motoさんの『転職と副業のかけ算』は会社員の人生を変えるかもしれない。
「個人で稼ぐ力を持て」
「企業に依存しない会社員になれ」
というのは、10年以上前からずっと言われてきたことだ。
もしかしたら20年前の就職氷河期から言われていたのかもしれない。
「年功序列・終身雇用は続かない」
「これからは市場価値こそが大事だ」
少し意識の高い学生であれば、誰もが一度は「市場価値を高めたい」「会社に縛られない会社員になりたい」と考えたことがあるだろう。
そんな意識の高い学生もいつの間にやら大企業の中で埋没し、市場価値とは何のことやら、会社の論理にがんじがらめにされ、日々何の成長につながっているのかわからない業務に違和感を覚えながら、悶々と過ごしているかもしれない。
「社内評価ではなく市場価値を上げるために働く」
「市場で評価され、転職を通じて年収を上げていく」
みたいな、誰もが一度は描いたはずのあの目標をずっと見つめ続け、その目標を達成するために行動し続けてきたのがmotoさんだ。
motoさんの『転職と副業のかけ算』は会社員の人生を変えるかもしれない。
現状に不満がある人や不安がある人の「マインドのベクトル」を上に向けてくれる。
少なくとも僕は、moto本を読んだことがきっかけで、自分の仕事に対する考え方を改めた。
自分の市場価値を上げるためにはどのように仕事に取り組めばいいかについて、具体的な考え方を示してくれていたからだ。
その内容と感想、そして僕自身の意見については後述する。
本で公開されているように、motoさんのキャリアは年収240万円からスタートした。
こんなことを書くのは失礼かもしれないけれど、年収240万は決して「高収入」とは言えないだろう。東京だと生活も厳しいかもしれない。
長野の短大を卒業し、地元のホームセンターに就職した年収240万円の若者は今、本業で年収1000万、副業で4000万を稼ぐようになった。
戦略的にブランディングした結果、ツイッターのフォロワーは6万を超え、執筆したnoteは12時間で売上100万円を突破。
出版した書籍はAmazonで売上総合1位を獲得し、VoicyやR25など、今も活躍の幅を広げ続けている。
そんなmotoさんの活躍は、外から見れば輝かしいシンデレラストーリーに見えるかもしれない。
偶然落としたガラスの靴を王子様が見つけてくれたような、そんな奇跡がmotoさんに起きて、彼を成功に導いたように感じてしまうかもしれない。
しかし『転職と副業のかけ算』を読めば、motoさんのサクセスストーリーが奇跡などではなく、
彼が若い頃から綿密な戦略を立て、愚直な行動を積み重ねてきた先に立っていることがよくわかるだろう。
『転職と副業のかけ算』では、motoさんが今に至る過程で何を考え、どんな行動を起こし、なぜそれが結果につながったのかがとにかく具体的に書かれている。
その内容はmotoさんが初めに描いた地図(戦略)の紹介から、歩いてきた道のり(行動)まで、失敗も含めて余すことなく赤裸々に綴られている。
各章に散りばめられた知見は、それぞれがnoteで出せばひと記事1,500円でバカ売れするような内容で、本を読みながら僕はキングダムの信を思い出した。
「motoは『転職と副業のかけ算』で全てを出し尽くすつもりだ」
と。
とにかく贅沢な本である。
僕たちは他人の人生を完全にトレースすることはできない。
本を読んだからといってみんながmotoさんになれるわけではないし、年収5000万を達成するのはさすがに難しいだろう。
それでも、moto本から人生の糧になる学びが得られる可能性は高い。
「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」と語ったのはビスマルクだったが、『転職と副業のかけ算』は「motoさんができるまで」の歴史そのものだ。
僕たちは誰かの経験から学びを得て、自分の糧にすることができる。
『転職と副業のかけ算』には、motoさんが10年以上かけて積み重ね、試行錯誤してきた過程で得た知見の結晶が詰め込まれている。
そこからヒントを得ることで、行動が変わり、結果が変わり、最終的には人生をも良いものに変えることができるかもしれない。
moto本は物事の見え方を変えてくれる。
会社の見方、関わり方を変えてくれる。
副業への取り組み方、考え方を変えてくれる。
僕は本を読んだ後、会社の課題を真剣に考え直し、自分に何ができるのかを改めて考えた。
そして「根性で時間を投入しまくるしかない」と思考停止しがちだった副業についても、一度立ち止まり、自分の時間の使い方を見つめ直すきっかけとなった。
