クズの本懐 1巻の感想「興味のない人から向けられる好意ほど 気持ちの悪いものってないでしょう?」



『クズの本懐』第一巻の名セリフが僕の中で話題になっている。

興味のない人から向けられる好意ほど

気持ちの悪いものってないでしょう?

f:id:hideyoshi1537:20150819073902j:plain
クズの本懐 第1巻 第四話 ハイスクールガールララバイより


「興味のない人から向けられる好意ほどキモいものはない」

というのは実に本質をついたセリフだと思うのだ。

2019年にツイッターで話題となった「キモチップ問題」も一方的な好意の押しつけの面が嫌悪されているのだろう。

ストーリーと感想

主人公である安楽岡 花火(女)と粟屋 麦(男)。

いかにも少女漫画風な名前の二人は、校内みんなに羨ましがられるほどの美男美女カップルだった。

大人と違い、年収や会社名では評価されない温かい世界の恋愛。

美男美女である二人は学校中の羨望の的だった。

花火は自分で語る。

「私たちは皆が羨む理想のカップルだ」と。


しかし、そんな理想のカップルで始まり幸せに過ごしていたら、少女のストーリーは進まない。
読者は誰も主人公が最初から幸せになることなど願っていない。
主人公の恋は、最後まで実ってはいけないのだ。

理想のカップルと思われた二人には、実はそれぞれ想う人がいた。

花火は、幼馴染でもあった国語の先生を。
麦は昔、家庭教師をしてくれた音楽の先生を。


麦と花火はお互いに都合の良い関係で、付き合うにあたって二人の間には約束があった。


(1)お互いを好きにならない

(2)どちらかの恋が成就したら関係は終わり

(3)お互いの身体的欲求はどんな時でも受け入れる事


このような複雑な関係を保ちつつ、ストーリーは進んでいく。
それぞれの恋は実らぬまま。


部屋で二人きりになったある日、麦は花火と恋人同士の行為のようなものを始める。


「お兄ちゃんだと思って」


花火は「途中」まで麦を受け入れる。
寸止めである。

この辺の心理描写は女向けの漫画ならではだった。


少女漫画は行為の際に、感情を描く。
青年漫画は行為の際に、視覚を描く。

少女漫画は共感を。
青年漫画は支配を。

それぞれの視点の違いは鮮明だ。

この漫画では行為の際に、花火の繊細な心理描写が特徴的だった。

突き離せなかった。
「麦を」じゃない

麦を通して見たお兄ちゃんを。


これが男漫画だったら、あーんあーんで一コマで終わり、次の瞬間には朝になって鳥がチュンチュンと鳴いている。

少女漫画はそうはいかない。
繊細な心理描写が大切なのだ。


さて、冒頭の名言。
これはネットで話題になったセリフでもある。


同じ告白シーンでも、男性作者が描く漫画では、


「男の子に好きって言われて、嫌な人はいないでしょう?」


と描写したのに対し、女性作者が描く漫画では、


「興味のない人から向けられる好意ほど 気持ちの悪いものってないでしょう?」


と描いた点、あまりにも対照的だということで、話題になった。

f:id:hideyoshi1537:20190524150211p:plain
  ↑
男性向け恋愛漫画

女性向け恋愛漫画
  ↓
f:id:hideyoshi1537:20190524150233p:plain


oreno-yuigon.hatenablog.com


女性向け恋愛漫画は

「全然モテない地味な女が超大金持ちのイケメン道明寺に一途に愛される」

みたいな非現実的なストーリーを書きがちで、男の心理描写はリアルとは言い難い。
しかし女の心理描写に関してはものすごくリアリティがあると感じる。

横槍メンゴ先生の

「好きでもない奴から好意をぶつけられたらマジでキモい」

は割と多くの女性が抱くリアルな信条なのではないだろうか。

さて、こちらがネットで話題の例の場面の紹介である。

ネットでは大盛り上がりなこのシーンだが、ストーリーには大きな影響はなく、ただゴミが振られただけの話であった。


「あの・・・安楽岡さん! おっ覚えてるかな あの・・・返事を・・・」


(......誰?
めんどくさい......
なんで私 すぐ返事しなかったんだろ)



「ごめんなさい」


「えっ」


「ちゃんと答えました。それじゃ」


「ちょっ......ちょっと待って! い......一週間待ったのに! 期待するじゃん...」



(あ 泣きそう この人。

泣きそうなくらい
私の事 好きなのか)


このやり取りが、伝説の一コマにつながる。


「......興味のない人から向けられる好意ほど 気持ちの悪いものってないでしょう?」


f:id:hideyoshi1537:20190524150233p:plain


女こえー!
ここで振られた男は、作中にも二度と出てくることはなかった。

作者の頭からも忘れ去られたのだろう。

女にとって興味ない男の扱いなどその程度なのだ。

記憶から抹消される。
いないものと同じ扱いだ。

道で飛んでいる虫と同じだ。
はたけば消えて、振り返ることのない存在だ。


一巻の最後はこのようなつなぎで締められる。


「一人が寂しいなら

寄り添ったっていいじゃないか

遂げてみせるよ

クズの本懐」


oreno-yuigon.hatenablog.com

興味のない僕に愛情をぶつけられた彼女は居留守を使った

Kindleで大人買いした「クズの本懐」

予想以上に面白かった。
横槍メンゴさんは言葉の使い方がうまくて、読んでて感情移入してしまいますな。


冒頭の話に戻りますが、女の人って興味ない人に本当に冷たいですね。
どんな誠実な想いも、実直な行動も、ありったけの誠意も、興味ない男から向けられても全く響かない。

恐怖の対象として逃げられるか、搾取の対象にされてしまうのですわ。


僕が中学二年の時の話です。

これはもう僕史上、とても革命的な出来事だったんですが、なんと、モテ期がきたんですよ。

マジで。
なんかモテたの。一時的に。

学校でスケ番長的な存在だった女が「かっこいいじゃん」と言ってくれたことをきっかけに、モテがモテを呼んだ中二の冬。

その時の僕は純粋で、口づけで子供ができると思ってたような、清く正しく美しいDTだったんですけど、そんな中、人生初めての彼女ができたんです。

学校で目立ってた子に告白されて、もう狂おしいほどに愛しまくりました。

初めての彼女ですから。
もう他の女全てがジャガイモに見えるくらいに愛しました。

ある時は公衆電話から彼女の家に電話をかけまくり、またある時は、家電の子機を占有して、彼女宅に電話をしました。


しかし、幸せだった日々は長く続きません。
付き合って2週間後には、電話しても居留守を使われ、学校でも冷たくあしらわれるようになってしまったのです。

なぜ?
こんなに愛しているのに!
好きなのに!


そこで、冒頭の名言に戻るわけですよ。



「興味のない人から向けられる好意ほど 気持ちの悪いものってないでしょう?」


愛情をぶつけるだけじゃダメなんですね。
好意を向ければいいってわけじゃない。

相手の好意を引き出さなければいけない。

あのときの僕は相手のためのに愛を伝えたのではなく、独りよがりの愛情を一方的にぶつけていただけだったんです。
「愛情を素直にぶつけるだけじゃ相手のためにならない」ということを学んだのは、もっと大人になってからなんですけどね。


クズの本懐、面白かったですよ!

クズの本懐 コミック 全9巻セット

クズの本懐 コミック 全9巻セット


2巻に続く。
oreno-yuigon.hatenablog.com