「怒りは無謀をもって始まり、後悔をもって終わる」
という名言を残したのは紀元前582年に生まれたギリシャの哲学者・ピタゴラスです。
ピタゴラスが死んでから2515年経った現代を生きる私たちも、無謀に怒り、後悔してしまうことは多々あると思います。
アンガーマネジメントは、怒りに対処するための知識・技術を習得することを目的としています。
具体的には、以下のような行動によって後々後悔しないように怒りをコントロールしていこう、ということです。
- イラッとして思わず不機嫌な対応をしてしまう
- ムカッときて、つい言わなくてもよいことを言ってしまう
- 相手の理不尽な言動に下手な怒り方をしてしまう
- イライラすることが多くて、毎日ストレスがたまっている
この記事では最初に、安藤俊介さんという方が著した『アンガーマネジメント入門』という本の内容を紹介していきます。
その後で、本に書かれてはいないけれど、毎日怒髪天を衝く勢いで烈火の如く怒り狂っている僕が、自分自身の怒りの感情を観察して気付いたことを紹介していきます。
同じ事象が起こっても湧き上がる感情は異なる
会社で顔がキモくて口が臭く、モテなそうな上司に理不尽に怒られ、イライラしながら退社していたとします。
駅に向かう途中でチャラチャラしたウェイリーマンにドンッ!と肩をぶつけられました。
「こいつ...絶対に許さん。新品の靴でガムを踏んでしまえばいい」
と、殺意が湧いてきますよね。
一方で。
隣にいるだけで幸せな気分になれる橋本環奈と手をつなぎながらデートしているときに、知らないサラリーマンにドンッと肩を当てられたとしても、
「ふふ...俺は環奈とデートしているというのにこいつは肩ドンを謝ることもできないとは...この愚民が。
愚民よ。刮目せよ。
俺の隣にいる女は橋本環奈ぞ。環奈とデートなうだぞ」
と、怒るどころか哀れみの気持ちでいっぱいになってしまうはずです。
ここから何が言えるかというと、
「同じ出来事でも置かれている状況が違えば、人はまったく違う感情を抱く」
ということです。
「何かの出来事」が私たちを怒らせているのではなく、私たち自身が時と場合に応じて「怒る」という行動を選んでいるのです。
怒りはどのようにして生まれるのか
人は怒りを感じるまでに3つの段階があります。
- 出来事に遭遇する
- 出来事に意味を付ける
- 怒りが発生する
具体例で考えてみましょう。
「出来事に遭遇する」
仕事でくたくたに疲れている中、混んでいる電車に揺られていました。
目の前の席が空いた!と思ったら、顔がキモくてデブのサラリーマンがまるで椅子取りゲームでもするかのように席に滑り込んできました。
「出来事の意味付け」
自分が座れたはずの席に割り込んでくるとは、なんてふてぶてしいデブだ。
肉体だけでなく、性格も太いのか。
そもそもなぜ割り込みなどしてくるのか。
許さん...!
こいつは!間違っている!
「怒りの発生」
デブめ!こいつは間違っている!絶対に許さない!
......というように、怒りが発生するまでには段階があります。
しかしです。
同じように疲れ果てて電車に乗っていたとしても、横に疲れた顔で電車に揺られる橋本環奈がいたらどうでしょうか。
やっぱりこう言ってしまうのではないでしょうか。
「そんな顔してないで、俺のところに座れよ」
と。
仮に割り込まれたとしても、僕なら感謝します。
「目の前に座ってくれてありがとう...」
と。
橋本環奈の話は当然余計ですが、怒りの原因は、私たちの価値観に密接に関わっています。
「電車で割り込みはするべきではない」
「非効率で形式的で無駄な会議をいちいち入れるべきではない」
「人に見下されるのが許せない」
などです。
怒りをコントロールするためには、自分がどのような信念を持っているのかを知ることが重要です。
自分は何に対して怒りを感じるのか。
何が許せないのかを認識することがアンガーマネジメントの第一歩です。
行動と認識の修正を行う
アンガーマネジメントの仕組みは大きく
「行動の修正」
と、
「認識の修正」
に分けられます。
「行動の修正」とは、怒りが発生する段階の途中で、衝動をコントロールすることです。
『アンガーマネジメント』では、「行動を修正」するために以下のようなテクニックが紹介されています。
- 一切考えるのをやめる
- 反応を遅らせるために、怒りを感じた瞬間に頭の中で難しい計算をする
- 「あと一週間で終わる...」のような、自分を落ち着かせる「魔法の呪文」を唱える
- 手元にあるペンを真剣に観察するなどして、思考を別のものに釘付けにする
- 一旦外に出る
.......。
.............。
読んでいて、本当に使えるのかな?と正直疑問に思いましたが、何もしないよりはマシだと思います。
アンガーマネジメント協会代表の方が推奨するテクニックなので、まずは信じて実践しましょう。
それで次に「認識の修正」についてです。
まずは「怒りの感情」を紙に書いて記録して、客観視しましょう。
そこで「自分が何によって怒りを感じるか」を認識します。
