ツイッターでは毎年恒例の「奢り奢られ論争」が繰り広げられている。
- デートでクーポンを使う男はクソだ
- デートにサイゼリヤを使う男はクソだ
- デートで奢れない男はゴミだ
- 自分から誘って奢らない男はカスだ
と主張する女性に対し、
- 経済合理性のない女とは結婚してはいけない
- 自分で食べた分くらい自分で払え
- 奢ったからといってやれるわけではない
- あくまで男女は平等だ
と、男が反論する。
「奢り奢られ論争」と呼ばれる戦争は僕がツイッターを始めた4年前から何度も勃発しており、何度闘っても決着がつかず、お互いに罵りあっていつの間にか話題が終わり、憎しみだけが残っている。
ツイッターでは大学入試の小論文のごとく答えのない議論が山盛りで、他にも
- クリスマスプレゼントに4℃を買う男はアリかナシか
- クリスマスプレゼントにmiumiuのバッグを貰った女のコートに皺があるのはアリかナシか
- 一回目のデートでホテルに誘う男はアリかナシか
- 高年収のハイスペック男と結婚するにはどうしたらいいか
- イケメンで年収が高くて面白い男は浮気者か
などが人気の話題となっている。
どの論争についても、平和に結論が出た場面を僕は一度も見たことがない。
結局、
「各人自分の信念に従って好きなように行動し、それを認めてくれるパートナーを選ぶべし」
という当たり前の結論にたどり着くのだろう。
「ぼくのかんがえた最強の生き方」が他人に当てはまるとは限らないのだ。
さて、そんな奢り奢られ論争を横目に見ながら、「cis」と呼ばれる超大金持ちが書いた本を読んでいた。
関連記事:哲学はノウハウに勝る!cis著『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』の書評
「cis」は2ちゃんねるのハンドルネームで、日本で最も有名な個人トレーダーの愛称でもある。
総資産は230億円。
「日経平均株価をたった一人で動かす男」とも呼ばれている。
ツイッターのフェミニストをたった一人で動かし、四方八方からフルボッコにされる僕とは大違いだ。
資産230億円のcisさんが選んだ結婚相手
『一人で日経平均を動かせる男』の146ページに
「1億2000万持ってます、彼女募集中」
という項がある。
1億2000万円の資産はおそらく、コリドーで遊んでいる年収1000万円のハイスペックサラリーマンが持つ金融資産の400倍以上はあるだろう。
この世界に敵の資産を測るスカウターが存在していたら、爆発するレベルだ。
そんな彼が、2ちゃんねるの純愛掲示板に
「1億2000万持ってます、彼女募集中」
「年齢、容姿を問いません」
と書き込んだ。
投稿後、10ヶ月で3000通のメールがきて、そのうち2000通は冷やかし。
それでも1000通は女性からのメールなので、週3か週4で順番に女性に会う日々を続けた。
どう考えても50歳を過ぎている女性がきたり、バレンタインデー近くに来た40代後半の女性からは、大きな箱に5キロくらいチョコレートを詰めて渡されたりもした。
深夜2時に「今から会いに行けませんか?」とメールがきたこともあるという。
そのときの体験を振り返って、
「結婚がかかったときの女性のエネルギーの恐ろしさを知った」
とcis氏は語る。
かかっていたのは「結婚」だけでなく「金」だとは思うが......。
余談かつ私事で恐縮だが、別々の女性と週に3回も4回も会う日々を続けると、頭がだんだんとおかしくなってくる。
誰が誰だかわからなくなるし、会ってる相手の名前さえも間違そうになる。
「週3、4人、新規で女性と会う」
という行為は、人間の処理能力の限界を超えているのだろう。
遊び人全盛期でも、新しく会うのは週に1、2人に抑えるのが健康にも精神にもいいと思う。
関連記事:ペアーズを2週間やってみた感想
そんなcis氏の
「お金持ってます」
の板を通じて出会う日々は10ヶ月続き、色んな女の子と会って懲り懲りし、出会いを打ち切った直後に連絡がきたのが、後に妻となる大学院生だった。
就活のために東京に来るついでに、人生経験でメールしてみたのだという。
それまで100人以上会った女性の中で、彼女が一番cis氏に合っていた。