motoさんの経験に影響を受け、自分自身の行動を変えようと思ったのだ。
- 作者:moto
- 発売日: 2019/08/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
moto本の良いところ
キャリアに悩んでいる人や、会社員生活に疑問を抱いている人、副業に興味がある人には特に、『転職と副業のかけ算』をおすすめしたい。
僕自身、moto本を読んで会社員生活と副業に対する考え方が変わったし、その変化は正しいものだと思っている。
はじめにmoto本の魅力をまとめて伝えたい。
ベクトルを上向けてくれる
『転職と副業のかけ算』は会社員を前向きにさせてくれる。
会社の課題を発見し、自分が主体的に動いてその課題を解決することで、“市場価値”が上がる。
会社で機会をもらい、自分の生産性を高め、転職して年収を増やしていく。
そんなサイクルに入っていけるように「自分で動こう」というモチベーションを高めてくれるのが『転職と副業のかけ算』だ。
motoさんの本を読みながら、頭の中にふわっと下のような画像が思い浮かんだ。
縦軸は「意識」や「能力」、「市場価値」や「生産性」、はたまた「収入」かもしれない。横軸は「時間」だ。
本を読んだことがきっかけとなって、これからの人生がもっと良くなるような、そんな確信に近い予感がした。
『転職と副業のかけ算』を今、読むことができてよかった。
これからの仕事に対する姿勢を変えることができるからだ。
考え方を変え、姿勢を変え、行動を変える。
それが人生のベクトルも上向きにしてくれるような気がしたのだ。
転職プレイヤーとしての視点が学べる
転職コンサルタントが書いた転職指南本はこれまでもたくさんあった。
転職を繰り返しながらビジネス界で名を轟かせたような、大成功したビジネスマンの本もあった。
でもmotoさんのような(ある意味で)身近に感じられる人が、一般会社員と同じ目線で転職ノウハウを書いた本はこれまであまり見たことがない。
講師でもなく、偉人でもなく、“プレイヤー”が書いたのが『転職と副業のかけ算』なのだ。
プレイヤーだからこそ、転職エージェントのしがらみもなく、利用者目線で「どんな転職エージェントを使うのがよいか」も紹介してくれる。
フィールド(会社)で何を考えて、どんな行動を取り、どう自分を売り込めば、転職市場で価値が上がるのかを“プレイヤーの目線”で紹介してくれる。
『転職と副業のかけ算』は天空からの上から目線ではなく、同じ会社員の視点から「僕たちはどう生きるか」を教えてくれる本なのだ。
motoさんの経験が凝縮されている
役に立つビジネス本は
- 多数の事例を集め、事例に共通する知見を紹介する研究型
- 個人の体験を開けっぴろげに語る自伝型
のどちらかであることが多いと思っている。
他人の文章のツギハギだったり、意識だけ高い抽象的な文章ばかりだったり、「俺はすごい」とグイグイと自慢話を押し付けてくるタイプのビジネス本は学びが少ない。
また、ネットの情報の寄せ集めだったり、どこかで見聞きした情報を伝聞調で語ってもあまり説得力がない。
motoさんの本に説得力があるのは「自伝型」だからだ。
ご自身が何をしてきたか、何を考えて行動してきたか、そしてどんな失敗があったのかが丁寧に綴られている。
決して自分を大きく見せるわけでなく、行動と結果と理由が具体的に語られてるので、説得力がある。
意識だけに留まることなく、具体的なノウハウまで言及されている点がmoto本の大きな魅力だろう。
副業ブームへの答え
近年は副業が日経新聞に取り上げられるほど身近なものとなり、ネット上でもたくさんの人が
「副業で儲けて脱社畜だ!」
と叫ぶ人がものすごく増えた。
「脱社畜を果たすためにブログを書いて儲けよう」という考え方を否定する気はない。
日々、会社でストレスを感じながら毎日過ごすよりも、自分の裁量で仕事に取り組んだほうが幸せなことも多いだろう。
しかし昨年に比べ、「ブログで副業ブーム」は勢いが削がれてきているようにも見える。
というのも、本業で何らかの専門性があるわけでもなく、「ただ会社に行くのが嫌な人」が発信内容を差別化するのは難しく、脱社畜がブームになって脱社畜ヤーが増えるにつれて、急速にコモディティ化していったからだ。
motoさんの戦略は「本業と副業のかけ算」を基礎としている。
本業で得た知見をネットで公開し、他の人に役に立つ形で情報を届け、収益につなげる。
副業で得た収益によって「本業の余裕」を生み、本業でのチャレンジの土台にする。
本業でチャレンジして得た知見はまた副業につなげていく。副業で得た知見や人脈を本業に還元する。
