野村證券では新入社員全員が強制的に読まされるという『昼メシは座って食べるな』を僕も読んでみました。
著者の市村洋文さんは野村證券時代に4年間で2000億円の預かり資産を集めた伝説の証券マンです。
『昼メシは座って食べるな!』を知ったきっかけは「年収チャンネル」です。
真ん中の女、なんで水着なんだよ...。
話が真面目なのに水着が気になって集中できねぇよ...。
ありがとうな。
気を取り直して、Youtubeの内容を簡単にまとめると、
- 野村證券は理不尽ではないが、求められる数字が大きい
- 人呼んで「ノルマ証券」
- ノルマは1年間で口座開設100件
- 100件5億円入れてもらう
- 営業手段は飛び込み訪問、電話、手紙
- 100〜150件飛び込み
- ノルマが達成できないとゴミ箱が飛んだり、上司から至近距離で罵声を浴びせられる
- 至近距離で「どうすんだどうすんだ」と詰められるので、ハッタリを噛ましてとりあえず上司から逃げ、その後無理やり売上を取りに行く
- 同期間の競争に勝って、数字が良ければ居心地が良くなる
- ストレスで内臓が引っ張られる感覚になる
- 肺に穴が開いたり、呼吸器系がおかしくなる人は結構いる
みたいな感じです。
10分の動画から凄絶さが伝わってきますが、『昼メシは座って食べるな!』でも同じようなことが書かれているので、真実なのでしょう。
動画の続きで、個人的に着目したのは以下の発言です。
- お客さんの利益を取るか野村證券の利益を取るのかで板挟みになる
- 数字のために「これはマズイな」と思ったものでも売上を作るために売らなければいけない
『昼メシは座って食べるな!』でもお客様を損させてしまってピンチな場面も描かれているのですが、「最後は挽回してなんとかうまくいった」みたいな話に落ち着くんですね。
株式投資という性格上、お客様に全く損をさせないなんて話はあるわけがなく、また自分が勧める株が絶対に正しいとも言い切れないはずです。
それでも自信を持って、「これを買ってください!」と勧める。
証券マンとして伝説的な結果を残すということは、ある意味ではサイコパス的な資質も必要だということです。
「自分が勧める株が間違っているはずがない」
と思い込むか、後のことは考えずにとにかくお金を集めることに徹するか。
お客さんのことを本気で思いやって、
「ノーロードのインデックスファンドにドルコスト平均法で投資しておきましょう!それが一番無難です!」
なんてことは言えません。
「会社に売れ!と言われた株は絶対にお客さんのためになる」と信じ込まないとやってられないでしょう。
だからなのか、『昼メシは座って食べるな!』に書かれている営業手法は基本的に「情熱を持って伝える」とか「義理人情を大切にする」みたいな、人間の情に訴えてお金を引っ張り出すものばかりになっています。
泥臭いビジネスの現場では理屈よりも情が大事だし、理屈で考えていたら売上は上がりません。
情で大きなお金が動く営業の場で、屁理屈インテリがクールぶって、
「私が学んだ投資理論でいうとォ、この株の理論値はうんたらかんたらで、期待値はァ」
なんて言っても、お客さんは大事なお金を出してくれないわけです。
営業はロジックよりも情。
「上がります!おすすめです!」
と言い切る気合い。
小難しい理論を語るも
「お前が勧めるから良いものなんだろう」
と思わせる、有無を言わせない迫力こそが大事なのだとわかります。
市村さんは徹底しています。
「上から降りてきたノルマには意味があるんだから四の五の言わずにやれ」というのが『昼メシは座って食べるな!』の基本スタンスです。
今なら時代錯誤だろうと言われそうですが、「誰でもできそうなことを誰にもできないレベルやる」を徹底しているのが市村洋文さんの偉大さです。
ちなみに市川さんの出社は毎朝6時で、野村證券入社以来ずっと続けています。
ちなみに『昼メシは座って食べるな!』ではお金を集めまくった記録は繰り返し強調されていますが、集めたお金がどれくらい増えて、お客さんがどのように幸せになったかの記述はありません。
市村さんが「いかに株を売るか、いかにお金を集めるか」の世界の中で生きてきたことが伺えます。
良くも悪くも生粋の証券マンで、数字を上げることに特化した戦闘民族とも言えるでしょう。
市村洋文の伝説まとめ
本では最初から最後まで伝説になりそうな話ばかりが書かれているのですが、目についたエピソードをざっと箇条書してみます。
- 学生時代にバスのチャータービジネスを始め、1億円稼いだ
- 採用が終わった野村證券に単身乗り込み、人事部の部屋で大声で歌って内定を手に入れた
- 仙台一の高額納税者の社長の元に50回以上通い、警備員に取り押さえられながらも非常階段を登って社長室に飛び込み、10億円出してもらった
- 新人で10億円のお金を集めた
- 野村證券で4年で2000億の預かり資産を集めた
- 最年少で支店長に抜擢され、全国でビリから二番目だった大森支店を全国トップの支店に蘇らせた
- KOBE証券の社長にヘッドハンティングされ、上場させた
いやーすごい人です。
「昼メシを座って食べない」とはどういうことか
市村洋文さんが野村證券に入社した当時、同期でトップの成績を取っていた営業マンから聞いた言葉が本のタイトルになっています。
「のんびり座って昼メシを食べている時間があるなら、一人でも多くお客さんを回れ。
九時から五時まではプレー時間。俺たちはピッチの上で戦っているまっ最中なんだぞ」
その話を聞いて以来、9時から5時まではプレー時間として、昼メシを座って食べることなく一人でも多くのお客様に会いに行っている、というのが『昼メシは座って食べるな!』の由来です。
