投資銀行のインターンシップで同じチームだった僕のことなど眼中にない男は
「投資銀行目指すなら黒木亮の小説くらい読んでなきゃダメだよね」
と言っていた。
彼は本当にストイックな男で、インターンシップの時点で
「投資銀行のインターンで3時間以上寝るような奴はそもそもこの業界に向いてない」
と言い放ち、インターン中に宿泊したホテルでさっさと寝ようとした僕を心底呆れたような顔で見ていた。
5日間のインターンシップで寝たのは12時間くらいだったろうか。
「むしろ寝ないことが目的になっていないか?」
と疑問を抱かずにはいられなかったが、僕のことなど眼中にないものすごく優秀な男は、寝ないでも平気な顔して日中の作業をこなしていた。
超人だと思った。
そんな彼は今、ゴールドマン・サックスで働いている(と、Facebookのプロフィールに書いてあった)
僕は彼の姿を見て、人間の才能について考えた。
僕たちがこの世に生を受けたことに何かしらの意味があるとすれば、
才能を100%活かしきれないまま死を迎えてしまうのは悲劇ではないか。
彼は生まれ持った才能を100%発揮できるように、日々鍛錬を重ね、自分を高めていったに違いない。
性格は悪いが、本当にストイックな人だった。
天より高いプライドと自負心。
それを裏付ける能力。
就活時からどれを取っても全く敵わなかったが、彼は僕が社会人になって地の底を這いつくばっているときでさえも己を磨き続けていたに違いなく、元々あった差は埋めがたいほど大きく開いた。
しかしこんな僕の中にも向上心が残っているとしたら、その高潔な意識の灯火は、たしかに彼から受け取ったものなのだろう。
余談が長くなったが、今年こそは語学の勉強を頑張ろうと思ったときに、彼が話していた「黒木亮」を思い出したのだ。
そういえば、めちゃくちゃ語学ができる人だったはずだぞ、と。
そこで黒木亮さんの英語の勉強法が載っているという『リスクは金なり』という本を買ってみた。
英語の勉強の参考にしようと思ったからだ。
この本は黒木亮さんのエッセイを集めたもので、語学の勉強に関する項は全体の一部である。
そして残念ながら、ここに書かれている勉強法はなんら特別なものではない。
語学学習に秘策などはなく、どの本にも書かれている当たり前のことを当たり前にやってきただけ、ということがよくわかった。
本の中では「土日語学力 〜留学の必要なし、大声を出せ、週末を使いこなせ〜」という表題で語学学習法が語られている。
黒木さんは27歳になるまで一度も海外に行ったことがなかったが、その頃には仕事で英語ができたし、ドイツ語とアラビア語の日常会話もこなすことができていた。
大学時代は箱根駅伝にも出た体育会系の人である。
彼は「リンガフォン」と呼ばれる教材を毎日必ず30分勉強していた。
箱根駅伝を走った日でも必ずだ。
もちろん「リンガフォン」が語学習得の秘策となったわけではないだろう。
今では「リンガフォン」よりずっと安価で良質な教材がたくさんある。
単純に、毎日欠かさず継続したことが力になったのだ。
黒木さんは、「外国語の習得はスポーツみたいなものだ」と言う。
黙々とグラウンドやトラックで反復練習に汗を流す時間が実力を付けるのだと。
聞き流すだけではいけない。
全神経を集中して意味や文法を考えながら聴いて初めて語学は身につく。
黒木さんは独身寮の二人部屋にいるときでも、毎日必ず30分、声を出して語学の勉強をしていた。
同室の人に「すいません、これから30分間、声を出してやりますので」と断って、語学学習を続けていた。
平日は忙しくて時間が取れなくても、土日は図書館にこもって勉強を続けていた。
つまり、平日は毎日30分、土日はひたすら図書館にこもり、遊ばずに勉強を続けるのが大事だということだ。
なんと当たり前すぎる勉強法なのだろう。
集中して学ぶ時間を毎日確保し、土日をすべて費やすのが秘訣だなんて。
思えばこれまで色々な勉強法的な本を読んできたが、語学に関しては誰もが「毎日やることが大事」「時間を投入すればできるようになる」と述べていた。
もうごちゃごちゃと考えず、一生懸命やるのが語学習得の最大の近道なのかもしれない。
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本を買わなくても検索したらインタビュー記事があった。
内容はこの記事とあまり変わらない。