motoさんの“かけ算戦略”は、本業と副業を切り離す戦略に比べてリスクが低く、うまくいけばリターンが大きい。
実際にブログを書いたり転売してみたり、投資をしてみるとよくわかるのだが、日中会社で働いた後に副業的な作業をするのは時間的・体力的に相当厳しい。本当に厳しい。
副業が本業と全くリンクしない場合、「副業を頑張る」と「本業が疎かになる」はセットになるものと考えるのが妥当で、「副業を本気で頑張る道」を選んだ場合は本業で花を咲かせる道が断たれる可能性は高い。
一方、「本業と副業のかけ算戦略」の場合はそれぞれの作業がリンクするので、副業での収益向上が転職市場での価値の向上にもつながり、本業と副業の両輪で土台を固めることができる。
motoさんの場合はリクルートなどで働いて得た知見を副業につなげていたが、たとえばIT系の企業で働いている人がプライベートの時間でスマホアプリを作ったり、本業で英語を使う人が休日に通訳のアルバイトをするなども「かけ算戦略」になるだろう。
本業で結果を残した人が得られるのは経験と報酬と信頼
情報発信力と本業での成果をかけ算すると、凄まじい富が生まれる。
本業での成果は副業にレバレッジが効くのだ。
たとえば楽天の執行役員だったシバタナオキさんが運営する決算が読めるようになるノートには2019年8月時点で53,000人のフォロワーがいる。
シバタナオキさんは月額1,000円で「決算が読めるようになるマガジン」を提供しており、53,000人のフォロワーのうち約2%にあたる1,000人がマガジンを購読すれば毎月100万円の売上となる。
圧倒的だ。
ツイッターで目立っている田端信太郎さんや箕輪厚介さんも本業と副業をかけ算して莫大な富を生み出した、わかりやすい成功例だろう。
一休の役員である伊藤直也さんも、ブログでの発信からチャンスを掴み、活躍の場を広げてきた人だ。
「本業」は「会社員」でなくてもいい。
堀江貴文さんは過去の本業の実績があったからこそ現在のファンビジネスで成功しているし、
けんすうさんも本業の傍ら、ツイッターで本を紹介するだけで新卒会社員以上のアフィリエイト報酬を得ている。
とはいえ、ここで例に挙げたような「圧倒的な会社員(あるいは起業家)」になるのは普通の人には難しいだろう。
でも、『転職と副業のかけ算』で学べる視点があれば、ブランド人や成功した起業家にならなくても価値ある情報発信ができることがわかる。
「誰かに役に立つ情報」を「第三者にとってわかりやすく」伝えればいいのだ。
「誰かにとって役に立つ情報」は日々の業務でアンテナを立てていればいい。
会社の営業エースの仕事のやり方を真似して、結果が出たなら、そのノウハウを他の人が使えるようにまとめるのもいい。
大企業に勤めている人なら「大きな規模のプロジェクトをどうマネジメントしてきたか」などの知見は、個人目線ではなかなか世に出てきづらいため、貴重な情報になるだろう。
自分の発信チャネルを持つこと。日々の信用を積み重ねること。
本業から「他人に役に立つ知見」を得ること。それを発信すること。
それらを全てかけ算すれば、ものすごい富が生まれる。
本業から得られる知見を副業に還元した際のレバレッジが圧倒的であるため、結局、本業を頑張るのが独立の一番の近道になるようにも感じている。
何も知見が得られないような環境で仕事をしている場合は、『転職と副業のかけ算』の第3章「4度の転職で年収を上げ続けた転職術」を読んで、転職するのがいい。
またSNSの使い方が得意でない場合は、第4章「本業を活かして稼ぐ『サラリーマンの副業』」にフォロワーの増やし方も丁寧に書かれている。
ツイッターのフォロワーは多ければいいというわけではなく、自分に共感してくれるファンを作っていかなければいけない。
見たらわかるように、motoさんのツイッターにはmotoさんファンがたくさんいる。
もちろんファンが増えたのはmotoさんの人柄もあるが、天然でアカウントを運営していたわけではなく、きちんと戦略を考えてアカウントを運用していたのだ。
ツイッターには息を吐くようにツイートして共感を呼びまくる天才型と、共感を呼ぶコンテンツを戦略的に生み出す計算型がいる。
天才型になるのは難しいが、計算型のアカウントは戦略と努力で作ることができる。
その方法は『転職と副業のかけ算』に全て書かれている。
- 作者:moto
- 発売日: 2019/08/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
リスク許容度と取るべき戦略
本業と副業のかけ算戦略はリスクが低く、本業で得られる知見が稀少なものである場合はリターンも大きくなる。