自分の「怒りのトリガー」を把握したら、今度は自分自身の信念が歪んでいないかを確認します。
自分にとって「常識」だとか「当たり前」と考えていることは、本当に周りの人にとっても当たり前なのかを考えて、自分が歪んでいた場合は修正するのがアンガーマネジメント流の「認識の修正」です。
「認識の修正」とは、「怒りを感じるトリガー」を認識し、「怒りの感情」をプラスの方向に向けるように自分自身の信念を修正していく作業、とも言えるでしょう。
難しいですね。
個人的には、アンガーマネジメントの本を読んでもすぐに怒りをコントロールできるようには思えませんでした。
価値観を変えるのは難しいですからね。
ただ、ハンターハンターのゴンさんが
「その人を知りたければ、その人が何に対して怒りを感じるかを知れ」
と言っているように、自分自身が何に対して怒りを感じるかをよく理解しておくことは大事です。
「何に対して怒りを感じるか」は自分の価値観に深く関わってくるものだからです。
とりあえず橋本環奈ちゃんの写真を眺めましょう。
環奈ちゃんを見て癒やされたところで、これからは本から少し離れて、僕の個人的な考えを述べていきます。
怒りは癖になる
怒りは癖になります。
どういうことかというと、
「こいつムカつく」
という認識が脳に刷り込まれると、些細なことで怒ってしまうということです。
喧嘩ばかりしている夫婦や、特定の部下ばかりに怒り散らかしている上司に心当たりないですか?
ああいう人は、「何をしたか」に怒っているのではありません。
「こいつはムカつくやつだ」
という思い込みが頭の中にあって、
「怒りをぶつけられるきっかけ」
を無意識に探してしまっているのです。
あとは、「行動そのもの」よりも「自身を軽んじられたこと」に対して怒る、というパターンもありがちです。
・「部屋を片付けておくように言ったのに」→「でも片付けていない」
・「業務をこまめに報告するように言ったのに」→「でも報告が遅い」
→自分の指示が軽んじられているのではないか?
→「怒りの感情が発生!!」
みたいな流れですね。
「何かの行動」に怒っているのではなく、「自分の発言を重んじない」ことに対して怒っているわけです。
本当に求めているのは「行動」よりも「敬意」とか「従順さ」なんですね。
人間って面白いですね。
それで、怒ってしまう人についてです。
恋人と喧嘩ばかりしてしまう人。
部下に腹を立ててしまう人。
友達にイラッとしてしまう人。
そういう人は、やっぱり自分の思考の癖をよく知っておくべきです。
何に対して怒っているのかを認識した上で、リフレーミングします。
リフレーミングとは物事を別の視点で見ることです。
「指示したのに報告をしない無能な部下」
と決めつけるのではなく、
「報告する余裕がないほどの仕事を任せた自分のマネジメントに問題があるのではないか」
と考えるイメージです。
そうやってリフレーミングすることで、衝動的に怒ってしまう自分の認識を改め、冷静になって目の前の出来事に対処することができます。
愛は怒りを鎮める
社会人二年目くらいで仕事が全然できなかったとき、たまに上司に怒られました。
真っ当な指摘もありましたが、理不尽に怒られることもありました。
しかし当時の僕は、怒りを完全にコントロールすることができていました。
なぜならあのときの僕は、恋をしていたからです。
上司に
「○△☓□□□□!」
と怒られているときでも、頭の中で恋している子の顔を思い浮かべるだけで幸せな気持ちになれました。
愛は怒りを鎮めるのです。
皆さん、恋してください。
どんな辛いことでも、恋していれば乗り越えることができます。
辛い残業も、愛があれば頑張れます。
愛する彼女を作ってください。
ちなみにその時に付き合っていた子には三ヶ月で振られました。
「この人に悪気はないんだ」で赦す
ツイッターでイラッとするクソリプが来るときもあるかもしれません。
3回は赦しましょう。
クソリプを喰らったときのおすすめの対処法があります。
「この人に悪気はないんや」
と、勝手に「根はいい人なんだ」と思い込むことです。
クソリプはだいたい一撃で終わることが多く、連続して投げてくる人はあまりいません。
慈愛の心を持って一度赦せば、揉めることなくやり過ごせます。
たまにヤバイ人もいるので、そういう人に遭遇したらそっとミュートしましょう。
関連記事:ツイッターの「ブロック」が危険である理由とミュートを推奨する訳
「悪気はないんや」メソッドは、リアルでイラッとしたときにもおすすめです。
イラッとするときは、元々自分が相手に敵意を持っていることが多いです。
そんな敵意を鎮める魔法の呪文が
「この人は悪気があって言ってるわけじゃないんだ」
です。
ぜひイラッとしたときに使ってみてください。
- 作者: 安藤俊介
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2016/09/07
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