市村さんの徹底的に仕事に没頭する姿勢を一言で表しているのが「昼メシは座って食べるな」なのです。
仕事は最高の自己実現。昼メシを座って食べないほど、モーレツに働いた人だけが得ることができる最高の喜びです。
「仕事は最高の自己実現」というのは、市村さんの人生を貫く哲学でしょう。
本書の中でも徹底して、仕事に没頭することの大切さが書かれています。
会社員として見習うべき点
『昼メシは座って食べるな!』には会社員として見習うべき点も多々あります。
やっていることは誰でも想像できるようなことです。
徹底すること、気遣いを忘れないこと、身だしなみを整えること、受付の女性社員や秘書を侮らないことなど。
当たり前と思われそうな仕事を高い次元で愚直にやり続けたことが、市村さんの成功の秘訣です。
我々にとっても大事にしたい哲学を抜粋して紹介します。
どんな小さな仕事にも意味はある
「名刺集め」のような泥臭い仕事も敬遠せず、やるなら徹底してやる。
地味な仕事でも真剣にその数をこなしているうちに、物事の本質が見えてくる。
成果を上げるコツは数を撃つこと
新規のお客さんにアプローチするために毎日600通の手紙を送った。
返信率は3〜4%なので、600通送って返ってきた20件を回りやすい順番で営業して回った。
人がやらないときに頑張る
大雪が降った時こそがチャンス。お客様が外に出ていないので、会える確率が上がる。
頑張っている奴だな、と評価してもらえる。
毎朝6時に出社する
市村さんは朝6時に出社して、一日を三回転させる。
お昼までの6時間、昼から夕方までの時間、午後6時からの会食で三回転目。
普通の人の3倍仕事することで、ビジネスの可能性も3倍に膨らむ。
批判的に読んでみる
『昼メシは座って食べるな!』を批判的に読むとしたら、真っ先に上げられるのが、「科学的ではない」「合理的ではない」「軍隊主義の根性論で再現性がない」でしょう。
本で語られているのは基本的に成功した人の「俺様の体験談」であり、強力な成功バイアスがかかっています。
真似したからと言って誰でも同じようになれるとは限らないし、大半の人は身体を壊すと思います。
めちゃくちゃ身体が頑丈な人が、常人の3倍の情熱で、3倍働いてやっと到達する場所に市村さんはいるのです。
本の中では「運」とか「言霊」とか「サーフィンやって波を読めれば相場も読める」みたいな、眉に唾をつけてしまいそうな話が多数紹介されています。
熱意や根性はものすごく大事ですが、全ての記述を盲信するのは危険でしょう。
昭和の時代の根性論
『昼メシは座って食べるな!』では、自腹で700万もの交際費を使ったエピソードが紹介されています。
♪野村のためなら妻をも泣かす♪
などと鼻歌を歌うように述べていますが、700万もの大金を精算できたのは、市村さんが学生時代に1億稼いでいたからです。
入社時点でチート的な武器があったことも、市村さんの成功を後押ししたと言えるでしょう。
伝説の記録は、学生時代からの積み重ねの上にあったのです。
ちなみに
これは特殊な例かもしれませんが、役員になると、野村では何千万円という高給が支給されました。その給与も、結局はこうした自腹の交際費の分を含めた額だというのが暗黙の了解事です。
私は支店長時代に年収二五〇〇万円をもらっていましたが、そのときは自腹を切った交際費が二〇〇〇万円でした。残りは五〇〇万円しかない。だからまったくといっていいほど貯金もできなかった。
そのお金は、お客さんとの関係をつくるために使えということです。ビジネスのためにほんとうに生きるお金なら、ケチってはいけません。
と書かれていますが、交際費を経費にせず、諸々の税金が引かれた後に残った綺麗な金を交際費に使うのはちょっとやりすぎだと思います。
ここまで徹底しているからこそ、市村さんは眩しいような成功を手にしたとも言えますが、普通のサラリーマンは真似できないっすよ...。
ビジネスで成功している人は家庭も成功する?
「客の奥さんを喜ばせるために70万円のプレゼントを買っていった」というエピソードもあります。
奥さんを味方につけると客を落とせるからです。
成功している人の奥さまはすばらしい。
家庭もうまくいっています。ということは逆に言うと、家庭がうまくいっていない人は仕事もうまくいきません。
と市村さんは述べていますが、世界一のお金持ちのジェフ・べゾフを見るまでもなく反論はいくらでも見つかるし、成功した自営業で愛人がいたり浮気している人は山ほどいます。
家庭とビジネスはまた別の話ではないでしょうか。
ファーストヴィレッジでの不満
ファーストヴィレッジでは営業のミーティングをするのは朝7時だそうです。
openworkでファーストヴィレッジを見ると、残業時間が月間79.2時間となっています。
相当なハードワークですよね。
社員クチコミでは
- 土日はないと思ったほうがいい
- 昔ながらの営業手法を神格化している
などと評価されており、厳しい職場の印象を受けました。
個人的には、これだけ長時間働くなら起業した方がいいと思います。
自分が経営者になれば、成果は全て自分のものになるからです。
まとめると、市村さんがすごいのは市村さんだからであって、全部真似するのはとても難しい。
でも仕事に対する姿勢や情熱、細やかな気配りは絶対に見習ったほうがいいし、「働き方改革」などが叫ばれている今だからこそ、市村さんのようなガチガチの根性論で逆張りすれば成功しやすいかもしれない、といったところでしょうか。
すごい人ですよね。本当に。
- 作者: 市村洋文
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