また副業の努力が本業の堕落につながることもなく、本業への悪影響も少ないはずだ(というより、本業に大きなプラスの影響がある)
一方で、本業と副業のかけ算戦略には「副業側に割けるリソースが少なくなる」という面もある。
「いつかは会社を辞めて副業方面で独立したい」と固く決意している人であれば、「本業はバイトやで」と割り切って副業側に集中した方がいいかもしれない。
また「本業と副業でかけ算する戦略」は「本業を続けること」が前提になっているため、
「どうしても会社を辞めて独立したい」
という目的にはマッチしない可能性もある。
「転職と副業のかけ算戦略」は会社員の収入減のリスクを下げ、生涯年収を高めるための理想的な戦略ではあるが、最終的には本人のリスク許容度に応じて戦略を選ぶのがいいと僕は思う。
リスクを取って、いつかは自由とお金を掴みたい人は、限りなく起業に近い形で副業に取り組むのがいいだろうし、
副業を本業での活躍につなげたいとか、人生のリスクヘッジを望む人はかけ算戦略を取るのがいい。
他にも「会社に副業がバレたらまずい...」と感じる人もいると思うが、そういう人は最初はマネタイズせずに副業的な発信をしておくといい。副業は場を固めるのが大変で、マネタイズは後からでもきっとできる。
motoさんの本の良いところは、本業への成果につながる副業戦略や、その具体的なノウハウを解説してくれるところだ。
「時給を意識して、副業では自分が手を動かさなくてもお金を稼げる仕組みを作る」
という考え方と、その作り方については特に参考になった。
具体的に何をすればいいか、どんなテーマを選べばいいかは本を読んでみてほしい。
年収を上げるには「今いる会社」で成果を出すのが大前提
motoさんの本の良いところは、「今の環境で成果を出そう」というモチベーションを喚起される点だ。
転職で年収を上げ続けるには大前提として、「今いる会社」で成果を出すことが必要です。
とmotoさんが本で述べているように、今いる会社で成果を残すことが転職の大前提となる。
転職の面接でも「会社で最も誇らしい成果を上げたのはどんなときですか?」みたいなことを聞かれたし、どの会社の転職面接でも会社での経験を話すことになるだろう。
僕は転職をする際、自分を「商品」として捉えるようにしています。
商品は鮮度が命。だから転職を考えていないときでも、毎月1回は自分の職務経歴書を見直します。
受験で模試を受けるように、職務経歴書を見直しながら「年収の増加に紐づく経験」を積むことができているかを確認する。
さらに
「定期的に職務経歴書を見直して、転職エージェントと面談して自分の値段を把握する」
のは自分の客観的な市場価値を確認するために必要な作業だと感じた。
会社内の内輪の評価だけを見ていると、自分の市場価値が見えなくなってしまうからだ。
「自分の職務経歴書を意識しながら仕事する」という発想が新鮮で、
過去問から「出る問題」を逆算しながら勉強する受験勉強にも通じる発想だな、と思った。
職務経歴書を意識することで、目先の仕事をサボるよりも「市場価値につながるような成果を出す方向」に行動するインセンティブが生まれる。
それがmotoさんの以下のツイートにつながっているのだな、と読みながら納得していた。
市場価値の低い人に共通するのは「何をしても同じ給料なら無駄に働かない方がいい」というマインド。この考え方は短期的に見ると時給高いかもしれないけど、長期で見ると経験値低くなるし仕事のスタンスも受け身のままになる。目先の時給とか上司の評価よりも、自分の市場価値を大事にした方がいいよ。
— motoさん『転職と副業のかけ算』 Amazon総合1位になりました👑 (@moto_recruit) 2019年1月25日
『転職と副業のかけ算』には年収240万でキャリアをスタートさせたmotoさんが年収5000万に到達するまでに考えてきた、motoさんの“発想の素”がたくさん詰め込まれている。
どんな境遇にいる人でも人生は自分次第で、正しい戦略と行動力があれば、「生涯年収を最大化する生き方」は実現できるのではないか。
moto本は出口の見えない暗い洞窟の中を手探りで歩く会社員に、地図と松明を与えてくれたような気がした。
自分のキャリアに“アンテナ”が立った気がした。
- 作者:moto
- 発売日: 2019/08/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
【追記】
レビューについて考察した記事がこちらです。
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