俺の遺言を聴いてほしい

これは俺の遺言だ。

普通のサラリーマンにとって最強の資産運用は、ノーロードのインデックスファンドにドルコスト平均法で投資することだと思う。

プロローグ

暇な時間を持て余していた大学時代、僕はパチプロとしてコツコツとお金を稼ぎ、100万円の軍資金を集めた。
僕が大学の頃はたしか日経平均株価がわずかに回復に向かっていった時期で、本屋には

・デイトレードで3億稼ぐ方法

とか、

・1億稼ぐ魔法のテクニカルチャート分析

というタイトルの本が並んでいた。

デイトレードで100億稼いだというB.N.Fというトレーダーが現れたのもその時期だったと思う。

僕は己の才能を過信していた。

他の人間が稼げたのだから、僕にできないはずがない。
パチンコで勝ちまくった僕だから、デイトレードも同じように勝てるはずだ。

そんな自信から、なけなしの100万をデイトレードに突っ込み、たった3ヶ月で50万の金を失った。

それからは

「負けを取り戻そう」

と焦った結果、パチンコでも負けが続き、結局奨学金に頼って生きるハメになった。


あれから10年近くの時が経った。
あの頃有名になっていたデイトレーダー達は、B.N.Fという天才を除き、おそらくは誰も残っていない。

そもそも、これは世の中全てに通じることだが、本当に儲ける方法を知っている人間は、わざわざ本を書いてそれを皆に教えたりはしない。
「お金を稼げる秘密の方法」を本に書くということは、著者はそんな秘密の方法なんて何も知らないということである。

そして情弱がカモられる。
恋愛教材を買い集める非モテみたいに。


あの頃の僕は、お金に対して完全に情弱だった。
何も知らず、希望だけを抱いて生きていた。

しかし、いつまでもカモられる立場でいるわけにはいかない。

色々と自分なりに勉強して、辿り着いた結論は一つ。

資産の変動に弱い一個人にとって、最強の資産運用は、

・ノーロードの
・インデックス・ファンドを
・ドルコスト平均法で時期を分散させて
・コツコツ投資する

という、とてもシンプルなものだ。

「デイトレードで3億」のような夢は全くない。
ロマンもない。

でも、市場が効率的で世界経済が成長していく限り、このやり方が最もリスクが小さく、かつリターンが大きくなる投資法だと僕は思っている。


ノーロードとかインデックス・ファンドって何?

「ノーロードのインデックスファンド」への投資を勧めている人はたくさんいます。
最近読んだのがカン・チュンドさんという方の、

「忙しいビジネスマンでも続けられる 毎月5万円で7000万円つくる積立投資術」

という本です。

この記事の主旨と同様に、「ノーロード型のインデックスファンド」を利用して積み立てることを推奨しています。

ノーロードというのは「投資信託を購入するときの申し込み手数料がゼロになる」ファンドのことです。
次に、インデックス・ファンドというのは、「市場の平均値と同じ値動きになることを目指す低コストな投資信託」のことです。

インデックス・ファンドと対をなす、というか、市場平均を上回ることを目指すのがアクティブ・ファンドで、アクティブ・ファンドは優秀なファンド・マネージャーが目を皿にして割安な銘柄を探しまくっているので、その分コストがかかります。

投資信託を保有するときは「信託報酬」というコストがかかります。
信託報酬とは、投資信託を管理・運用してもらうための経費で、年率○%という形でかかってきます。

年率5%の利益を上げたとしても、信託報酬が1%かかった場合は、手元に残るリターンは4%になってしまいます。

これまでの研究から、株式市場に投資することによって期待されるリターンは5%~7%と言われているので、いかにコストを抑えるか、という問題は非常に重要な問題なのです。

そしてアクティブ・ファンドは、市場の平均を追いかけるだけのインデックス・ファンドに比べて、高収入のファンド・マネージャーやアナリストが頑張る分、信託報酬が割高になります。

そして、驚くべきことに、プロがしのぎを削っているアクティブ・ファンドの成績はほとんどの場合、コストが高い分、インデックス・ファンドに勝てないということが、これまでの歴史の中で繰り返し繰り返し実証されているのです。

カン・チュンドさんの本では、

・日本債券インデックスファンド
・海外債券インデックスファンド
・日本株式インデックスファンド
・海外株式インデックスファンド

に四分割して投資することを推奨しています。

具体的なファンドとしては、以下のようなものです。

■日本債券ファンド

■日本株式インデックスファンド


■海外株式インデックス・ファンド


■海外債券インデックス・ファンド

上記のファンドが推奨ファンドとされていますが、2016年現在だと、「ノーロード」「インデックスファンド」などで条件を絞って検索すると、もうちょっと信託報酬が安そうなファンドが出てきます。

自分が投資するファンドを探すのはポケモンを探すよりエキサイティングで面白いので、ぜひやってみてください。


忙しいビジネスマンでも続けられる 毎月5万円で7000万円つくる積立て投資術 (アスカビジネス)

忙しいビジネスマンでも続けられる 毎月5万円で7000万円つくる積立て投資術 (アスカビジネス)


なぜインデックスファンドへの投資が最も合理的なのか?

