俺の遺言を聴いてほしい

これは俺の遺言だ。

SNS経由での出会いを侮ってはいけない。





「ネットを通じて人と出会う」

と言うと、30歳以上の人間にとっては未だにいかがわしいイメージがあるだろう。

2000年代の初めに「出会い系サイト」を通じて様々な事件が起こり、ネット全体が「怪しいもの」と認識されてしまったことが原因だ。

当時はインターネットがまだ一般的ではなく、セキュリティも緩かった。

電話番号@docomo.ne.jp

というメールアドレスに適当にメールを送れば、知らない人と友達になれるような、実に牧歌的な時代だった。

高校に2~3人は先進的な男がいて、彼等はたいしてイケメンでもないのに「スタービーチ」と呼ばれる当時最先端の出会いツールを使って、色んな女の子と優勝していた。

i-modeに無限の可能性を感じた。
二人をつなぐのは電波だけだったはずなのに、肉体関係まで結べてしまうなんて!
結局、スタービーチは学校で問題になったため、手を出すことはなかったけれど。

大学生の頃、mixiというソーシャルネットワークサービスが流行った。
大学の図書館のパソコンが夕暮れかっつーくらいのオレンジ色に染まっていたのが、あの頃のmixiブームだった。

何度かこのブログで書いてきたように、僕は大学時代、星の数ほど合コンしてきた。
数え切れないほどの合コンを主催し、そのほとんどで屈辱的な結果を迎えながらも、時に笑い、時に涙を流し、毎週毎週飽きずに飲み会を続けた。

そんな感じで、継続しても何の力もつかない合コンを何百回と繰り返してきて、何百人もの女の子に出会ってきたが、一番可愛かったのは大学四年生のときに、mixiを通じて出会った子であった。

ダントツだった。
出会った瞬間、雷が落ちて心臓が止まった。

あのときの衝撃は今でも忘れられない。
可愛すぎて、声が出なかったのである。

「あ...(こんな可愛い子が)
あ...(どうしてmixiから出てきたのだ)」

君の前で息を止めると、呼吸が止まってしまうよ...。

夢でも見ていたのだろうか?


就職活動のときに自己分析をしながら、僕は何度も自問した。

余は何のために生まれてきた?


「こんばんは!本当に出会っちゃいましたね(笑)」

彼女の弾けるような笑顔を見た瞬間、確信した。



余はこの日のために生まれてきたのだ...と言わんばかりの感動であった。

ぎこちないながらも、人生全ての女性経験をぶつける勢いでダイニングバーの安いサラダを食べた。

こんな可愛い子は、今を逃すと二度と会えない。
二人の距離を縮めなければならない。


なんとしても個室カラオケに
なんとしても個室カラオケに
なんとしても個室カラオケに


店を出たとき、何度も頭で念じてはいたのだけれど。


こ、言葉が出ない
誘えない...!
夜道を歩いているのに、指一本触れられない...!


何か見える...

ヒソカ!?

「通れないだろ?」

通れない...!
触れられない...!

こんなに愛しているのに...!

"資格"がない者は近づくことすら許されない。
そんな暗黙の掟を肌で感じた。

嗚呼、美女は生まれながらにしてオーラを纏っているのだ。
彼女は生まれ持ったオーラによって、雑魚ブロックを発動していたのだ。


まっすぐ前を見て歩いているだけなのに、何か神聖なオーラに守られているような。
神々しさに満ちているような。
これはなんだろう。

夜の繁華街を歩いているのに、彼女だけが陽だまりにいる雰囲気だった。


恋愛界の権威であるサウザーさんが先日、恋愛史上最高の名言を残した。

「美人はただ美人というだけで存在が許される。ぶりっこもしない。サバサバもしない。ただ普通にしてるだけ。
まずこの頂点に位置する美女が、北極星の如く女社会の座標の中心に座る事になる」

【質問】好きな人や彼に放置されたら悲しいし満たされない。面倒くさい女を直したい。どうしたらいい?|これからの「カネと女」の話をしよう。

彼女はまさに北極星のような女性(ひと)だった。
夜道を照らす光だ。

道を示すけれど、手を伸ばしても届かない。
僕に許されたのは、ただ眺めることのみであった。

「駅まで送っていくよ!」

精一杯の言葉を振り絞り、指一本触れること無く駅に送ることを決断した。
彼女は触れてはならない神聖なもののように感じた。

それから後は、

「絶対イケメンを連れて行くから」

と頼み込んで合コンを開き、なけなしのバイト代で一万円の居酒屋を奢り、
就職してからもたびたび焼肉を奢り、

こんなに奢ったのは平家か俺か

というくらい奢ったにも関わらず、未だ指一本触れることができていない。

あれ?何の話をしてたっけ?

そうだ。SNSだ。

大学4年の秋。SNSに無限の可能性を感じた。

彼女の名前はアキといって、僕は彼女を追いかける夏のようであった。

やがてmixiから人がいなくなり、友達はFacebookに移っていった。
あの頃mixiで友達になった数人は、今でもFacebookでつながっている。

みんな何やってんのかな?
最近ツイッターばっかりやってたからな。
Facebook見てないな、と。

今日、本当に久しぶりにFacebookを開いた。

タイムラインにアキ嬢がいた。


「妊娠しました。12月予定です(絵文字)」


という報告を見て、僕の夏は終わった。