新型コロナがきっかけでテレワーク(在宅勤務)が日本に浸透する可能性は高い



2020年1月に新型コロナの流行が始まり、2020年2月には国内で感染ルートが辿れなくなっている。

新型コロナウイルスは感染力が非常に高く、致死率も2.1%とインフルエンザよりもはるかに高い。

政府から「不要不急の外出は控えるように」というお達しが出たのは、もはや新型コロナの感染ルートを追って封じ込めるのは不可能で、できる限りウイルスの拡散を防ぐ方向へ舵を切ることへの決意表明、というか敗北宣言のようなものなのだろう。

事態が水面下で想像以上に深刻化している可能性がある。


さて、「不要不急の外出」の例として、厚生労働省の専門家は「新年会や送別会」などを例にあげていたが、最も危険度が高く、そして不要なのが

「満員電車での朝の通勤」

だろう。

朝決まった時間に出勤しなければならない合理的な理由がある人は少ない。

「チームの団結力を高める」などの名目で「朝会」と称した朝の会議を設定したがる人間も中にはいて、タスクの共有やチーム間の状況把握にはある程度効果はある気もするが、

「決まった時間に会議の出席を強制しなくても済むようなマネジメントの仕組み」

を作る方が価値があると思っている。

(タスクの共有、状況の把握をできる限り「人の集まり」から「ソフトウェアによるオンラインでの共有」に寄せていく)


さて、新型コロナの流行に際して、いち早く「全社員の在宅勤務」を命じたのがGMOインターネットグループであった。


新型コロナウイルス「COVIDー19」(コビッド・ナインティーン)感染症に関する情報一覧とGMOインターネットグループの取り組み


在宅勤務状況に関するアンケートを実施し、2,401人中2,105名画在宅勤務をして「よかった」と回答しているという。

GMOに限らず、様々な企業でテレワークが推進されつつある。

NTTグループが20万人の従業員にテレワークや時差出勤を呼びかけたのをきっかけに、NTTコミュニケーションズは2月17日に、月8回までとしていた在宅勤務の上限を撤廃した。


以前はなかなか浸透しなかったテレワークだが、もしかしたら新型コロナがきっかけでついに、伝統的な日本企業にもテレワークが浸透するかもしれない。

不要不急の出社を控えさせられて一番困るのは誰か?

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Japanese traditional companyで長年働いてきた経験から推測するに、「不要不急の出社を控えろ」と言われて一番困るのは、仕事してるフリをしている人たちだ。


「一生懸命仕事をして、会社に尽くしてます。

私を評価してください。私をクビにしないでください」

というスタンスで会社と付き合っている社員は、在宅勤務を命じられるととても困る。

残業による一生懸命アピールができず、アウトプットだけを評価されてしまうからだ。


残業をたくさんして、「頑張っている姿」を見せられないと不安になる。

これまでは

「たくさん働いています。頑張ってます」

と、その誠実さや忠誠心を評価されてきたのに、在宅勤務では労務状況は見えない。

アウトプットが全てだ。


そうなると仕事しているフリをして何もしていなかった会社員はとても困る。

出せるアウトプットがないからだ。

そしてそういう人は

「自分がいなくても会社が回る」

のがバレてしまうのを恐れていて、周りの人に「暇そうに見られること」を極端に嫌う。

いつも忙しそうに、顔色悪そうな顔をして仕事している。

口癖は「なんでこんなに忙しいんですかねぇ」だ(無駄なことばっかりやってるからだ)


逆に会社への忠誠心があまり高くなく、「アウトプット出すから自由に働かせてください」というタイプにとっては、在宅勤務は快適な追い風になるのだが、会社全体が「在宅勤務」と「出社」のどちらに傾くかは

(1)偉い人(役員、社長)の指示次第
(2)合理的な行動が重視される組織か、非合理的な根回し等が重視される組織か

によるだろう。

大企業の“文化”は現場の努力では変わらない。
ボトムアップで活動しても大勢に影響ない小さな変化しか期待できない。

サラリーマンの集団は上が強力なリーダーシップを取って「やれ」と命じないと変わらないのである。

会社員には「言い訳を作ってあげること」が大事

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新型コロナは最も「上」にいる国から「在宅勤務を活用するように」とお達しが出た。

これは会社組織にとって強力な後押しになるだろう。

「必要か不要か」ではなく、「国が言ってるからやる」という言い訳を用意してあげるのが大事なのだ。


在宅勤務を強力に推し進めて業績が悪化したら、その責任を取るのは誰か?

