「100日後に死ぬワニ」の最終回が話題になっていた。
意識してツイッターから距離を置いていたためワニの動向はリアルタイムで追えていなかったが、どうやら
「ありふれた日常はいつ終わるかわからないんだぜ」
的な話のようだ。
「100日後に死ぬ余命半年の花嫁」
「100日後に恋人が死に世界の中心で愛を叫ぶ」
「100日後にエイズで死ぬDeep Love」
「100日後にデスノートに名前を書かれて死ぬ探偵」
「100日後にサイバイマンに爆発されて死ぬヤムチャ」
など、死をテーマにした作品を挙げればキリがないが、ワニに関しては、ツイッターでカウントダウンしながら死んでいく点が新しかった。
ワニ、お疲れ!
「100日後に死ぬワニ」
— きくちゆうき (@yuukikikuchi) March 20, 2020
100日目 pic.twitter.com/r0Idn9I7mR
100日後に死ぬワニの最終回は、
桜舞い散る中に忘れた記憶と
ワニの声が戻ってくる
と歌いたくなるくらい綺麗な桜の絵だ。
100日目になってから初めてワニを見た僕は
「いいラストシーンじゃないか!」
と感じたのだが、どうも「ワニの死」に怒っている人がたくさんいるらしい。
100日後に死んだワニが怒られた理由
ワニは100日で死んだ。
死んだワニはツイッターで手厚く火葬された。
その火種は「炎上」だが。
ワニが死んだ瞬間から始まった怒涛の商業展開に
「悲しむ暇もない」
と嘆く人がいたり、ワニの企画の背後に「電通」がいることに怒っている人がいたり、死んでなお罵られるワニが不憫でならない。
ツイッターの人々の怒りの声は「市況かぶ全力2階建」を読むとわかりやすいだろう。
→「100日後に死ぬワニ」、死んだ途端にすごい勢いで商業展開されるワニに- 市況かぶ全力2階建
- 書籍化
- ヴィレッジヴァンガードでのコラボグッズ販売
- 映画化
- いきものがかりのコラボムービー
- ゲームセンターに配置されるワニ
など、怒涛の商業展開の様子が紹介されていて、ワニのファンは戸惑っているらしい。
感情のコントロール権を奪われたことに怒っているのでは?
「100日後に死ぬワニ」に対する怒りの原因に「死を利用して金儲けをする浅ましさ」を挙げている方がいた。
ワニの死に方は不誠実だ、死者に敬意を払え!などと主張していたが、ちょっと意味がわからなかった。
だってフィクションじゃん...。
なぜ「死後商品になったワニ」はこんなに怒られるのだろうか?
ワニファンが怒る本当の理由は「ワニによる金儲け」ではない(と思う)
ワニビジネスで金銭的に損をした人はいないからだ。
芸能人のステマで、全く効果のない高額美容商品を買わされたわけでもない。
ワニはあくまで「無料の娯楽」だったのだ。
誰も損していないはずなのに、なぜワニはあんなにキレられているのか?
怒りの本当の理由は、ワニに注いだ感情が裏切られたように感じたからだろう。
違ってたらごめん。
読者はワニに共感して、ワニを応援して、感情移入して、一緒に物語を作っていった。
読者の100日はワニと共にあった。
ワニの人生に自身を重ね、ワニを描くクリエイターを応援してきた。
しかし蓋を開けてみると、クリエイターの背後にはしっかりと準備された計画があった。
ワニと共に作り上げてきた感動や興奮は「狙って作られたもの」だったのだ。
ワニファンが「感動が狙って作られていたこと」に怒るのはなぜか?