自分にないものをたくさん持っている点に惹かれたのだ。
学校の勉強ができて、武道もやっていて、痩せているけど筋肉があって、見た目が好みだった。
結婚指輪を買うとき、cis氏は彼女に
「なんでも好きなのを買っていいよ」
と言った。
繰り返しになるが、cis氏は日本有数の金持ちである。
そのとき彼女が選んだのは10万円くらいの指輪で、それ以上高いものを買った記憶はほとんどないという。
ライブドアショックで5億円失ったときも、「あらまあ」みたいな反応で、彼女のそういう性格がcis氏に合っていたのだそうだ。
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もちろんcis氏の例だけを見て、
「本当の金持ちは質素でお金を大事にする女を選ぶものだ」
と短絡的に決めつけることはできない。
贅沢三昧の女性と結婚する金持ちもいるだろうし、お金に関する価値観だけではなく、とにかく見た目が大事だという人もいるのだ。
大事なのは価値観の合致である。
非常に退屈な結論になってしまうが、色々な考え方をする人間が入り乱れるツイッターで、
「俺様と違う考え方をする奴はクソ」
と切り捨ててもお互いにクソをぶつけて汚れるだけであり、結局自分の価値観にマッチする人を選び、選ばれ、共に歩んでいくしかない。
個人的には飲みに行くときに男が払うのはあまり気にしないが、
「食事を奢られないと相手から何かを奪われた気分になる」
ような人がパートナーだと、長く一緒にいるのは難しいように思う。
そのような人は、相手を「共に人生を歩むパートナー」として見るのではなく、「自分に何を与えてくれるか」で相手を判断しているように感じるからだ。
金を取るか、名誉を取るか、チャンスを取るか
「奢る、奢らない論争」で男側が突きつけられているのは、極端に言うと「金を取るか、名誉を取るか、“その後”の確率を上げるか」の選択である。
「相手の喜ぶ顔が見たいから」という牧歌的な理由で財布を開くのは、その相手が長く付き合った彼女である場合であって、その日初めて飲む相手に対して、
「君の喜ぶ顔が見たいなり〜」
と心から願って財布を開く男は(おそらく)いない。
- お金を節約したい
- いや、これくらいの支出は問題ない
- 見栄を張っておきたい
- 評判を下げたくない
- “その後”の展開に進む確率を下げたくない
- “その後”の布石は盤石である
- 相手が可愛い
- 相手が可愛くない
- 相手の評価を落としたくない
- 相手の評価は気にしない
など、様々な思惑の元で、「奢る、奢らない」の判断がなされ、ある程度の収入を超えると
「面倒なことを考えずに奢ったほうが楽」
と考えるようになる。
というのも、
「奢ることによる心理的な負担」
は収入によって異なってくるからだ。
月収50万円の人が1万円のディナーを奢るのと、
月収20万円の人が1万円のディナーを奢るのでは、家計への負担は全く異なってくる。
ディナー代を経費として支払う人なら、心理的な負担はさらに軽いだろう。
しかしその「個人的な支出の重み」は女性には意識されず、どの人も「一人の男」として比べられるため、都会ではお金がない男の人の恋愛は厳しい。
(実は奢ったからといって“その後の確率”が上がったりもしないのだが、「奢らない人」をディスる層は一定数存在する)
「年上の男性に奢られ慣れた」女性からすると、「あの人はごちそうしてくれたのに」と他の人と比較してしまい、割り勘する男性の評価を下げてしまいがちだ。
「あの人はごちそうしてくれたのに、彼はごちそうしてくれなかった。私を軽んじているのかもしれない」
と。
高収入の男がごちそうした1万円の重みと、まだお金のない若者が少し頑張って多めに払った4000円の重みは違う。
若者は誠意を込めたつもりだろうが、それは伝わらない。
そうすると比較的お金のない若者(一部はKKO、キモくて金がないおっさん)は、“奢られ慣れていない若い女の子”を「擦れてなくていい子」と評価しがちで、
今度は「酸いも甘いも経験したアラサー婚活女子 vs 斜に構えた男性恋愛ツイッタラー」の争いが勃発し、終わることのない「第二次ツイッター世界大戦」が始まってしまうのだ。