なぜ最近のキングダムはつまらなく感じてしまうのか



私はキングダム大好き芸人である。

当然Kindleにはキングダム全巻入っているし、ヤンジャンのiPadアプリでキングダムの最新話を買って、毎週木曜日に最新話を朝7時までには読んでいる。

キングダムに初めて出会ったのは2017年頃で、デビューは遅かった。
その頃、コミックスは45巻あたりまで発売されていて、泣きながら一気に追いついてしまった。

それから何度もコミックスを最初から読み返し、主要なコマはほぼ頭に入っている。

さて、そんな風にずいぶんとキングダムを愛してきた私だが、最近なぜかキングダムにワクワクしない。
なんというか、今までのヒット漫画が最高潮の盛り上がりを超えて、世界編に突入してだんだんと退屈になってきたときのような、そんな寂しさを感じる。


みどりのマキバオーでカスケードを倒し、世界戦に突入したとき。
るろうに剣心で志々雄真を倒し、縁編の回想に入ったとき。
アイシールド21で全国制覇を果たし、世界大会編に進んだとき。


名作の魅力が少しずつ萎んでいくのを見て、とても寂しかった。

最近のキングダムはネタ切れ感が出てきたというか、かつてのようなエキサイティングさが感じられない。

個人的にはキングダムは朱海平原(鄴攻め)に入ってから失速しているように感じる。


鄴攻め編は何がいけないのだろうか?

展開がめちゃくちゃ遅い

朱海平原編は戦闘の規模が大きいこともあってか、とにかく展開が遅い。

信が「力を貸せ!飛信隊!」と叫び飛信隊が覚醒してテンション爆上げしたのが、なんと!もう一年前なのだ。

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隊が覚醒してそのまま趙軍左翼を撃破するかと思いきや、ダラダラと一日が終わり、翌日の戦闘に入ってしまったときは正直拍子抜けした。

「え、あんなに盛り上げて覚醒したのに、普通に一日終わるの?」

みたいな気分だった。

そこからダラダラと話が続き、趙峩龍だとか尭雲だとかを討ち取ったはいいものの、なんだか盛り上がらない。

堯雲を倒したときも、何年もかけた割には最期はあっさりと倒してしまった印象を受けた。

今回の「鄴攻め」の展開がどれくらい遅いのか、他の戦争と比べてみよう。

戦争名 総大将 ボスキャラ コミックス巻数
魏の滎陽(けいよう)攻め 麃公 呉慶 5〜7巻
秦の馬陽防衛 王騎 李牧 11〜16巻
魏の山陽攻め 蒙驁 廉頗 18〜23巻
vs合従軍 蒙武 李牧 24〜33巻
魏の著雍(ちょよう)攻め ファルファル 呉鳳明 35〜37巻
黒羊攻め 桓騎 慶舎 41〜45巻
鄴攻め 王翦 李牧 46〜

鄴攻めは46巻から始まり、2019年10月時点では55巻に到達するが、まだ闘いは終わらない。

合従軍の長さを3巻分ほど越えるのではないだろうか。

話数的にも鄴攻めがキングダム史上最長となるのは間違いない。

話が分散されていて、理解しづらい

鄴攻めは王翦、楊端和、桓騎の3軍に分けて戦闘を展開していて、戦闘の規模はたしかに大きいのだが、規模が大きければ面白くなるわけではない。

主人公の信と離れた楊端和の闘いにコミックス1.5巻分も費やしており、週間で読む場合は4ヶ月分ほどになる。
後でコミックスでまとめて読めば面白いのかもしれないが、リアルタイムで追いかけるのは辛い。

