「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」は馬鹿にされたときに心を落ち着かせる魔法の言葉



燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや

超人気漫画の『キングダム』は春秋戦国時代の中国の話です。

秦が中国統一を成し遂げ、秦王 政が始皇帝と名乗ったのが紀元前221年。

その11年後、始皇帝は天下巡遊の途中、沙丘(河北省平郷県東北)まで来たとき、重病にかかってあっけなくこの世を去ります。


始皇帝の死後、趙高の悪政もあって、秦王朝はにわかに混乱し始めます。

その社会の混乱のきっかけとなったのが、「陳勝・呉広の乱」と呼ばれる中国史上初の農民反乱です。

この反乱から社会が乱れ始め、あの有名な「項羽と劉邦」の時代につながっていくわけですね。

無理やりポジティブに解釈するならば、陳勝は秦王朝の滅亡のきっかけを作った大人物ともいえます。


陳勝は若い頃はたいへん貧乏で、雇われ労働者として他人の田畑を耕していました。

そんなある日、陳勝は雇い主に向かって、

「富貴の身になっても、お互いを忘れないようにしましょう」

と言いました。


雇い主はそんな陳勝を見て、

「貧乏なくせに何を大言壮語するか」

と笑ったそうです。

そんな雇い主を見て、陳勝はため息をつきながらこう言い返しました。


「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」


「燕や雀のような小鳥にどうして鴻鵠(大きな鳥)の志がわかろうか」という意味です。

小人物には大人物の大きな志はわからない、ということですね。


僕はこの言葉を大学受験の漢文の問題集で見つけて以来、記憶の片隅に残したままにしていました。


色々とチャレンジすると、陰で馬鹿にしてくる人が必ず出てくるものです。

人は、人と違うことをする人を本能的に拒絶する性質があるからです。


自分が内に秘めた想いがあったとしても、他人がそれを理解してくれるとは限りません。

志が大きければ大きいほどたくさん笑われることもあるでしょう。


なので、もし何にチャレンジしている人がいたとして。

そのチャレンジを笑われたときは、


「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」


と呟いてみてください。

「大きな志は人には理解されへんのや」と考えてみると、なんだか心が落ち着いてきませんか?


ちなみに「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」は「えんじゃくいずくんぞ こうこくのこころざしを しらんや」と読みます。

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「世の人は我を何とも言わば言え 我なす事は我のみぞ知る」

日本の幕末。

強大な幕府を倒すには、犬猿の仲である薩摩(鹿児島)と長州(山口)が手を結ぶしかないと、誰もが考えていました。


誰もが望みながら、誰も実現できなかった薩長同盟。

その大事業を圧倒的な情熱と双方の利を説くことによって成し遂げたのが坂本龍馬です。


坂本龍馬が抱いた大きな構想は当初、志士仲間にさえなかなか理解されないものでした。


そんな中、彼はこんな言葉を遺しています。


「世の人は我を何とも言わば言え 我なす事は我のみぞ知る」



「世間は俺のことを勝手に何でも言えばいい。

俺がやることは俺のみが知っているのだ」


という意味です。


世間に理解されなくてもいい。

自分がやるべきことは自分のみが理解している。


裏を返せば、自分は自分が何かを成すことを信じている、ということです。

この坂本龍馬の言葉もまた、野心を持ちながら目が出ず苦しい思いをしている人を励ますものとなるでしょう。


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