力を内に留め、目標達成を推進する力に変えることができるのではないだろうか?
そう閃いたとき、何か「成し遂げる秘訣」のようなものが見えて、点と点がつながった気がして、僕は「エウレカ!(そうか!わかったぞ!)」と叫び、この想いを誰かと共有したくなったのである。
* * *
最後に、ここからは余談だが、この考え方はお金儲けにも応用できると思っている。
人は反応することによって消耗する。意志の力を奪われる。
これをお金儲けに悪用(?)するならば、人を依存させてしまえばいいのである。
反応させる側に回ればいいのだ。
たとえば、TwitterやInstagramで「いいね!」がついているか気になって思わず開いてしまう反応中毒。
スマホゲームの課金中毒。レッドブルのカフェイン中毒。アダルト中毒。ニコチン中毒。
そして、影響力のある誰かの発言を考えなしに信じ込み、教祖に依存するカリスマ宗教ビジネス。
中毒になると、それが習慣であるかのように、疑問を抱くことなく定期的にお金を使ってくれるものだ。
これは商売をする側にとって、とてもおいしいものなのではないだろうか。