『SHOWROOM』前田裕二が外資系証券会社で学んだ、知識よりもスキルよりも大切なこと



前回の記事からの続き。


就職活動で自己分析ノートを30冊以上書いた前田裕二は、面接では何を聞かれても即答できるレベルまで自分のことを深く洗い直していた。


「就活生が50万人いるとしたら、トップ1%の5,000人に入るくらいの勢いで自己内省を深めてやる」


と決意し、本気で自己分析を行ったようだ。


就活では「自己分析しなさい」とよく言われるが、前田裕二レベルで自己分析を深めた人はほとんどいないのではないだろうか。


僕も就活でいくつか内定をもらうことができたが、自己分析は


「自分を深く理解するため」


のものではなく、


「就活に使えそうな人生のエピソードを引っ張ってくるため」


のものだった。


そうすると、面接では口八丁でうまくいくこともあるのだが、自分の本心とズレているため、入社後にミスマッチが起こりやすい。


理想の就活は、自分の理想を嘘偽りなく語り、それでも欲しいと行ってくれる会社に入社することだろう。


就活生側はどうしても「選んでもらう側」なので、そこまで包み隠さず本音を話すことができない。


逆に社会人であれば、既に会社で働いていて収入を確保できている分、本音で面接に挑むことができるのではないかと思う。




「自己分析の目的は人生のコンパスを持つことだ」


と前田裕二は言う。


自分は何を幸せとしているのか。
どこへ向かっているのかという価値観を言語化すること。


これがないとコンパスなしで旅に出るようなもので、自分でも思わぬ方向に向かってしまう。


まずはコンパスを持つための努力をすることが大事なのだ。


さて、そんな感じで就活でも無双した前田裕二が入社したのはUBS証券だった。

スイスに本拠を置く外資系証券会社である。



外資系証券会社でも前田裕二のハードワークは群を抜いていた。


朝4時半に出社して、マーケットが開くまで4時間、資料の下調べをしたり、実務の下準備を完了させる。


誰よりも早く会社に着き、誰よりも遅くまで一生懸命働く。

新卒1年目の睡眠時間は2〜3時間。

起きている時間はすべて仕事に費やしている状態であった。


この生活はアメリカ本社に転勤してからも続く。

アメリカ人はどんなに優秀でも、家族との時間やプライベートを大事にする。

基本的に就業時間以外は働かない。


そんな中で、早朝出社の日課を続ける前田裕二は、アメリカでも驚異的な成果を残している。

他のメンバーが一日かけて仕上げる仕事の大半を午前中に済ませ、周りの人に


「Yujiはクレージーだ」


と言われても働き続けた。


恐るべきタフネスである。


どんなことであっても、人には絶対に負けない。

目に見える成果を早く出して、高みに上るんだという強い執念のような気持ちが常にあったという。


そんな仕事の鬼となった前田裕二が「越えられない壁」と言って尊敬するのがUBS証券の「宇田川さん」である。


この「宇田川さん」はおそらく、最近UBSからみずほ証券のエクイティ本部副本部長に引き抜かれた宇田川宙氏のことだと思われる。

みずほFG:UBSで17年のベテラン宇田川氏を日本株業務で起用



血気盛んな若かりし頃の前田裕二は、宇田川さんに



「この仕事をする上で、勉強しなくてはいけないことは何ですか?」



と訊ねた。


高額な対価をもらうプロとして相応の付加価値を出したいと考えたからである。


すると宇田川さんは、


「勉強なんていらないよ。

とにかく人に好かれること。

秘書でも、掃除のおばちゃんでも、受付の人でも、好かれなくちゃダメだ」


と答えたという。



宇田川さんは人を好きになる天才だった。

人に好かれるためには、それ以前に人を好きにならなければいけない。


他人と接して、その人のいいところや感謝できるポイントを自然に見つけて、まず自分から本当に好きになってしまうという。


宇田川さんが相手を好きになるから、みんなが宇田川さんを好きになり、宇田川さんを好きな人がどんどん集まってくる。


前田裕二からは、宇田川さんの周りは「愛の連鎖がうまく回っている」ように見えたそうだ。



外資系証券会社でずば抜けて優秀な成績を残していた宇田川さん。

営業成績はずっとトップをキープし、携帯メールのアドレスは「best broker(最高の証券マン)」だった。


そんな彼はトップの座に君臨したときに


「一人でたどり着ける高みは、こんなものか...?」


と悟ったのだという。


それからはチームを育てることに尽力。

個人の欲は消えていき、部下の育成に膨大な時間を使い、チームプレー重視の働き方に変わった。


個人として高みに上り、それから個人の限界を悟り、チームの育成に舵を切った彼が意識していることは2つある。


一つ目は、誰からも好かれてサポートしてもらえる環境を作ること。

もう一つは、自分のこと以上に周りに時間を使って、周りを強く育てることで、チームとして最強になること。


その教えは前田裕二のハートにまっすぐに響き、とにかく人に好かれることを心がけるようになったそうだ。


無条件で相手を愛する。

プライベートでもビジネスでも関係なく、全力の愛情を持って接する。


苦手なタイプの人と話す前に、相手の名前を「好きだ!好きだ!」と心の中で100回唱えてから電話した。


人を好きになることは、自分次第でどうにでもなる。

人に好かれるかどうかは自分の意思ではどうにもならない。


自分でコントロールできることに手間をかけるのは、再現性の観点でも、ビジネスにおいて当然だと前田裕二は語っている。


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