俺の遺言を聴いてほしい

これは俺の遺言だ。

ペアーズ - 待ち合わせに現れたサボテン女


ペアーズチャレンジの記事第一弾。


* * *


誰にも気づかれないように、ひっそりとペアーズを始めた。


ひっそり始めて、すぐに辞めるつもりでいた。

人生は短い。


何事も経験しなければわからないし、経験したからといってダラダラしていたら無限に時間を失ってしまう。


プロフィールを練りに練って、清楚で可愛い女の子とトントン拍子に予定を入れることができた。


記念すべきペアーズ一人目のアポである。



* * *



向こうからイイネが来たせいか、スムーズにLINE交換に進むことができた。


LINEを交換してから3日後。


僕が住む駅の最寄りに買い物に来る予定があるというので、カフェでも行こうかという話になった。


最寄り駅の、カフェである。


もしかすると、カフェの後で何か甘美なひとときが待っているかもしれない。



LINEの相性もよく、会うのが楽しみだった。


待ち合わせ時間前に、確認のLINEを入れる。


「私は白い服と花柄のスカートを履いてます」


「わかった!銀座で一番かわいい子探すわ!」


と、送った直後から、なぜか反応が悪くなった。


しかし、当時の僕はチャラ男の全盛期。


怯むことなく中身のないLINEを送る。



「緊張しすぎて過呼吸になりそう」


「じゃあ、会うのやめますか?」



え?


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シャレの通じない子なんですか?


不穏な空気が流れ始める。


待ち合わせ場所付近で、電話をかけた。


声のテンションが低い。


明らかに不機嫌なように見えた。


何よりやばそうな雰囲気は会って1分くらいで気付くものだ。



「はじめまして」


「ああ、はい」


辛い辛い辛い。


苦しい。

息ができない。


なんて気まずい雰囲気なんだろう。


会う前から用意していたルーティーン「全部Googleのせいだ」を出せそうにもない。

店を探す時に迷ったら問答無用でGoogleマップが壊れたことにする必殺技である。

この子の前でそんな冗談を言ったら、ゴミのように扱われるに違いない。


地上なのに水の中で溺れてるみたいだった。


空気が重くて息が詰まる。


早く時間が過ぎてほしいと思った。

それか、彼女はとてもツンデレな子で、みんなの前では素直になれないみたいな、そんな子であることを期待した。



カフェに入る。

コーヒーを頼み話をするも、全く話が盛り上がらない。


会話は全て単語と単文で行われ、話を広げようとする素振りがない。


俺はカカシとしゃべっているのだろうか?



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彼女のことを思い出しながら、この記事を書いている。


iPhoneを取り出し、ホームボタンを長押しした。


ピロン


Siriだ。


彼女はSiriの妖精だった。


こちらの質問には答えるが、自分からは何も語らない。



Hi,Siri。

君の心を教えてよ。


...。

.........。


...............。



彼女は終始、無表情だった。


辛かった。


こんなに話ができないのは数年ぶりだった。

沈黙が苦痛で、何もかも投げ出して、お金を置いて逃げ出したかった。


途中からだんだん腹が立ってきて、


こいつは、一体何しに来たんだ


という疑問が頭の中を駆け巡った。


全く話が盛り上がらない。


褒めてもダメ。

軽くイジってもダメ。


彼女は返事のない屍のようだったが、屍になりたいのは僕の方だった。


途中でいきなり、


会社、何ですか?


と聞かれた。


え?


会社名、なんですか?


えっと、会社...?


はい。会社名。



お前は会社何ですかbotか


なんとなく、このサボテン女に個人情報を知られたくなかった。

トゲが刺さりそうだからだ。


何度も何度も聞かれたから仕方なく勤務先を答えたら、


蔑むように、憐れむように一言。


「へぇ」


と。


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そこからはどんな話も発展しなかった。


彼女は会社名を聞くと、再び心を閉ざした。


何のために聞いたのだろうか?


彼女を落胆させてしまったことには違いない。


質問を返すように、こっちが


XXちゃんはどんな仕事してるの?


と聞いても、


「お昼の仕事」


と一言言ったきりだった。


空気が重かった。



人と人が心を通わすには、まず自分の心をオープンにしなければならない。


お互いに心を開いて、自分のことを話し、相手の話も聞かなければ、信頼を築くことはできない。


そして、信頼を最も遠ざけるものは、懐疑心なのだ。



ふと時計を見たときに


時間大丈夫ですか?


と聞かれた。


セコンドからタオルが投げられたように感じた。


試合終了のゴングだ。


ホッとした。


もう少し一緒にいたら、息苦しくて死んでいたかもしれない。


そしてこの気持ちは、彼女も一緒だったのだろう。


どうしたらよかったんだろうか?


お互いに、全く楽しむことができなかった。


出会ってしまったことが間違いだったのだろうか。


出会ってしまってごめん。


君を楽しませることはできなかった。


お別れした後に、そっとLINEを非表示にした。


きっと、彼女も同じことをしたのだろう。



それから二度と、彼女と連絡することはなかった。


悪い夢を見ていたようだった。