怪しいアフィリエイトや情報商材の何が悪なのか



2018年9月、アフィリエイト界隈を騒がせた事件が起こった。

「ブロリコ」と呼ばれる健康サプリメントを扱っているアフィリエイターが「癌専門の内科医」を名乗り、ブロリコは「癌に効く」「抗がん剤の副作用が改善される」と偽りの情報を流していた、という事件である。

サイト運営者は

「医師の資格もないのに内科医を名乗り、アフィリエイト収入のため根拠不明の情報を流した」

ことを謝罪しており、サイトは既に閉鎖。

事の経緯についてはBuzzFeedの記事が詳しい。


このBuzzFeedの記事はYAHOO!ニュースにも転載されており、多くの人の目に触れた可能性が高い。


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「医師が運営する」と語れば情報の信用性が高まり、健康食品が売れやすくなる。

またGoogleも「権威性」を評価する方針を発表しており、

「誰がその情報を発信したのか」

が重要な評価指針になりえる可能性が高い。

その意味で「内科医 工藤」を名乗るのはアフィリエイト収入を大きくする上での戦略だったのだろう。

問題は工藤が内科医でもがん専門家でもなく、何の資格もない会社員だった、ということなのだが。

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せやかて工藤...

怪しい情報商材屋には石を投げよう

サウザーさんが昔のブログで「情報商材屋には石を投げよう」という名エントリを書いていた。

情報には価値があり、情報商材の全てが悪いわけではない。

しかし悪貨が良貨を駆逐するように、悪質な情報商材は市場を破壊し、消費者を食い尽くし、本人だけが一時的にウマい思いをして、未来を潰す。

だからこそ、悪質な情報商材屋を見つけたときは石を投げなければならない、というような内容だったはずだ(旧ブログの復活お願いします)



関連記事:noteの全てが悪いわけではないが、悪質な情報商材には気をつけよう

困っている人がカモられる

情報商材の全てが悪なわけではない。

情報によって救われることもある。

新しいビジネスにつながることもある。

情報商材の全てが悪いとは言えない。多くの人を救うメルマガだってあるし、情報商材を買ったことで大きく人生を好転させた人もいるだろう。


しかし、怪しい情報商材屋は「読者の人生を良くしよう」などとは考えない。

ひたすら、ただひたすらに自分の利益のみを追求する。

読者はお客さんではなく、カモなのである。


そして困ったことに、怪しい情報商材屋は「何をテーマにしたら売れるのか」をよく知っている。

「HARMの法則」とはよく言われるが、人は悩んでいるものにはお金を簡単に払ってしまうのだ。

【HARMの法則】

ネットで売れるものの条件。

H:Health(健康・病気・ダイエット・筋トレ)
A:Ambition(野心・夢・仕事・就職・転職・キャリア)
R:Relation(人間関係・恋愛・結婚・離婚・家族・友人)
M:Money(借金・遺産・詐欺・投資・副業)

Twitterより


もちろんその情報商材が悩みを解決するものであればいい。
本気の悩みが解決されるのは素晴らしいことだ。


問題なのは、本気で悩んでいる人にとっては「内科医 工藤」のような怪しいアフィリエイターのサイトでさえ、救いのサイトに見えてしまうことである。

受験や就活で悩んでいた人ならわかるかもしれないが、将来が本気で不安なときは、どんなものにだってすがりたくなるものだ。

大学受験時代はカリスマ予備校講師の「大丈夫」という言葉に救われたような気分になっていたし、就活中は「就活のカリスマ」と呼ばれる人の内定自慢をありがたく聞いていた。

