いま振り返ると、就活は出会いのボーナスステージでした。



東京駅を出ると、リクルートスーツを着た学生が忙しそうにスマホを見ながら走っていた。


今年も就活の季節がやってきたのだ。


女子学生は皆ベージュのコートを羽織り、髪を一つに結んでいる。

男子学生は黒いバッグを持って、短髪七三分けの行儀の良い新人みたいな顔で早足に歩いている。


自分が就活中のときは全然意識していなかったけど、就活生は遠くから見てもすぐにわかるくらい、完全に就活生の見た目をしている。


放つオーラの強さで芸能人が発見されてしまうように、就活生も独特のオーラを発しているため、パッと見ただけですぐに


「あ、就活生だ」


とわかってしまうのだ。



自分が就活生のとき。

あのときは目の前の内定を手に入れるために必死で、全く周りが見えていなかった。


しかし今になって振り返ると、就活というイベントは

「出会いのボーナスステージ」

であったように思う。


面接が終わった後に


「面接、圧迫でキツかったですね〜笑」


みたいにごく自然に話しかけた他大学の子と仲良くなって、そのまま一緒に夕ご飯を食べに行ったり、グループディスカッションの後にみんなでカフェに行って、そこで連絡先を交換した子もたくさんいた。


残念ながらその時は就活で頭がいっぱいになっていて全く下心を発揮する機会はなかったのだが、もしあの時の自分に少しでも邪な心があったなら、就職活動というこれ以上ない出会いの機会を利用して、たくさんの女の子と親密になれていただろうなと想像している。


少なくとも今、僕が銀座の出会いバーで女の子に声をかけるよりはるかにイージーな出会いの機会があったはずだ。



女の子と親密になるために大切なものは二つある。


一つ目は、尊敬を勝ち取ることだ。


女子は年齢を問わず


「その人が尊敬に値するかどうか」


をとても大事にする。

もちろん、全くいいところのないダメ男にハマる女の子もいるのだが、これは腕力に劣る小男が寝技に持ち込んで巨漢を倒すみたいなもので、それで万人に勝つのは難しい。


尊敬を勝ち取り、その上で愛を勝ち取るのが王道だ。


普段の僕たちは、食事の後にバーに誘い、そこで下心を見せすぎないように四苦八苦しながら


自分はしっかりとした人間ですよ

自分は愛するに値する男ですよ


と証明していく。

しかし就活中はグループディスカッション的なイベントによって、下心を見せることなく尊敬を勝ち取ることができるのである。


早い段階で人気企業の内定を持っていたら、神である。


もちろん、人気企業の内定者など腐るほどいるのは承知だ。

上には上がいて、絶対に就活では敵わないと思ってしまう怪物に遭遇することもあるだろう。


それがどうしたというのだ。


別に就活王になれと言っているわけではない。



恋は所詮、目に見える範囲での相対評価だ。


就活王は就活王の道を歩めばいい。


すぐ目の前の面接に悩んでいる健気な子からすると、内定を持っているだけで神だ。

本当は貧乏神だとしても、救いの神のような顔で優しくウェブテストを手伝ってあげればいい。


他にはそうだな...。

僕の個人的な経験で申し訳ないが、


「グループディスカッションで論理的に話す」

「議論をまとめながらファシリテーションする」


みたいな小手先の技を駆使するだけで、一部の就活生の尊敬を勝ち取ることができたこともあった。


論理的に話すといっても、難しい数式を証明するような知恵は必要ない。


  • とりあえず結論から話す
  • その後に「なぜなら〜」「というのは〜だから」のように理由を述べる
  • 時間があれば結論を補足する簡単な例え話を出す
  • 最後に「つまり〜」でまとめる


みたいな、型にはまった話し方を心がけていればロジカルな人だと思ってもらえる可能性が高い。

ちなみにこれは意識高い就活生にお馴染みのPREP法である。

P=Point(結論)
R=Reason(理由)
E=Example(事例、具体例)
P=Point(結論を繰り返す)


書いていて恥ずかしくなってきたぞ。


伝えづらいことを伝えるときは、起承転結で語ったほうが良い場合もあるが、ビジネスシーンでは基本的には結論から言う方が好まれる。

世の中の大学生のほとんどは論理的になど生きておらず、そのみずみずしい感性に従って、「物事がなぜそうなるのか」なんて考えずに生きている。

だから、少し「なぜ」を考えて発言するだけで、相対的に論理的な人になれる。

就活の場では、ロジカルっぽく話す人が賢い人と見なされる傾向が非常に強く、テンプレを持っておくとなんやかんやで得することが多い。



もう一つ、女の子と親密な関係を築く上で大切なのは、共通の話題で盛り上がり、信頼関係を築くことだ。


コミュニケーションに関する本にはよく書いてあるのだけれど、人間は同じ話題を共有できる人に安心感を抱く性質がある。

それは


「適当に相槌を打ってフンフン話を聞けばいい」


というものではなく、共通に話題について一緒になって盛り上がり、楽しい時間を共有することが大切だ。

お互いが本当に好きなものや、本気で取り組んでいるものについて話すと、自然と意気投合してしまうだろう。


だから就活はボーナスステージなのだ。


本気で就活をしていたら、共通の話題に困ることはない。会社の話、面接の話、エントリーシートの話。

いくらでも共通の話題で盛り上がることができる。

受験生が受験の話ばかりするように、就活生は面接の話ばかりしていればそれで間が持たないなんてことはなくなるのだ。


余談だが、僕はツイッタラーと飲む時間が好きだ。

いま人生で最も楽しい時間と言っていい。

それはツイッターという共通の趣味があるからで、一緒になって同じ話で盛り上がることができるからである。


就活や受験といった、共通のイベントがある学生と違い、大人は全くバックグラウンドの違う人と共通の話題を持てる機会は少ない。

だから僕は、ツイッターの人たちは、同じ趣味を楽しめるとてもありがたい存在だと思っている。


就活生は独特の空気を纏っている。

悲壮感や焦燥感、不安が伝わってくる。


そんな中、恋愛している余裕などないかもしれない。


実際僕もそうだった。


しかし、会社との恋愛を成就させ、かつ運命の人との恋も実らせたいのであれば、就活はまたとないチャンスだ。


就活中はみんながダサいリクルートスーツを着て、髪を坊ちゃん風にし、

「いかにも就活生」

という見た目をしてくれる。


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恋は所詮相対評価だ。


こんなに周りが勝手に弱体化してくれる機会はない。


リクルートスーツは万人に平等だ。

学校でチャラチャラ遊び、モテにモテまくった奴も皆、等しくダサくなる。


そんな中でちょっと身だしなみに気を使って、ロジカルに話、爽やかに笑うことができたなら、絶対にモテる。

ダントツでモテる。
モテまくること間違いなしだ。


そんな余裕を持てるかどうかは別として、ボーナスステージであることは間違いないので、頭の片隅にでも置いておいてほしい。