ここからは理論的な部分について、調べたことをまとめていきます。
投資の本は「投資のやり方」について書いてあるのですが、その背景にあるファイナンス理論について触れているものは少ないです。

でも、せっかく自分のお金を投資するんだから、背景にある理屈に納得できた方が楽しいはずです。
納得できないものに金を出すのはもったいない。

投資する上でとても大切な概念に「リスク」というものがあります。

リスクというと、危険なイメージがありますが、投資の世界でリスクというのは「予想することができない不確実性」のことを指します。

たとえば、買ってからずっと下がり続ける株はリスクが高そうに見えますが、この株はリスクは低いです。
なぜなら、リスクとは「将来の不確実性」であり、「予想できないこと」なので、確実に下がることがわかっている株はリスクが高いとは言えないのです。

リターンの「バラつきの度合い」を「リスク」といい、これはリターンの標準偏差に他なりません。
「ボラティリティ」なんて言葉を聞くことがあるかと思いますが、ボラティリティとは標準偏差のことです。
Excelの関数だとSTDEVP関数で求めることができます。

さて、昔の偉い人はこういう格言を残しました。


「ひとつのカゴに全ての卵を入れてはいけない」


その心は、資産は分散投資せよ、ということです。

たとえばトヨタの株に全資産を突っ込んだとします。
もしトヨタの新型の車に大きな欠陥が見つかってリコール騒ぎになったとしたら、株価が大暴落してしまいます。
そうすると、投資家は大きな損失を被ります。

トヨタとソニーとNTTに分散していれば、トヨタの株が下がってもダメージは小さくなります。
現代ポートフォリオ理論とは、分散投資によってリターンのバラツキを小さくすることを理論立てて説明したものです。


ポートフォリオとは、投資家の保有する複数の銘柄をひとまとめにして表す言葉です。
保有銘柄リストといった意味で、個別銘柄の組み合わせに注目する概念のことです。

トヨタの株とソニーの株を組み込んだポートフォリオを考えてみます。
式は読み飛ばしても問題ありません。

このポートフォリオの期待収益率は以下のようになります。


ポートフォリオの期待収益率 = トヨタ株の比率(投資金額) × トヨタ株の期待収益率 + ソニー株の比率(投資金額) × ソニー株の期待収益率


ポートフォリオの期待収益率は、それぞれの株式の期待収益率を加重平均したものです。

そして、ポートフォリオの分散を求めるには、以下の式を使います。
分散の平方根が標準偏差(=リスク)です。


ポートフォリオの分散 = (トヨタ株の比率)の2乗 × トヨタ株の分散 + (ソニー株の比率)の2乗 × ソニー株の分散 + 2(トヨタ株の比率)×(ソニー株の比率)×トヨタとソニーの共分散


この難しそうな式に具体的な数値を入れてプロットしていくと、ファイナンスの教科書でよく見るグラフができあがります。

f:id:hideyoshi1537:20160723185040j:plain

このグラフが示しているのは、一つの銘柄に投資するよりも、分散投資したほうが、同じリスクでより高いリターンが期待できるということです。

同じリスクを取る場合に、そのポートフォリオよりも優れたポートフォリオが他にないことを「効率的」といいます。

そして、効率的なポートフォリオが集まった、このグラフの上半分の部分を「効率的フロンティア」といいます。


f:id:hideyoshi1537:20160723185049j:plain


それで、上の方で「ポートフォリオの分散」という式を書きましたが、この式では左側に「共分散」が足されています。

共分散というのは、2つの変数の方向性を示す指標のことです。
同じ方向に動くのか、違う方向に動くのかを示しています。

リスクというのは、それぞれの株のリスクを保持比率を掛けて合計したものと、共分散を足したものなわけです。

共分散というのは、2つの銘柄の相関関係が弱くなればなるほど、小さくなります。
つまり、ソニーとトヨタの株が全く別の動きをする場合、より共分散が小さくなるということです。

共分散が小さくなるということは、リスクが小さくなるということです。


こんな感じで、数式で表現することで、「分散投資すればリスクが小さくなる」ということがわかりました。

これがマーコウィッツのポートフォリオ選択モデルです。
しかし、実際のところは「トヨタ株の期待収益率」などの「将来の期待値」については算出が難しいため、モデル自体は正しくても使えないものとされていました。


それじゃあ、最強のポートフォリオをどうやって求めたらええねん、ということで、トービンというおっさんが考えだしたのが「資本市場線」という考え方です。

株式だけでポートフォリオを組むのではなく、国債や預金などのリスクのない資産をポートフォリオに組み込む場合を考えたのがトービンおじさんです。

f:id:hideyoshi1537:20160723185120j:plain

上の図のように、安全資産をポートフォリオ選択モデルに組み込むと、驚くべきことが発覚しました。

安全資産から有効フロンティアに接するように直線を引くと、有効フロンティアの外側に飛び出すことができるようになったのです。
リスク資産だけの組み合わせでは有効フロンティアの外側には決して行けなかったのですが、国債や預貯金をポートフォリオに組み込むことで、「接点ポートフォリオ」というただ一つの最強のポートフォリオを導くことができました。

