スマートフォン決済の草分けだったOrigami(オリガミ)が多額の赤字に直面し、メルペイに買収されることが決まった。
1株1円で、譲渡価格は総額259万円だったとされる。
売却発表と同時に大規模な人員削減作を発表し、社員の9割をリストラした。
事実上の経営破綻だ。
オリガミの2018年12月期の売上高は2億2千万円で、営業赤字は25億円。
そんなオリガミのオフィスは六本木ヒルズの31階で、賃料は3億円前後だと言われていた。
オリガミの経営が危うくなったのはスマホ決済の競争激化による消耗が大きいのだろう。
もっと伸びると思っていた事業が想定よりも儲からなかったのは経営の難しいところだ。
しかしながら、事業規模に見合わない採用増加やオフィス賃料の負担も大きなコストとしてのしかかっていたのではないだろうか。
本業がそれほど儲かっていないうちから賃料がクソ高い六本木ヒルズに引っ越した康井社長に、
見栄を張りたい気持ち
がなかったとは言えないだろう。
固定費の増加はボディブローのようにじわじわと効いてくる。
高すぎる家賃は何も生み出さずに破滅を招く。
企業に限らず、個人でも同じだと僕は思う。
家賃が高いと貯金が貯まらない
冒頭では高い家賃で身を滅ぼしたオリガミを例に出したが、同じように高い家賃で身を滅ぼした人間がいる。
私だ。
見栄を張りたくて、というよりモテたくて、たいした給料もないのに高い家賃の部屋を借りた。
そして貯金は空になった。
「東京の高いマンションに住めば女の子を連れ込める」
と夢を見て、それなりに綺麗な夜景が見えるマンションを借りた。
連日連夜ホームパーティーで一人で寝る暇がない...
そんな未来を夢見て住んだマンションで、ほぼ毎日家で一人でビールを飲んで過ごした。
そのときの貯金額はなんと、80万円。
当時の家賃4ヶ月分、生活費込みで(夜遊び代含む)2ヶ月生きる分の貯金しかなく、油断するとあっという間に破産する程度の貯金であった。
固定費が高いと余裕がなくなる。
「このままじゃやばい!」
と焦って節約しようとしても、お金は貯まらない。
穴の空いたバケツから水が抜けるように、財布からお金がどんどん抜けていってしまう。
高い家賃を払っている人が細々と節約してもほとんど効果がない。
我慢しているはずなのにお金が貯まらないあの感覚。
あんなに辛いものはない。
「今月の引き落とし...大丈夫かよ...」
と毎月不安に怯えながら、ボーナスでなんとか息を吹き返す日々。
あんなに安心できない生活はない。
さらに言うと人間の気持ちは不思議なもので、「でかいお金=家賃」を毎月払い続けていると、別のことにお金を使うことに鈍感になってくるのである。
家賃で殴られ、パンチドランカーになった脳で別の買い物にお金を使ってしまう。
そうして貯金は無くなっていく。
見栄っ張りは身を滅ぼすのだ。
成功者の「金は限界まで使え」を信じるな
インターネットでは一部の成功者が「有り金は全部使え」みたいなことをほざいている。
絶対に彼らの話を鵜呑みにしてはいけない。
彼らには毎月莫大なキャッシュが入ってくる。
金持ちがお金を使ったところで生活に困らないのだ。
「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」
とほざく王女の言葉が民衆に刺さらないように、
「金があるなら全部使ってしまえばいいじゃない」
という前澤友作の言葉は、一般人には全く当てはまらないのだ。
人間、生活に不安があるとチャレンジできない。
お金に余裕が無くなると、お金のことばかり考えてしまうようになる。
前向きなチャレンジ精神が削がれる。
行き着く先は、金の亡者のような情報商材屋である。
後輩に飯を奢るのにもビクビクして、家賃の引き落としのたびにマネーフォワードを見て悲しい気分になる。
経験するとわかるが、とんでもなく惨めな気持ちになる。
家賃が安いボロボロの部屋で過ごす毎日も惨めだが、金が無くて支出を恐れる日々も相当に辛い。
かといって郊外に住んで満員電車に乗って会社に通うのも辛いし、とにかく都会は金がない人間に厳しい。
手取りの何割が家賃として妥当なのか?
