インフルエンサーは“攻め”と“守り”双方の強さを兼ね備えた王騎将軍を目指すべき



クロネコ屋さんがイケダハヤトさんに熱いラブレターを送っていた。
脱社畜サロン騒動以後、影響力が落ちたイケハヤさんに対し、反省点と今後の振る舞い方をアドバイスした内容だ。

イケダハヤトに送る毒入りラブレター【ブロック覚悟で愛を叫ぶ】

元記事を読めば、イケハヤさんを怒らせないように、ものすごく気を遣って執筆しているのがわかる。
イケハヤさんは批判する人間は容赦なくブロックするので、逆鱗に触れないように注意を払っているのだ。

記事にはツッコミどころもある。

「イケハヤさんがオワコンになった」というアンチへの反論として、「広瀬隆雄さんに言及されていたからオワコンではない」というのは根拠としては弱すぎる。

オワコンかどうかというのはインプレッション数やフォロワー、チャンネル登録者数の増減で語られるべきだ。

批判が多いイケハヤさんだが、yuturaというサイトでチャンネル登録者数の推移を見ると、右肩上がりに伸びていることがわかる。

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ツイッターのフォロワー数もわずかではあるが増え続けており、個人的な好き嫌いは別にすると、イケハヤ先生を「オワコン」と断ずるのは難しいだろう。

ツイッターのインプレッションが落ちているかどうかは僕からは数字では見えないが、以前に比べて炎上が減っているのは他のインフルエンサーとの絡みが減ってしまったからで、それはクロネコ屋さんの指摘の通りだ。


クロネコ屋さんは

「脱社畜サロンの騒動では、イケハヤさんは謝罪芸をするべきだった」

と述べている。

その上で、田端信太郎さんなどのビジネスマンをフォロワーに持つ人のブロックを解除し、閉鎖してしまったプロレス会場を再開せよ、と提案している。

要は田端さん達と仲直りしてまた世論を煽ればいいじゃん、そうしたらもっと炎上して、またツイッターで目立てるよ、という話だ。

クロネコさんの提案はネット芸人への助言としては正しい面もある。

しかし、イケハヤ先生への助言が「再び炎上できるようにしよう」だけでは片手落ち感が否めない。

インフルエンサーは“攻め”だけではなく、“守り”にも力を入れるべきだと思うからだ。


ファンの焼畑農業は限界にきている

イケハヤさんはネットで論争を巻き起こし、そのたびにアンチとファンを増やしてきた。

アンチは元からお金を落とさないため、増えようと文句を言われようとイケハヤさんは困らない。

逆にアンチやインフルエンサーとの抗争がきっかけとなって新たなファンが増えれば、イケハヤさんにとっては大きな利益だった。

イケハヤ先生はキングダムに例えるなら蒙武将軍である。

とにかく攻めが強く、守らない。

下の記事でも書いたが、心にアストロンをかけて敵の攻撃を無力化しながら攻めていけるのがイケハヤさんなのだ。

oreno-yuigon.hatenablog.com


既存のファンがイケハヤさんに愛想を尽かしたとしても、大きな炎上によって不死鳥のように蘇り、その都度新たなファンを獲得し、影響力を高めてきた。


冒頭のクロネコさんの提案は、「イケハヤ先生は再び炎上の舞台に立ち、新たなファンの獲得策に走るべし」というものだ。
イケハヤは蒙武将軍のように攻めるべしと。

しかし、戦の強さには二種ある。

“攻”と“守”だ。

戦の強さには“攻”と“守”があると語る昌文君
『キングダム』11巻より


イケハヤ先生のファン {A, B, C, D, E} の集合があったとして、今まではAとBがいなくなっても、 {C, D, E, F, G, H, I} みたいに、新たなファンが増えてきたからよかった。

しかしアルファベットが26個しかないように、炎上によって獲得できるファンにも限りがある。

ファンの焼畑農業で次から次へと新しい客層を開拓するのもやり方としては間違っていないが、既存のファンの満足度を高める“守”の運用に目を向けるべきではないだろうか?

