Googleアラートを見ていたら、「半永久的な不労所得は『投資』からしか得ることはできない」という記事が流れてきた。
記事が掲載されているZUU onlineは
「人生経営に必要な『お金と時間』という資本をコントロールするために必要な情報を提供するオンラインメディアプラットフォーム」
であるらしい。国内最大級の金融メディアを謳っている割に内容がガバガバなように見えたので、記事について考えてみたい。
不労所得型の収益モデルというイメージが強いアフィリエイト、情報コンテンツ販売は最初に見込み客を集め、自動でセールスして売れていく仕組みを持てば半自動化することは可能だ。
まず不労所得の例として、アフィリエイトや情報コンテンツ販売が紹介されている。
「自動でセールスして売れていく仕組みを持てば半自動化することは可能だ」
という日本語がちょっと不自然だが、要は、
「Google検索などの流入から情報商材やアフィリエイトの成約につなげれば、営業などせずともほぼ自動でお金が入ってくる仕組みが作れる」
という意味だろう。
ビジネスは自分自身が働くことで収益を稼ぎ出す「労働集約型ビジネス」と、一度利益を稼ぎ出す仕組みを作れば、半自動的にお金を生み出す「不労所得型ビジネス」に大別できる。
経済学的には、
- 労働集約型
- 知識集約型
- 資本集約型
と分けることが多いはずだが、個人レベルでは
- 労働集約型=自分の労働力を投入しまくるビジネス
- 不労所得型=自分の労働力の投入が限りなくゼロに近いビジネス
に分けてもいいのかもしれない。
アフィリエイトは不労所得になるのか
元記事では、不労所得型のビジネスの例に
- アフィリエイト
- コンテンツ販売
- アドセンス広告などのネットビジネス
を挙げている。
この認識に大きな誤りがある。
まずは誤解されやすいグーグルアドセンスから考えよう。サイトに広告を載せて収益を得るタイプのビジネスだ。
結論から言うと、アドセンスでガッツリ稼ぐのはとっても難しい。
アドセンス収入はブログのテーマによって大きく変わってくる。
漫画やゴシップネタ、恋愛などの記事でページビューを集めてもアドセンス収入は低い。
金融系、転職系、賃貸系などは広告収入が高くなる傾向があるが、それでも新卒の給料程度の収入を得るためには100万PVくらい必要だろう。
天才的な文才がある人は少数の記事で100万PVを達成できるかもしれないが、普通の人が100万PVを達成するには相当量の記事の投下が必要になる。
記事を投下するということは、プライベートの時間を投入するということでもある。
キーワードの選定やSEO対策、SNSでのバズの研究もしながら何年もかけてコツコツと記事を投下して、やっと到達できるかどうかというのが100万PVで、そこに辿り着くまでにバイトの時給以下で労働力を投入する日々を送り続けなければならない。
またページビューが上がったとしても、いずれ検索流入の減少だったり、周りに飽きられてバズらなくなったりして、あれよあれよと廃れていってしまう可能性もある。
その結果、不労所得で暮らすなんて夢のまた夢、ほとんどの人はバイト代も稼げないままやめていく。
というわけで、「アドセンス広告での不労所得」というのは幻想である。
稼いでいる人は相当な労力を費やしている。
アフィリエイトの場合は成約率の方が重要で、アドセンスほど莫大なページビューは必要ないはずだが、狙ったキーワードにはライバルがひしめいているため、簡単には稼げない。
サイト内の構造を工夫したり、キーワードを選定したり、サイトの設計を考えたり、ライバルサイトを調査したり、分析したり、記事内容の取材をしたりで、結局「働かずに稼ぐ」とは程遠い。
というか、アフィリエイターで自分の稼ぎを「不労所得」と言ってる人は見たことがない。
元記事で書かれている以下のような指摘は概ね正しい。
筆者が聞いたアフィリエイターのC氏の話では、昨年の美容系・健康系のアップデートにより、それまで月50万円を稼いでいたサイトが検索結果上位から落ちしてしまい、もはや2万円程度しか稼げなくなってアルバイト生活に戻ったというのだ。
アフィリエイターの多くは、Googleの検索変動のリスクヘッジのために複数サイトを運営したり、その他の収入源の確保に走ったり、あの手この手でリスクを減らすよう工夫している。
「不労で稼ぐ」とは程遠いのがアフィリエイターの実態だろう。
以下の記載も「半自動化」という部分以外は正しい。
半自動化できるのが魅力のアフィリエイトや情報商材ビジネスも、随時アップデートが必要だ。
