浪人生を支えてくれる彼女は神である。



眞子様の婚約がツイッターを騒がせる中、お相手の小室さんが司法浪人中であるというツイートを見かけた。




一次情報に当たっていないので情報の真偽についてはなんとも言えないが、

「司法浪人中の彼を支える女」

という話に心を打たれた。

浪人時代を思い出したからだ。


───18歳、春。
掲示板に僕の受験番号は無く、目の前には絶望しかなかった。

浪人生活が始まった。

高校2年の冬から付き合っていた彼女は現役で大学に合格し、華の大学生活を楽しんでいた。
やれサークルの勧誘がすごいだの、やれオシャレなカフェを見つけただの、同じ4月なのに、彼女だけ別の世界に行ってしまったように感じた。

僕は自らを鼓舞する意味を込めて

流浪人(るろうにん) 剣心

と名乗り、剣ではなくペンを握り、時に自分の物を握ったりもしながら、日々受験勉強に励んでいた。


浪人。


あの時ほど、自分が何者でもなかった時期はない。

高校生でもない。
大学生でもない。
社会人でもない。

浪人である。

「組織に所属していない」

ということが、これほどまで自尊心を揺らがせるものだとは思わなかった。

浪人という立場で大きな顔をするにはあの頃の僕は若すぎたし、何者でもない僕を支えるには、彼女は肩書きを重視しすぎていた。


バファリンの半分は優しさでできているが、男の魅力の半分は自信でできている。
浪人時代の僕は、欠片も自信がなかった。

模試の成績に一喜一憂し、周りの目線が気になり、電車で少年たちに

「あ!浪人生だ!」

と指を指されて笑われている気がした。


DUO3.0を開きながら電車に乗る自分の姿が車窓に映る。

そのみすぼらしい姿は、ほんの一年前、バスケシューズを背負いながら通学していた自分とはまるで別人のような気がした。

髪はボサボサで、目に生気がなく、暗い夜空に星は見えなかった。


浪人して2ヶ月後。

6月のことである。

彼女に新しい彼氏ができた。


「サークルの先輩と付き合うことにした」


という言葉を聞いたとき、灰色だった浪人の世界が真っ暗になった気がした。


それから数日は勉強に全く集中することができず、自分の逆刃刀を握り続けた。

「それでよかったんだよ」

浪人仲間が励ましてくれた。

その頃から既に髪が薄かった彼のハゲましは心強かった。

「やるしかないよ。俺たちには勉強しかないんだ」

彼は言った。

僕は気力を取り戻し、再び机に向かい始めた。

「いつか見返してやろう」

そんなことを思いながら、DUO3.0を眺めた。

僕を捨てて、サークルのイケメンの先輩を付き合った彼女が後悔するように。

DUO3.0のCDでテンションの高い外人が英語を喋っている。

"Jennifer left me for another guy."
「ジェニファーが俺をふって他の男のところにいったよ」

"Oh, you must be upset."
「えっ、それは辛いわね」

"Not really. I'm used to it."
「そうでもないよ。慣れてるよ」


DUOの例文が身に沁みた。


"Even though she is seeing someone else, I won't give her up."
「実際、彼女は誰かと付き合っているけれども、僕は彼女をあきらめない」

DUOを読んで、闘志を燃やした。


浪人生を支えてくれる彼女は神である。

辛い時期を共にしてくれた女性(ひと)は人生の宝だ。

これからだって。

将来もしかしたら、仕事をクビになることがあるかもしれない。
将来もしかしたら、交通事故にあってしまうかもしれない。

今持っているものが突然なくなって、何者でもない自分になったとき、それでもそばにいてくれるような人。

そういう人と一緒になるのが一番の幸せだと思う。


Whennever you're in touble or feeling down, I'll be there for you.
「大変な事があったり、落ち込んだりしたときはいつでも、私があなたのそばにいるわ」


DUO 3.0

DUO 3.0