【書評】『トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ』の内容まとめ



肥満の原因はカロリーだと信じてきた。
基礎代謝はほぼ一定で、男性は一日1500キロカロリー(kcal)。
出ていくカロリーと入ってくるカロリーを計算して、7200kcal消費すれば脂肪が1kg減るものと思ってきた。

高たんぱく質・低脂質は正義で、セブンイレブンのサラダチキンは「神の飯」だと信じていた。

『トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ』は、僕が信じてきた常識を覆すような研究結果ばかりが紹介されている。

  • カロリーを減らしても長期的には痩せられない
  • 運動量を増やしても痩せられない
  • 食事は規則正しく3食食べる必要はない
  • 脂質は悪くない

などだ。

これまで様々なダイエットが提唱されてきたが、調査期間が短いものだったり、人間ではなくラットで調査されたものだったりで、結局どれも肥満を撲滅させるに至らなかった。

肥満には長期的に取り組まなければならないのに、短期の研究結果を出されても本質的な問題解決にはならないのだ。

では、肥満の原因は何なのだろうか?

トロント最高の医師であるジェイソン・ファンの主張をまとめていこう。

痩せるためには体重の“設定値”を下げなければいけない

僕たちには体重の“設定値”がある。肥満の原因は、体内のホルモンバランスが崩れることによって、体重の“設定値”が高くなりすぎることだ。


人間には恒常性維持機能(ホメオタシス)があり、体脂肪の調整は無意識に
その設定値通りの体重を維持しようとする。

摂取カロリーを減らせば体重が減るのではないか?
いや、減らない。そもそも基礎代謝が一定ではないのだ。

トロント最高の医師は、

「総エネルギー消費量は人によって50%も前後する」

と述べている。
なので、カロリーを制限して短期的には体重が落ちたとしても、総エネルギー消費量も落ちてしまうので、体重は減らなくなる。


インスリンが肥満の原因

体重を減らそうと思ったら、肥満にはホルモンが関係していることを理解しなければならない。
肥満を招く主要なホルモンは「インスリン」である。肥満はホルモンによって起こるのであり、カロリーのバランスが悪いから起こるのではない。

では体重の設定値を決めているのは何か?
トロント最高の医師は、インスリンが体重の設定値を決めているという。

インスリンはエネルギー代謝を調整するホルモンで、脂肪の蓄積や貯蔵を促進する。

インスリンを投与して、摂取カロリーを300kcal減らすとどうなるかを調べる実験も行われた。

結果、摂取カロリーを減らしたとしても、インスリン値が高いと体重は増加することが証明された。

インスリンの分泌が増えてしまう原因は、インスリン抵抗性にある。

インスリン抵抗性とは、インスリンに体が慣れて、インスリンが効かなくなる状態のことだ。
インスリンが長時間にわたって分泌されている状態がインスリン抵抗性の原因である。

インスリン抵抗性が発現すると、インスリン値が高くなる。
空腹を感じ、代謝量は摂取エネルギーよりも低くなるようにどんどん下がっていく。

ダイエットを成功させるためには、インスリン抵抗性を招く「サイクル」を断ち切らなければならない。

全ての食物にはインスリンの分泌を促す効果があるので、インスリン値を下げるには「まったく何も食べない」という方法しかない。

インスリン値を低くなる時間を繰り返し作ることが、ダイエットの最重要課題だ。

つまり、ファスティング(断食)するべきなのだ。

糖分と精製された炭水化物の摂取量を減らせ

糖分と精製された炭水化物の摂取量を減らせばインスリンも減る。
人工甘味料はカロリーも糖分も減らすことができるが、インスリンを減らすことはできない。

ダイエット食にはサラダチキンなどが推奨されがちだが、これらも実は多量のインスリン分泌を促す。
プロテインには満腹感が増し、食欲が抑制される効果もあるが、インスリンの分泌が促されてしまう。

単純に炭水化物を減らしてたんぱく質を取ればいいというものではないのだ。

一方で、悪者にされがちな脂質だが、脂質を他の食品と一緒に摂ると、血中グルコースの量が減り、インスリンの過剰分泌を防いでくれる。

トロント最高の医師の方針は以下の通りだ。

  • 炭水化物の摂取を減らす
  • たんぱく質の摂取を減らす
  • 脂質を増やす
  • 間食をやめる

特に精製された穀物の摂取を減らすのは極めて重要だ。
白い小麦粉などの精製された穀物はほかのどんな食べ物よりもインスリンの多量分泌を促す。

「間欠的ファスティング」が最も効果的なダイエット手法

間欠的ファスティングとは、日常に断続的な断食を取り入れることだ。
具体的には、月、水、金、日をファスティングの日にする場合、ファスティングの日は

朝:水とコーヒーのみ
昼:水と緑茶と野菜のだし汁1杯
夕食:普通の食事

のようにする。

夕食以外は食べない。
前日の夕食から翌日の夕食まで、24時間の断食を生活に組み込む。
ファスティング日以外(上記の例だと火、木、土)は普通に食べてもいい。

本では24時間の間欠的ファスティングか、36時間の間欠的ファスティングが推奨されている。

科学的な研究によって、ファスティングは健康にとてもいいと結論づけられている。
代謝がよくなり、体が元気になり、血糖値が下がる。

ファスティングを行うことで、インスリンの分泌が減り、脂肪が燃える。
ファスティングの効果は24〜36時間後には起こり始める。

ファスティングは成長ホルモンの分泌を促し、アドレナリンの数値も上がる。
アドレナリンの数値が上がると代謝率が3.6%上がり、カロリー制限ダイエットをしたときによく見られるような恐ろしい代謝率の低下は怒らない。4日間のファスティングなら安静時エネルギー消費量は14%も上がる。