よほど参入障壁を高くできる何かを持てれば話は別だが、多くはそうではないといえるだろう。
個人的にはGoogle検索(SEO)を中心としたアフィリエイトの世界で参入障壁を築くのは難しいと思っている。
そもそもサイトの情報が相手にも全て丸見えであるため、記事内容もいずれ研究されてしまうだろう。
なので、アフィリエイトというか、ネットの発信の差別化は最終的には「ファンビジネス」に行き着くものだと考えている。
- その人のブログが読みたい
- その人の記事を指名して検索したい
という人がどれだけ増やせるかが差別化ポイントだ。
またSNSで露出が増えて、大手の媒体に取材されたりすると、大きなサイトからリンクを貼ってもらえる可能性もある。
権威性が重視される昨今、大手メディアからのリンクはサイトの評価を大きく上げることだろう。
これもSEO一辺倒でサイトを作ってる人との大きな差になりそうだ。
話が逸れた。すまん。本題にいこうか。
投資で不労所得は難しい
元記事では投資家として不労所得を得ている人物が紹介されている。
Y氏は米国株を中心に投資を続けている。彼の狙いはキャピタルゲインではなく、配当金である。
米国株の中には30年連続で増配を続けている企業が数十社レベルで存在する
最初からなかなか衝撃的な記述だ。
「30年連続で増配を続けている企業が数十社レベルで存在する」とあるが、30年連続で増配する企業をどうやって見つけるのだろうか?
30年連続で増配する企業よりも、30年以内に倒産する企業の方が多いのではないだろうか?
配当金だけではなく、株価そのものも長い目で見て増加し続けるなら、売却時にキャピタルゲインも得ることができるのだ。
「株価そのものも長い目で見て増加し続けるなら」と仮定を置いているが、1990年に日本株に投資した人は長い目で見て、というか30年経ってもほぼ儲かっていないだろう。
「長い目で見て増加し続ける」という仮定にも無理がある。
そして何よりも衝撃なのは以下の記述だろう。
彼は資産10億円以上のほとんどを配当金が得られる米国株に変えて持っているので、単純計算で年収は2,500万円程となる。
サラリーマンの平均の生涯収入が2億1803万円と言われている中、一体誰に向けてこの記事を書いているのだろう。
10億円の資産を持っている人であれば、そもそも投資などしなくても一生暮らしていける。
仮に年間1000万円自由に使っても、100年生きていけるのだ。
最後の不動産投資についてもガバガバだ。
これが不動産投資収益でも同じことが言える。
海外の不動産の中には日本での不動産投資の傾向と異なり、人口増加と、経済拡大に応じて築年数が30年、40年になっても価値を高めている物件があるのだ。
だからその物件をどうやって見つけろっていうんだよ...。いい加減にしてくれ。
最後、締めの文章。
ビジネスは労働者ではなく、たとえ経営者側にまわっても働き続ける必要がある。それがビジネスの本質なのだ。
だが投資は違う。変化の早い現代においても、投資は不労所得型収益を生み出す最高峰の仕組みなのである。
僕は投資を否定する気は全く無いし、余裕資金は積極的に運用するべきだと思っている。
でも「投資すれば不労所得を生み出せるぜ最高!」みたいな考えは甘すぎで、普通のサラリーマンがそんな考えで行動した場合、それはもう「投資」でも何でもなく、パチンコと変わらない「投機」に走るしかないだろう。
レバレッジをかけないと、サラリーマンの余裕資金では不労所得と言えるくらいの収益を上げるのは難しいからだ。
結局、ほとんどのサラリーマンは「投資で不労所得」を生み出せるだけの原資を稼ぐこともできない。
株式市場全体に投資した場合の期待リターンを5%とした場合、年間500万円のリターンを得るためには1億円の元手が必要になるのだ。
1億円欲しい!とはいつも思っているが、1億円を普通のサラリーマンが貯めるのはちょっと厳しいのではないだろうか。
motoさんの本を読んで、本業と副業を続けていくのがいい。
最後に個人的な話になるが、僕が考える半永久的に有効な“蓄財方法”は「節約」である。
全然夢がない。全然ワクワクしない。そもそも所得でもない。
しかし誰でもできて、ちゃんとやればいずれお金が貯まる。
みんな年収ばかり気にしているが、どれだけお金を上手に使い、どれだけ節約できるかで年収300万円分くらい......というと大袈裟かもしれないが、年収10〜30%分くらいの差は出る。
最後に節約を続けて大資産家になった本多静六先生の記事を貼っておく。
夢がないように見える節約だが、ちゃんとやれば偉人になれるとわかるはずだ。