小学3年生から一週も欠かさずにジャンプを読み、本棚が溢れるくらいの漫画を買い、時には漫画喫茶にこもり、数え切れないほどの漫画を読んできた僕が思うに、面白い漫画を構成する要素は3つあります。
- 画力
- ストーリー
- ロジック
です。
一つ目の「画力」についてはデスノートの例が一番わかりやすいでしょう。
デスノートの原作は大場つぐみですが、大場つぐみの正体はラッキーマンの作者であるガモウひろしです。
99.9%確定なので断言してもいいでしょう。
バクマンのネームの部分が完全にガモウひろしだったので。
デスノートは2006年5月に終わったにも関わらず、2010年代になっても映画化されたりドラマが放送されたりするくらいの名作です。
「ノートに名前を書かれた人間は死ぬ」
という死神のノートを拾った天才・夜神月。
ノートを使って犯罪者をさばくことで、世の中を良くしようとする夜神月と、その夜神月を捕まえようとするLの心理戦は毎週読者を熱くさせました。
名シーンが多いデスノートですが、最も読者を痺れさせたシーンは記憶を取り戻した月の
「計画通り」
の場面ではないでしょうか。
この月がラッキーマンで書かれていたらどうでしょう。
なんか全然シリアスじゃないし、夜神月の「してやったり顔」が表現できません。
「絵」と「コマ割り」で"魅せる"というのは、面白い漫画の必須要素です。
一昔前のギャグ漫画だったら画力がなくても受け入れられていましたが、今ではどんな漫画もある程度の画力が求められます。
絵の平均レベルはここ20年で明らかに上がっていると思います。
「鬼滅の刃」は例外ですが、ヒット漫画はほぼ全て、絵が上手です。
逆に言うと、ヒットする漫画は連載が長くなるので、作者の絵もどんどん上手になってきます。
新しく始まる漫画にとって一番の難関は
「定期的に読んでくれる読者をつける」
ことです。
多くの漫画は巻頭カラーでも読まれず、スルーされていってしまうからです。
ファーストビューで読者を引き込むのもやはり「絵」
ベテランの方が強いのはその辺も関係あるんですよね。
絵で引きつけることができるので。
これまで絵の大切さについて語ってきましたが、画風が変わってしまって魅力が落ちてしまったのは「新宿スワン」の和久井健先生です。
新宿スワンではシリアスな展開と画風がマッチしててめちゃくちゃ面白かったのに、少年マガジンに移ってからは画風がポップな方向に変わっていきました。
新宿スワンがめちゃくちゃ好きだった僕にとっては残念で仕方ありません。
新しい話もタツヒコ風の絵で描いてほしいのですが、連載中の絵はどんどん雑になっていっています。
「デスノート」から「バクマン」に移ったときの絵の変化は良かったんですが、画風を調整するのも大変ですね。
ちなみにDr.STONEのBoichiさんもジャンプで連載するようになってずいぶん画風を明るくしていますね。
この迫力が、こんなにポップになっています。
Dr.STONEは本当に最高の漫画なので、ぜひ読んでほしいです。
さて、面白い漫画を構成する上で次に大事なのは「ストーリー」です。
何を当たり前のことを...と思われるかもしれませんが、どんなに絵がうまくてもストーリーがイマイチだったら売れません。
「ラルグラド」という漫画を覚えている人はいますか?
デスノートが終わった後、小畑健さんが1年だけ描いた漫画です。
小畑健さんの画力を持ってしても、このストーリーを面白くすることはできませんでした。
敗因は挙げればキリがないですが、ざっくりいうとこんな感じでしょうか。
- 「世界を救う」動機がとても曖昧で共感できない
- 設定がわかりづらく、感情移入できない
- キャラが立っていない
似たような設定の「ダイの大冒険」は超傑作でした。
2つの作品を大きく分けたのはきっと、アバン先生とポップの存在でしょう。
彼らの存在が「世界を救う」ストーリーに必然性をもたせ、読者が主人公に感情移入しやすくなりました。
キャラも立っており、世界を救う系の漫画では随一のストーリーであったと言えるでしょう。
それぞれの漫画には「ゴール」があります。
「ハドラーを倒す」
だったり、
「海賊王になる」
だったり、
「火影になるんだってばよ」
だったり。
そんな主人公の「夢」は読者が応援できるようなものでなければいけません。
読者が共感できるストーリーでなければいけません。
余談ですが「ダイの大冒険」を検索してたら、ダイの登場シーンの一コマを見つけました。
この一コマで胸が熱くなりますよね。
ヒーローが登場したって感じがしますよね。
仙人ナルトの登場シーンや、ナッパを倒しに悟空が現れたシーンもそうですが、絶望的な状況で勇者が登場するシーンはいつの時代も読者のハートを掴みます。
最後に「ロジック」の大切さを語らせてください。
絵とストーリーだけではなく、漫画にはロジックも大切です。
ロジックというのは、読者が納得できる論理の筋が通っているかどうかです。
主人公の行動に飛躍がないことが大事です。
「なぜそうなるのか」
「なぜそのような行動を取るのか」
について、ストーリーの中で筋が通ってないといけません。
デスノートはL編が終わって、ニアとメロと闘い始めてから夜神月の行動がおかしくなりました。
読者からしても第二部では
「何やってんだコイツ?」
みたいに思うことはけっこうあったのではないでしょうか?
最後にジャバンニが一晩でやってくれて面白くなりましたが、論理的におかしな行動が多くて、漫画の魅力を損なっていたと思っています。
日本を制覇した後に「世界編」始まり、面白くなくなってしまった漫画がたくさんありました。
マキバオー、ヒカルの碁、アイシールド21などです。
それまで「日本一」を目指して頑張ってきて、その目標を達成したタイミングで終わらせればよかったものの、余計な世界編が始まって作品の質を落としてしまう例です。
読者が「日本」から「世界」への飛躍についてこれず、失速してしまいました。
るろうに剣心も志々雄真編が終わって、縁編が始まってからおかしくなってしまいましたね。
ストーリーとストーリーをつなぐロジックが大事です。
読者に「ん?」と思わせないロジックを慎重に構成する必要があります。
そう考えると、ONE PIECEは本当にすごいですね。
あれだけ多くの伏線を矛盾することのない「謎」として、一本のロジックを通しています。
尾田栄一郎は天才です。