保守運用によって利益を上げる企業がたくさんあるように、インフルエンサーのファンビジネスも保守運用をもう少し重んじるべきだと思うのだ。

脱社畜サロン(スキルシェアサロン)は日本のサロン史上最速のペースで会員数が減っている。

3,000人いたオンラインサロンの会員が1年も経たずに200人以下に激減するような珍事は、後にも先にも二度と起こらないだろう。

ほとんどの人が社畜を脱出する前にサロンを脱出しまった。

たしかに正田圭さんの騒動は脱社畜サロンにとって大きなダメージだった。
正田さんの事件以降、脱社畜サロンの求心力は大きく下がってしまった。

しかし、騒動から3ヶ月後の時点ではまだ1,000人以上の会員がいたはずだ。

もしサロンオーナーがサロン生にサロンの会費以上の価値を提供できていたら、ここまで急激な会員脱出は起こらなかったのではないだろうか。

サロンに入っていてよかった。
サロンでしか得られない知見があった。
サロンに入っていたら前向きになれた。
サロンで良い出会いが生まれた。
サロンにいたから変われた。

なんでもいい。
サロンならではの価値があれば、会員は辞めずに残っていたのではないだろうか。

オーナーが親身になって励ましてくれるだけでも信者は嬉しいものだ。

そういった気遣いはあったのだろうか。


主語を大きく取って申し訳ないが、昨今のツイッターでファンビジネスを展開しているインフルエンサー達は、払ってもらったお金に対して無責任な人が多いように見える。

次から次へとできた先から消えていくサロンを横から見ていた人は多いだろう。
この記事を読んでくれている読者の方は、ここ数年で立ち上がったサロンを思い出してみてほしい。

そして、今でも続いているか検索してみてほしい。
大きなサロン以外はかなり閉鎖されているはずだ。


VALU、タイムバンクなどに高いお金を払った人たちは今、息をしているだろうか?

ファンはインフルエンサーに何かを期待してお金を払い、支払ったお金に見合う対価が得られずに去っていく。


ここ数年、ツイッター経由でマネタイズできるサービスが増えた。

マネタイズ系のサービスが盛り上がる一方で、インフルエンサーによる「サービスのつまみ食い」と「ファンの焼畑農業」的な事例も増えているように感じる。

ファンのアホではないので、何度も期待を裏切られたら学習するだろう。

「この人に期待してお金を払っても報われない」

と。

人間のリソースは有限なので、あれもこれも手を出したら手が回らなくなる。

インフルエンサーは神ではないのだ。

新しいサービスを試すのはネットに生きる人間の姿勢としては正しい。

同じように、既存のサービスでロイヤリティの高いファンが満足するような価値を提供し続けるのも、姿勢としては正しいはずだ。

自分のリソースが足りないなら、飽きて投げ出してしまう前に、自分の工数をかけなくてもサロンなどが回っていく仕組みを作るなど、工夫できる余地はあっただろう。

インフルエンサーは「個の能力」が高く、話題作りに長けている一方で、組織作り・仕組み作りの能力が著しく低いため、新たな領域に手を広げると既存の事業が疎かになってしまうのが最大の弱点だ。

そうすると既存のファンの満足度が低くなって、常に新規開拓をしなければ儲けがどんどん減っていってしまう。

新規開拓のリソースをもう少し保守・運用に回せば、ファンも幸せになるし、インフルエンサーの負担も減るのではないだろうか。


最後に余談となるが、イケハヤさんの情報発信能力はとても高い。
YouTubeもしっかり作られているし、Voicyも聞くと面白い。
ブログの更新も欠かさずやっている。

批判は多いし、飽きっぽいところはあるけれど、彼と同じレベル・同じ頻度で情報発信するのはとても難しいように感じる。

脱社畜を目指す人は、イケハヤさんのサロンに入って何かを教えてもらおうとか、何かを学ぼうとするよりも、どこまでもストイックな彼の背中を見て、良いところを黙って真似するのが一番リターンが大きいと思う。