投資家は同じリターンならリスクは小さいほうがいいし、同じ程度のリスクならリターンは大きい方がいいと考えます。
そうすると、合理的な投資家は必ずこの直線上からポートフォリオを作ることになります。

リスクを目一杯取りたい人は、この直線上の接点ポートフォリオを購入すればいいし、ミドルリターンを好む人は、安全資産と接点ポートフォリオを組み合わせて保有すればいい。

f:id:hideyoshi1537:20160723185127j:plain

そして、市場が効率的で、投資家が合理的に行動する場合、投資家は市場全ての銘柄を時価総額で購入したものをポートフォリオとすることが導かれました。
つまり、接点ポートフォリオのポートフォリオがどんなポートフォリオかというと、市場そのものの縮小コピーである「市場ポートフォリオ」ということなのです。

で、市場ポートフォリオが何かというと、日本だとTOPIX、世界の株式に投資したい場合はMSCI-Kokusaiという海外の株式市場をカバーするインデックスが市場ポートフォリオに近いと言われています。

日本と世界の株式市場を時価総額の比で組み合わせれば、世界株式市場ポートフォリオに投資することができます。

日本の株式の時価総額が世界に占める割合は7%~8%程度なので、ざっくり資産の10%を日本の株式のインデックスに投資し、残り90%を世界株インデックスに投資すれば、世界株ポートフォリオが出来上がります。

リスクを取りたくない人は、接点ポートフォリオを買う他に、貯金するか国債ファンドに投資すればいいでしょう。

それで、結局何が言いたいかというと、リスクを小さくしてリターンを得るには、やっぱりインデックスファンドを買うのがいいよ、ということです。

そして、タイトルの「ドルコスト平均法」の説明が漏れたのですが、定期的に一定額を買い続けることで、平均取得単価を下げる投資方法です。
投資する時の株価が山なのか谷なのかはわからないということを前提にしています。

インデックス投資は最強だ~といって、1990年のTOPIXに投資していた人は、たぶん今でも損したままになっていると思います。
いつが山でいつが谷かわからないから、毎月一定額(たとえば5万円)を決まった日に投資していけば、株価が高い時は少ない量の株を購入できて、株価が低い時は多く株を購入することができますよ、ということです。


allabout.co.jp


そうすれば、安い時にたくさん買うことになるので、一株あたりの単価は下がってきて、長期的に見れば報われる確率が高くなるよ、という方法です。
詳しくはリンク先を見てください。


結論ですが、リスクに弱い脆弱なサラリーマンにとって最強の資産運用は、毎月自動で引き落とされる投信積立を申し込んで放置することです。
投資信託はノーロードでなるべく信託報酬が安いものを選び、コストを下げる。
選ぶファンドはインデックスファンドで、世界株ポートフォリオに近くなるようにアセットアロケーションを組む、というのが最も合理的な資産運用だといえます。



最後に、この記事を書く前に読んで、面白かった本を紹介します。


はじめに紹介したいのは、「あれか、これか」という本です。
Amazonレビューがめちゃくちゃ高いですが、この本はすごくよかった。

とっつきにくいファイナンスの内容を身近な例で超わかりやすく説明してくれるため、僕のような素人でもファイナンスがわかったような気になれます。
もちろん著者はプロなので、内容自体はしっかりとした理論に裏付けられているのですが、とにかく説明がわかりやすく、面白い。

ファイナンスの取っ掛かりとして読むのにおすすめです。

あれか、これか――「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門

あれか、これか――「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門


次に、割としっかりと学びたいけど、本格的に読むにはちょっと...という人におすすめなのが、藤沢数希さんの「投資のプロはなぜサルに負けるのか」という本です。
藤沢さんは恋愛工学などで批判されがちですが、経済やファイナンスの本はイメージと異なり、ちゃんとした教科書を元にして、藤沢さん特有のわかりやすい書き口で説明してくれます。

「あれか、これか」よりも数式やグラフが多めで、ちゃんとファイナンス理論を勉強するための取っ掛かりとして非常に素晴らしい本でした。

なぜ投資のプロはサルに負けるのか?

なぜ投資のプロはサルに負けるのか?


上の二冊で勉強した後に、ちゃんと勉強した内容を具体的に計算してどうなるかを確認したい場合に読むのが良さそうなのが、「道具としてのファイナンス」という本です。
小難しいファイナンス理論の内容をExcelで検証しながら勉強することができます。

僕は今、この本を勉強している最中なのですが、これまでざっくり学んだ内容が具体的な数字になって表現されていて、腹に落ちて理解が深まる感じがしています。

道具としてのファイナンス

道具としてのファイナンス