僕は幸いにも悪質な業者にカモられることはなかったが、


「こうすれば絶対に内定がもらえる」


みたいに言われていたら、多少高価でもお金を払っていたに違いない。


悩んでいる人間はものすごくカモりやすいのだ。


市場が縮小する

怪しいアフィリエイターが起こした事件の一番の被害者は消費者であり、二番目の被害者は真面目に事業に取り組んでいるアフィリエイターだろう。

今回の「ブロリコ」もそうだが、真面目に開発した自社の商品が詐欺サイトで紹介されて風評被害にあったらたまったものではない。


今回のような事件を見た企業の広告担当者が

「アフィリエイト費用を払って宣伝しても評判悪くなることもあるし、これじゃあ届けたい人に商品を届けられない。

いっそアフィリエイト予算は削った方がいいんじゃね?」

と考える可能性は十分にあるだろう。


真面目にサイトを作って、「良いものをちゃんと届けよう」と考えてきたアフィリエイターにとってもいい迷惑だ。

というのも、一人怪しい奴が現れると「周りの人もみんな怪しい」と判断されてしまうからである。


今回の事件の記事を読んだ一般の人たちはアフィリエイターに対して、

「アフィリエイターは怪しくて胡散臭い連中」

「金稼ぎために医者のフリをして、効果が確認されていない商品を売りつける不届き者たち」

というイメージを抱くだろうし、アフィリエイト全体の信用を損ねてしまうと、将来の見込み客も離れていってしまう。


「ネットの商品は信用できないから買わない」

と決意を新たにする人もいるだろう。


結局、怪しい情報商材屋が跋扈することで業界全体の首を絞めることになってしまうのだ。


悪質な事例が発生すると自由が制限される

最近では副業ブームとも言われ、企業が副業解禁に踏み切る流れがある。

今回のような副業による事件が発覚した場合、副業に前向きになっていた会社が副業解禁を躊躇してしまうかもしれない。

社員が問題を起こした場合、企業がそれまで積み重ねてきた信用も一緒に失ってしまう可能性もあるのだ。


今回の事件は商品販売数が10件程度と規模が小さかったこともあり、社会に大きな影響を与える可能性は低いが、

「会社員が副業をやって問題を起こす」

事例が増えてしまうと、副業を後押しする流れに悪影響が出る可能性は否定できない。

結局、「内科医 工藤」は消費者に迷惑をかけ、市場を縮小させ、会社員の自由をも制限し得るという点で、非常に残念な事件だと言えるだろう。

怪しい人をのさばらせておくのは自分にとってもリスクなのだ。

怪しいアフィリエイト商品を見抜く方法

最後に怪しいアフィリエイト商品を見抜く方法を考えてみよう。

第一に、その商品の説明の根拠が妥当性があるかを熟考するべきだ。

たとえば健康食品の場合、なぜその成分が効くのか。

どういうメカニズムでその商品の効果があるのかを論理的に正しく説明できているかを検証しよう。

とはいえ、「内科医 工藤」のようにそれらしい根拠を捏造する輩もいる。

なので根拠自体の妥当性も検証しなければならない。

  • 厚生労働省などの公的な機関が取り上げられていること
  • しかるべき出版社・編集者が関わった文献を根拠にしていること
  • 多数引用されているような論文を元にしていること
  • 実験の結果が紹介されていること

など、根拠がどこまで信頼できるかまで見るのが理想的だ。

ちょっとしたサプリを買うくらいでここまで慎重になるのはコスパが悪いかもしれないが、高価な商品を購入するときはよく調べよう。

そう考えると「完全無欠コーヒー」とかも根拠が薄かったなぁとは思う。
美味しいから好きだけど。


第二に、記事に「一次情報」が盛り込まれているかを確認しよう。

アフィリエイトサイトを作る際によく言われているのは、

「検索で出てくる情報は全て盛り込め」

というものだ。

「他サイトを検索するモチベーションを奪え」

「その記事だけで読者の検索意図を満たすのだ」

というのがアフィサイト構築の基本となる。

そうなると必然的に、他のサイトの文章を切り貼りしたような部分が目立つようになる。

ひどいものになると他のサイトの文言をパクって末尾だけ「〜と言われています」と言い換えて記事を量産するサイトだってある。

一昔前に流行ったWELQなどが典型例だが、WELQが滅びた今でも同様のやり口はある程度の効果を持っているのだ。


結局、そうやってできたサイトはネットに転がっている情報の劣化版のまとめでしかない。


大事なのは、一次情報だ。


自分が経験してどうなったのか。

自分が行ってみてどうだったのか。

自分が食べてみてどう感じたか。


お金だけが目的のアフィリエイターは手間をかけて取材などしない。

なので、記事中に一次体験が欠落している。

記述が寄せ集めの伝聞調になってしまうのだ。


なので、その記事に実体験が盛り込まれているかに注目してみよう。

もちろん個人の体験だけだとサンプル数が少なすぎて「効果が普遍的である」とは言えない。

それでも「本人の経験」が述べられている点で、誠実であるとは言える。

少なくともその人にどんな効果があったのかが語られているからだ。

紹介した記事に誠実さがあるかどうかに注目しよう。



第三の判断ポイントは文章である。

クラウドワークスなどで大量生産した記事の文章はわかりやすい。

記事に情熱や想いなどがなく、テンプレ感が半端ない。

作業で物を書いている人と、何かを伝えたくて物を書いている人は、読む人が読めばすぐにわかる。


「○○(芸能人)の彼氏は?どこに住んでるの?年収は?」

みたいなわかりやすいペラサイトだったり、見出しの下に必ずアイキャッチを入れた

「○○するためのXX個の方法」

みたいなサイトだったり、とにかくテンプレの香りが漂っているのだ。

逆に言うと、ペラサイトをたくさん見れば見るほど、ペラサイトのテンプレが見えてくる。

注意してみると、金太郎飴のように似たような構成で記事が作られているのがわかるはずだ。

インターネットは信用が大事

インターネットには嘘が溢れている。

アマゾンのレビューは操作されているし、ツイッターは偽の肩書を語る「すごそうな人」がたくさんいる。

インフルエンサーはステマで物を売るし、怪しいnoteも日々ばらまかれ続けている。


どんなに気をつけていても、嘘を完璧に見抜くのは難しい。

僕も騙されるし、この記事を読んでいる人も一度は騙されると思う。


だからこそ、失敗したことは絶対に忘れないでほしい。

騙してきた人のことも忘れないでほしい。


インターネットは信用が一番大切だ。

信用を食い物にする人のことを覚えておいて、二度と引っかからないようにしよう。

小さな失敗なら大丈夫。

でも大きな買い物をするときは、「その人が本当に信用できるかどうか」をよく見てからにしてほしい。

面白いことに、一度信用を築いた人は、信用を裏切ることがどれだけ損なのかをよく知っているから、軽々しく人を騙したりはしない。

信用のある人には信用が溜まっていく。

それを見て人が集まってくる。


信用がない人は、常に撒き餌をして新しいカモを探し続ける。

カモを刈り取った後はまた新しいネタで人を集め、巻き上げようとする。

焼畑農業で消耗していくのだ。


ネットの発信は、発信者が「信用を大切にしている人」かどうかをよく見極めて、信用できる人から物を買うようにしよう。

そして信用を大事にしない人には石を投げて近づかないようにしよう。