社員に在宅勤務を強制するのは効果が見えない未知数なチャレンジでもある。

いま、うまく回っているのに急にテレワークを導入して、現場が混乱したら誰が責任を取るというのか。

減点主義の組織に所属する会社員は基本的に、責任を取りたくない。

失敗しないためなら大きなチャレンジもしない。


でも今回のテレワークは「国家」が「やれ」と言った。

「新型コロナに対応しなければならない」という大義名分もある。


テレワークがうまくいかなくても、組織の誰も責任を取らなくてもいいのだ。

失敗したら国のせいにすればいい。

テレワークがうまくいった前例は大事

現在のような危機的な状況では、テレワークを試しやすい。

「試しにやってみて、うまくいった」

という実績はものすごく大事だ。

今後、同じようなプロジェクトを進めようとしたときに、

「前もうまくいった」

という実績を持って周りを納得させることができるからだ。


今回の新型コロナ騒動でテレワークを導入するきっかけは整った。

テレワークをやってみて、うまくいったら「ルール」としてテレワークの利用を整備すればいい。

在宅勤務のルールが活用されていない場合

「テレワークの導入ルールやテストを行ってきたが、いまいち社員に浸透しない」という会社もあると思う。

根性・気合・誠意が大切にされる組織では「今日は家で仕事しまっす!」と言いづらい雰囲気があるのかもしれない。

でも今回はちゃんと理由がある。


「新型コロナが流行していて、テレワークが国家規模で推進されているから」

「念のため、在宅勤務します」

と言いやすい雰囲気になっているはずだ。


みんながやっていると、自分もやりやすい。

会社組織では人と違うことをしていると悪目立ちするが、みんなで信号を渡れば色は関係ないのだ。

大事なのはみんなが信号を渡っているかどうかだ。


今回は新型コロナが信号を点滅させた。

みんなで信号を渡ろう。

「他もやっているから自分もやる」

就職活動の説明会では多くの会社がイノベーションの大切さを訴え、

「今ここにない未来を作る」

「誰もやっていないことに挑戦する」

みたいな、カッコいい社風を誇っていた。

しかしながら、会社説明と実態な異なる。

Japanese traditional companyでは「前例があるかどうか」はとても大切だ。

「他がやっていないことを自分だけやる」のは面倒な説得と根回しが必要で、大変で、それで頑張っても報酬として報われないため、普通のサラリーマンが伝統的日本組織でイノベーションを起こすインセンティブは小さい。


何が言いたいかというと、「他でもやっていてうまくいきそうだから」と言えるかどうかは地味に大事だということだ。


こうやって書いていくと、なんだか会社組織は面倒くさくて非合理的で残念な感じもするが、勝ちパターンが確立できたときは強い。

ルールが強い強制力となって、一丸となって事業を推進できるからだ。


新型コロナによる半強制テレワークがきっかけとなって、各社で在宅勤務のルールが急速に整備されたなら、日本は日本の働き方はこれから大きく変わるかもしれない。

スクラップ&ビルドは日本の得意技だ。


新型コロナで世界中が大騒ぎしているところに大量発生したイナゴ。

泣きっ面に蜂ならぬ、泣きっ面にバッタである。


超高齢化社会の先行きは暗く、「衰退国日本」と言われ始めて久しい。

しかしながら、「変われなかった日本企業」が「変わり始めるきっかけ」として、今回の新型コロナのピンチはある意味チャンスにもなるような気がしている。


茶番に終わったテレワーク・デイズの記事

「テレワーク・デイズ」は日本の通勤地獄を変えるか

結局、在宅勤務は浸透したのか?

ダイヤモンド・プリンセス号からの下船が始まり、市中での感染経路は追えなくなってきた。

厚生労働省の職員も感染し、船の中での隔離には失敗していたことが示された。

これからはいかに感染の急拡大を防ぎ、医療機関をパンクさせないようにするかの勝負になっている模様だ。


そんな中、みんなが頼りにする「お上」からの声はかからない。

政府は何かを発言して問題が起こったときの責任を取りたくないからだ。

では民間企業の在宅勤務は進んだかというと...




ツイッターを見る限りでは一部の勢いのある企業では在宅勤務にシフトしているが、多くの人々はまだ満員電車で通勤しているようだ。

在宅勤務の仕組みが整っていない企業もあれば、仕組みはあるけど活用されていない企業もあるだろう。

ただ日本人に深く刻まれた

「みんなと違うことをするのを極端に怖がる」

「みんなで頑張ったなら玉砕しても構わない」

みたいな価値観が邪魔をして、みんなが満員電車で頑張って通っているうちは...と、自分も満員電車に乗り続けるのだろう。

みんなが危険を承知で満員電車に乗っているのに、自分だけのうのうと自宅で仕事をするわけにはいかないのだ。


新型コロナがきっかけで在宅勤務が浸透するようにも感じていたが、やはりこの国では「みんながやり始めるまで」は在宅勤務は普及しないのかもしれない。

他の人が頑張って通っているのに、自分だけ在宅勤務だと忠誠心が低いかのように思われてしまうからね。


電通が5000人に在宅勤務を命じる

電通が本社勤務の5000人に在宅勤務を命じた。
社員の1人に新型コロナの感染が確認されたからだ。

次いで資生堂も8000人に在宅勤務させようとしている。

政府は経団連に在宅勤務を要請。

時差出勤とテレワークを推進するよう協力を促している。

イベントの中止要請や小学校の休校も相次ぎ、新型コロナによる混乱は極みに達しようとしている。


電通の場合は「感染者が出たから」

資生堂は「自主的に」始めた。

そして「政府からのお達しがあったから」テレワークへ踏み出す企業はこれから増えてくるだろう。


いつまでテレワーク推奨ムードが続くのだろうか?

恒常化すれば最高だが、テレワークが当たり前になるというのはすなわち、

「ただ会社に来るだけだった社員の無能さが明らかになる」

ということでもある。

「この人、いなくても全然よかったじゃん」

とみんなに気付かれてしまうのだ。

いちいち細かく部下を監視して、威圧していたパワパラすれすれの上司にもテレワークは逆風だ。

テレワーク越しに誰かを脅すことはできないからだ。

人を恐怖で支配し、部下を詰めるのが自分のバリューだと信じていた管理職も、

「あの偉そうなおっさん、会社でうるさく詰められてたけど、あれマジで意味なかったな」

と早々に気付かれることになる。


アフターコロナ後、テレワークが当たり前になった社会は、無能に厳しい社会でもあるのだ。

「たくさん残業しました」

「頑張って働いています」

が全く通用しない。

在宅勤務が浸透して、結果でシビアに判断せざるを得なくなったとき、日本中に大勢いる「お荷物社員」はどうなるだろうか?

「無能さが明らかになること」の方が新型コロナよりもよほど大きなショックになるのは想像に難くない。

コロナ後の日本は、これまでの伝統的日本企業から脱皮し、厳しい結果主義の文化が根づいてくるかもしれない。