少年ジャンプは面白い。
黄金期も暗黒期も乗り切って、今なお最強の漫画雑誌として輝き続けている。
なぜジャンプは面白いのだろうか?
僕はジャンプの面白さは「新陳代謝の速さ」にあると思う。
2018年に連載が始まった漫画
2017年10月から2018年10月までに、少年ジャンプで連載が始まった漫画を見てみよう。
今日は2018年10月5日なので、1年分だ。
- トマトイプーのリコピン(2017年45号 10月7日)
- フルドライブ(2017年47号 10月23日)
- ゴーレムハーツ(2017年48号 10月30日)
- BOZEBEATS(2018年7号 1月15日)
- アクタージュ(2018年8号 1月22日)
- 呪術廻戦(2018年14号 3月5日)
- ノアズノーツ(2018年15号 3月12日)
- ジガ(2018年16号 3月19日)
- 紅葉の棋節(2018年24号 5月14日)
- キミを侵略せよ!(2018年25号 5月21日)
- 総合時間事業会社代表取締役社長専属秘書田中誠司(2018年30号 6月25日)
- アリスと太陽(2018年31号 7月2日)
- ジモトがジャパン(2018年42号 9月15日)
- 思春期ルネサンス ダビデ君(2018年42号 9月15日)
1年で14作品の連載がスタートしている。
ジャンプの新連載が生き残る確率
1年で14作品がスタートしたが、今時点での最新号である2018年44号(2018年10月1日発売)で生き残っているのは以下の作品だけである。
- アクタージュ
- 呪術廻戦
- 総合時間事業会社代表取締役社長専属秘書田中誠司
- アリスと太陽
- ジモトがジャパン
- 思春期ルネサンス ダビデ君
14作品中6作品だけ。
ジャンプは人気順で連載順序が決まる仕組みになっている。
上記の作品は生き残っているとはいえ、正直厳しい。
44号での掲載順は「アリスと太陽」「田中誠司」「ジモトがジャパン」が下位3つを占めている。
これらの3作品は2018年6月以降に始まった作品で、まだ若い。
若さゆえになんとか生き残ってはいるものの、このままだと打ち切りになってしまうだろう。
下3つが打ち切りになったら、1年間で14作品連載して継続できるのは3つだけになる。
生存確率は21%だ。実に厳しい。
『アクタージュ』と『呪術廻戦』はおそらく安定期に入っており、特に呪術の方は鬼滅に次ぐヒット作品になるポテンシャルがあるように思う。
『田中誠司』は最初は面白かったので期待していたけれど、週間連載になって急に絵もストーリーも雑になってしまった。
手抜きしたらすぐに読者に見抜かれて順位が下がっていくのもジャンプの厳しさの一つだろう。
例外はもちろん、ハンターハンターだけである。
数撃ちゃ当たるが強さの秘訣
ジャンプの面白さの秘訣は、数撃ちゃ当たるで新しい連載をスタートして、ダメならすぐに見切りをつけるところにある。
もちろんジャンプの連載にたどり着くだけでも大変だと思うが、連載を継続するのはもっと大変なのだ。
読者アンケートは厳しく残酷で、面白くなかったらすぐに掲載順位を下げられる。
3〜4週間、下から5番以内に入ってしまうと危ない。
打ち切りフラグが立ってしまう。
打ち切りフラグは過去の人気作品にも容赦しない。
ダメな漫画は無慈悲に連載を打ち切られてしまう。
これまでも連載を無駄に伸ばして、「世界編」的な展開をやってしまって失速した作品はたくさんあった。
「引き延ばしておきながら打ち切る」
のもジャンプ編集部の厳しさだろう。
ダメになった漫画は打ち切って、次から次へと現れる新たな才能を世に出していく。
その一部が脚光を浴びて、ヒット作家になるのだ。
ダメな漫画は打ち切るべし
翻って、少年マガジンを見てみよう。
少年マガジンの連載継続率は手元に資料がないのでわからない。
なので申し訳ないが、個人的な感覚で述べさせてもらう。
マガジンの連載継続率はジャンプよりも高く、編集部も「情けをかけて見守る」傾向にあると思う。
順位も人気順とは限らないようだ。
この「優しさ」はデビューしたばかりの漫画家にとってはありがたいことだろう。
が、あえて少年マガジンには苦言を呈したい。
ダメな漫画はさっさと終わらせろと。
『はじめの一歩』のあの展開はなんだよ。
いい加減にしろよ。おれは本気で怒っている。
『はじめの一歩』を知らない人はちょっと俺の愚痴を聞いてほしい。
『はじめの一歩』は偉大なボクシング漫画だった。
めちゃくちゃ面白かった。
主人公の幕之内一歩はいじめられっ子だったが、師匠と二人三脚で必死に努力して、日本チャンピオンになった。
逆境をはねのける一歩のボクシングを手に汗握りながら応援していたものだ。
が、なんと!
主人公の幕之内一歩はパンチドランカーで引退。
ボクシング漫画の主人公が、ボクサーを引退してしまったのである。
主人公が引退!
なのに連載は継続!
意味がわからない。
幕之内一歩が引退してからは、ダラダラダラダラと何の意味もないようなエピソードを掲載し続けているのだ。
編集部もいい加減、やめさせてやれよと思う。
こういう「見切り力」のなさ、「優しさ」が少年マガジンの凋落の原因であるように思う。
素晴らしかった漫画でも、ダラダラと引き伸ばすと必ず腐ってきてしまう。
マガジンだとGTO。
ジャンプだと幽遊白書やデスノート、マキバオー、アイシールド。
新陳代謝させないとダメなのだ。
作家が乗りに乗っているピークまではムチを叩いて描き切ってもらい、あとは気持ちよく最終回にした方がいい。
スラムダンクの作者である井上雄彦先生は、
「山王戦以上の試合はもう描けないと思った」
と語り、全国大会の第二戦でスラムダンクを終わらせている。
それでいいのだ。
ピークを超えた後の漫画は惰性になってしまう。
惰性になると、せっかくの伝説的な漫画も尻すぼみになってしまうのだ。
新陳代謝こそが、面白さの秘訣。
これはジャンプに限らず、会社のプロダクトとか組織の仕組みにも言えそうだ。
数撃ちゃ当たる。
当たらなかったらすぐに撤退して、別の作品でチャレンジする。
チャレンジの多さと見切りの早さが成功の秘訣なのだ。