それは「感情のコントロール権を他人に奪われていた」と感じたからなのだと僕は思う。
「自分自身の感動」や「心の動き」は自分でコントロールしていたつもりだった。
それなのに100日目になって「ワニと共に生み出した感動が、実は他人に操作されていた事実」に気付いて、怒っているのだ。
「自分の感情を黙って消費・消耗させられていたこと」に対して怒っている。
「死を軽く扱っていること」に対して、本気で怒りを感じている人などいない。
ワニの死はしょせん他人事だ。
でも「自分の感情」は他人事ではない。
自分がワニに対して生み出した、純粋無垢な感動。
そんな感動が、他人に操作され、計画的に作られていたことに対して、ファンは憤りを感じているのだと思った。
権威や既得権に噛み付く人
「電通」に過剰反応する人が稀にいる。
こういう人はただ「叩くのが好きな人」である場合が多い。
「日本政府」や「電通」など巨大な既得権が関わっているだけで何でもダメ扱いする人がネット上には多数いて、彼らは自分の報われない現実の憂さ晴らしをしているに過ぎない。
冴えない日常を過ごしている人にとって、絶対に反撃してこない巨大な何かを叩くのは快感だからだ。
高橋まつりさんの死の原因を作った電通が「死を取り扱った作品」を関わっていくことに怒りを感じている人も中にはいるようだ。
「高橋さんの死」はたしかに痛ましい事件だが、「死を取り扱う作品の是非」は別問題だと思う。
集英社で誰かが亡くなったら、「ジャンプでもう死を描くな」と騒ぐわけではないはずだ。
余談だが、元電通の人のドヤ顔ツイートも見つけた。
100日で死んだワニなど電通様にしたら小物のようだ。
こういうツイートを見ると、電通を叩きたくなる気持ちもわかる気がした。
周回遅れで「電通案件」という言葉に反応しますと、そもそも数億〜数十億預かって超有名タレントを複数起用してテレビ5000GRP投下して全紙30段と山手線ジャックして国民全体の認知率を50パーセントくらいに持っていくのが電通案件でして若い営業がワニの話なんか持ち帰ってきた日には直上に殴られます
— 田中泰延 (@hironobutnk) March 23, 2020
ツイッターの熱狂はリアルに届かない
ツイッターの熱狂はリアルに届かない。
ワニLINE(引用元の様な桜の写真の後に「よくね?」)を女の子達に送っても「殺そうとすんな」とか返してくれる子はほとんどいない。「綺麗〜」とか「どこ?」とか返ってくる
— ゴッホ (@goph_) March 22, 2020
全人類が熱狂したかのように思えたワニも現実世界での認知はほとんどなくて、Twitterは地震があった時に開く世界線で生きてる https://t.co/d6cUOlkbIc
僕自身、ツイッターから距離を置いて久しいが、ワニの話がリアルで出てくることはない。高校や大学ではワニが話題になっているのだろうか?
ツイッターで誰が炎上しようと、何が話題になろうと、リアルに生きる人はリアルの人間関係の中で生きている。
ツイッターに触れる時間が長くなればなるほど、ネットとリアルの温度差を読み違えてしまう。
ワニはツイッターの片隅で死んだ。
ツイッターの中で大きな話題になった。
LINEニュースにも載った(僕はそれでワニを知った)
でもリアルでワニの死を嘆く人は少ない。
ツイッターを見たら多くの人が怒っているように見えるかもしれないが、ツイッターの多数派は現実世界の少数派であることを忘れてはいけない。
そしてツイッターの話題は賞味期限が極めて短いため、おそらく100日後にワニを話題にする人は誰もいなくなるだろう。
ワニは死後100日経って、完全な死を迎えるのだ。
100日後にワニは死ぬし、人もやがて死ぬ
ここからは完全に余談だ。
一部しか読んでいないので適当だが、100日ワニのテーマは「人はやがて死ぬ」なのだろう。
悔いのない人生を送りたい全ての人よ。
Aviciiの「The Nights」を人生のテーマソングにしてほしい。
「The Nights」はめちゃくちゃいいぞ。
「The Nights」はメロディも良いが、歌詞も良い。
He said, one day you'll leave this world behind
So live a life you will remember父はこう言ってた、いつかはこの世を去る時が来る
だから生きて良かったと思えるような人生を送れ、と
ワニは死ぬし、僕たちもやがて死ぬ。
いつかはこの世を去る時が来る。
だから生きて良かったと思えるような人生を送ろう。
息子よ、人生を無駄に過ごすなよ。
大人になると、子供時代が無性に懐かしくなることがあるんだ。
不安になった時はワニのことを思い出しなさい。
人もワニもいつかはこの世を去る時が来る。
人生は一度きりしかない。
死ぬときに「あの時、ああしておけばよかった」と後悔するような人生にするな。
生きて良かったと思えるような人生を送ろう。