ファスティングすることでアドレナリン値が上がると、代謝は良くなるのだ。

昔、与沢翼さんの過激な断食ダイエットが話題になったが、彼は間違ってはいなかった。

oreno-yuigon.hatenablog.com

太っているなら食べなくていいのだ。

体脂肪率4%以上なら確実に効果が出る

ファスティングをすると筋肉が落ちると言われることがあるが、これは正しくない。
人間は「蓄積されたエネルギー」である脂肪を先に燃やして一時的な飢餓状態を乗り越える。

一日置きのファスティングに関する研究では、筋肉が損失するのではないかという懸念はまったく見当違いだということが示された。

一日おきのファスティングを70日間続けると、体重は6%減少し、体脂肪は11.4%も減少した。
除脂肪組織にはまったく変化がなかった。
LDLコレステロールと中性脂肪には大幅な改善が見られ、筋肉組織を維持するための成長ホルモンの分泌量も増えた。

その他の研究でも、ファスティングによって総エネルギー消費量が増えることが証明されている。
インスリンは17%減少し、体が脂肪を燃焼させるようになるため、脂肪酸が370%増えたのだという。

バターコーヒーダイエットの本質は断食では

余談だが、一昔前流行った「完全無欠コーヒー」は、

「バターコーヒーを飲んだから痩せる」

のではなく、

「良質な脂質を摂って、ファスティングしたから痩せた」

のではないだろうか。

完全無欠コーヒーの本では、たしか食事は14時から18時の間に摂って、朝はコーヒー一杯でやり過ごせ、というものだったはずだ。
見方を変えると、バターコーヒーダイエットはファスティングダイエットなのだ。

そこを見落として「バターコーヒーを飲んだら魔法のように痩せる」と考えてしまうと、おそらくダイエットは失敗する。
コーヒーよりもファスティングが体重減少のポイントだったのだ。

oreno-yuigon.hatenablog.com


『トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ』には「何を食べたらいいのか」とか、インスリンが肥満の原因だと突き止めるまでの研究結果が詳細に書かれているので、興味がある人は読んでみてほしい。

トロント最高の医師が教える 世界最新の太らないカラダ

トロント最高の医師が教える 世界最新の太らないカラダ

  • 作者: ジェイソン・ファン,多賀谷正子
  • 出版社/メーカー: サンマーク出版
  • 発売日: 2019/01/08
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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実際にファスティング(断食)をやってみた感想

7月11日から軽めのファスティングを始めた。
夕食を18時〜19時の間に摂って、翌日の12時までインスリンを上げるような食事は摂らない。

間食は一切なしで、夕食後は水だけ。
朝はコーヒーだけ飲んで、昼まで食べない。

16時間程度のファスティングだ。

たまにサボってしまったけれど、約二週間で体重は70.6kgから68.0kgまで落ちた。
ファスティングの結果は後でまとめて記事にしたい。

目標は65kgだ。
身長が180cmなので、65kgまで落とせばこんな僕でも少しはまともになるのではないだろうか。

本に以下のように書いてある。

「お腹がすいて仕方ないときは、どうしたらいいだろうか?」

おそらくこれは、ファスティングをするときに誰もが抱く疑問だろう。
空腹感に苛まれて自分をコントロールできなくなるのではないか、と考えてしまうのである。

だが実際は、空腹感はずっと続くのではなく、波のようにやってくる。
空腹を感じても、やがてそれは過ぎ去る。

これは本当にその通りだった。
空腹感はずっとは続かない。だいたい30分〜1時間程度「お腹空いたなぁ」と気になるが、いつの間にか気にならなくなる。

この「お腹空いたなぁ」を乗り越えられるかが勝負だ。
ここで間食してはいけない。無心で仕事に集中しよう。

ファスティングに慣れてくると、体が脂肪を燃やすようになってくるので、空腹感もおさまる。
ファスティングをすると食欲が増すのではなく、逆に減っていく、と気づく人も多い。

これも本当にその通りで、空腹を我慢するのが当たり前になると、空腹を感じにくくなる。
16〜18時間程度の断食はかなり余裕を持ってこなせるようになってきた。

『トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ』では

「24時間から36時間のファスティングを週に2,3度取り入れる」

ことが推奨されている。

僕は24時間のファスティングを試せてはいないが、16時間ファスティングを一ヶ月程度続けた後に、24時間ファスティングを取り入れてみたい。


余談だが、朝のコーヒーを美味しく飲むための研究結果は以下の記事にまとめている。
oreno-yuigon.hatenablog.com