「家賃は手取り月収の30%にしろ」とどこかの本で読んだことがある。
検索しても「月収の3割が目安」というサイトが多い。
ふざけるのも大概にしてもらいたい。
月収の3割であれば、月収40万円で12万円。
月収50万円でも15万円である。
SUUMOで恵比寿の家賃12万円の物件を検索してみよう。
出てくるのは25平米、築年数15年以上の物件である。
月収40万円(ボーナス別、推定年収700万)でも、都心だとうさぎ小屋にしか住めないのだ。
一人暮らしならまだ耐えられるかもしれないが、これで家族がいる人はどうしろと?
都会はとにかく金がない人に厳しすぎる。
というより、かなりの高給取りのサラリーマンでなければ
「都心に住んでキラキラ生活、友達を呼んで連日連夜のホームパーティ」
みたいな賃貸ライフは送れないことがわかる。
仮にそんな賃貸ライフを送っている普通のサラリーマンがいたとしたら、おそらくその人は命を削って遊んでいる愚か者だ。
普通の人は「都心のうさぎ小屋で我慢する」か、「郊外の広い部屋に住んで通勤を我慢するか」の二択を迫られ、ある程度の不満を我慢しながら妥協して生活することになる。
なぜ固定費は低いほうがいいのか
東京に住みながら、全てが理想の生活を送るのは難しい。
生きていくだけでものすごくお金がかかるからだ。
それでも私は皆に「固定費はできる限り下げろよう」と呼びかけたい。
なぜ固定費を下げたほうがいいのか?
「安心してチャレンジし続けるため」
これに尽きる。
生活に不安があると、チャレンジができない。
衣食住が安定していないと、目先のことで頭がいっぱいになる。
人間はそういう風にできている。
お金の不安は人間を卑屈にさせる。
誇り高き人間を奴隷に貶めるのは「金」だ。
金の力に屈しないためにも、生活の安定は自力で確保しておかなければならない。
固定費を下げておけば、たとえ会社をクビになって収入が途絶えたとしても、じっくりと次の就職先を探すことができる。
慌てることなく作戦を練ることができる。
個人事業主やフリーランスならなおさら固定費の削減は重要だ。
明日の収入が保証されていない場合、高い固定費は命取りになる。
家賃を下げる。
通信費も下げる。
その上で、食費や光熱費など、「生きるため」にどれくらいのお金が必要なのかを把握する。
今の貯金でどれくらい生活できるのかがわかるようにしておく。
明日の生活、来月の生活、来年の生活が保証された状態は、チャレンジの基盤となる。
土壌がしっかりしていないとビルは建たない。
固定費は雨。
土壌も財布も緩ませてしまう。
金は命であり、エネルギーでもある。
自分が許容できるギリギリまで家賃を下げて、生活を安定させよう。
自分の資産を把握して、生活の見通しを立てよう。
見栄もいらない。
期限を決めて我慢して、チャレンジの土台にするのがいい。
自分の資産は常に把握しておくこと
社会人2年目の春。
元々散財していたのに加えて、引っ越しがトドメとなって僕は破産した。
貯金が残り3万円になったのだ。
ATMに行っても、下ろすお金がない。
あのときの恐怖心は忘れられない。
金が...ないのだ...。
仕方なく実家から送ってもらった米を炊き、当時の彼女に弁当を作ってもらって次の給料まで飢えをしのいだ。
どうしてこんなことになってしまったのかというと、「今、自分がいくら持っているのか」を全く把握していなかったからだ。
余裕こいて合コンで散財して破産した。
資産の推移は常に把握しておこう。
普段の生活費も把握しておこう。
毎月どれくらい使っていて、どのくらい貯金できているかを知っておこう。
そうしないと、油断しているときに破産は訪れる。あれは本当に辛い。
僕は社会人の5年目くらいからずっと、マネーフォワードで自分の資産状況を管理している。
今ではマネーフォワードなしでは心配で生きていけないくらいだ。
「明日から全く収入がなくなっても1年は生きていける」
これくらいの余裕を確保しておけば、後は好きにお金を使っても大丈夫だと思う。
お金の余裕は心の余裕だ。
余裕がないと怒りっぽくなってしまうし、何かとトラブルの原因になったりもする。
蓄財は自分の資産を数字で把握するところから。
その一歩目は、マネーフォワードで。