話が散らばってしまっているのだ。
コミックスでまとめて読まないと、どの戦場がどうなっているのかなかなか理解できないだろう。

特に「どの戦場が、今、何日目の話なのか」「各戦場に兵糧はどれくらい残っているのか」などを“週間ヤングジャンプ”で読みながら抑えるのは難しい。

細かい設定が気になってしまう

鄴攻めでは「兵糧」が大きなポイントだった。
バトル漫画で「兵糧」を大きく取り上げたのは私が知る限りではキングダムが初めてである。

「腹が減っては戦はできぬ」というように、実際の戦争では兵糧はとても重要な要素だが、それを漫画の設定に盛り込むと、話が細かくなってとても面倒くさい。

そのためバトル漫画では基本的に兵糧については触れられないのだが、今回のキングダムは「兵糧」をテーマに戦争を始めた。

それが間違いだった。

兵糧が尽きたら終わりかと思いきや、馬を食って生き延びている

鄴攻めの最中も兵糧に言及されることはたびたびある。
兵糧が残り3日だとか、2日だとか、もうなくなっただとか。

で、なくなったらヤバそうだと思ったら意外と馬を食って生き延びてるし、兵糧の制限による戦闘力の低下も特に発生していない。

桓騎軍で摩論が

「兵糧が残り一日分になった時点で鄴の包囲を解いて退散することを約束してくれ」

と言い、

桓騎が「ああ マジでそうなったらな」と了承したのが何かの伏線になり、ひと揉めするのかなと思いきや、今のところ何も起こっていない。

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桓騎将軍:『キングダム』555話「個別撃破」より引用

なんか色々と兵糧攻めを話題にしているけど、正直、兵糧の話はなくてもよかったようにも見える。


王翦将軍の「兵糧攻めに兵糧攻めで返す」ってのもなんだか非現実的に見えてしまい、王翦の刺客が鄴の米蔵を焼くのも遅いし、普通に考えると、

「鄴の民が頑張って、秦の兵士と我慢比べ」

して秦の軍隊を滅ぼした方が戦略として有効なんじゃないか、とも思える。

兵士は日中ずっと運動してて腹減るだろうし。

今回の「鄴攻め」では兵糧の設定を入れてしまったがために設定がややこしくなっていて、それでいて漫画のコマ数には制限があるためか、全て状況を描くこともできず、バトルの魅力が発散されてしまっているように感じる。


何度も書いてしまうが、今の話が戦争の何日目で、どの戦場に兵糧がどれくらい残っているのかがわかりづらい。


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なぜ王騎将軍の矛をぶっつけ本番で使うのか

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鄴攻めでは信が王騎将軍の矛を使い始めた。

王騎将軍の矛を受け取る場面はキングダムでも名シーンだと思うが、なぜぶっつけ本番で使う?

もし矛が手に馴染まなかったら死ぬかもしれない。
別の矛で練習した技が出せなくなるかもしれない。

日々練兵に励んでいるのだから、戦場で使う大切な矛は練習で使って、手に馴染ませておくべきだろう。

新しいグローブを試合でいきなり使う野球選手や、新しいバッシュを試合でいきなり使うバスケットボール選手がいないのと同じだ。

今回の信は危機感が足りないと言わざるを得ない。

王翦の部下が弱すぎる

麻鉱と呼ばれる王翦の左腕的な武将は李牧に瞬殺されたし、亜光は一度気絶させられて以来ずっと寝たきりで起きる気配がない。

王賁が瀕死の状態から復活したのに比べ、亜光は寝過ぎなように思う。
闘うのが嫌で狸寝入りしているのだろうか。

これまで活躍しているのは飛信隊、玉鳳隊、楽華隊で王翦の部下は全く活躍していない。
たまにアカキンというYouTuberみたいな名前のやつがサポートに走るくらいだ。

王翦の知略も「飛信隊の覚醒を読んでいた」みたいなぶっつけ本番っぽい感じがするし、

「王翦の知略がすごすぎる...!」

みたいな衝撃を受ける場面はまだない。

楊端和はなぜ味方を助けに行かないのか

楊端和は9日目で城を落とした。
敵は列尾に下がって、犬戎達は仲間になった。

王翦軍は15日目の闘いを迎えようとしている。

この6日間、楊端和は何をやっていたのか?

籠城戦であれば全戦力を保持する必要はないし、そもそも敵は目の前にいない。
せめて壁の軍だけでも食料を持って王翦の援軍に向かわせるべきだったのではないか。

なぜじっと城で待っているのか理解できない。
合従軍のときのように、味方のピンチに駆けつけるのだろうか?

展開がワンパターンになってきている

今回のキングダムの闘いは平地戦ということもあって、展開が単調になっている。

特に秦軍右翼の展開は一つしかない。

「ウオオオオオ!」

とすごく士気を高めて突撃し、ラスボスっぽいやつと一騎打ちして倒す。これだけだ。


秦軍左翼の蒙恬は途中は何やっているのかよくわからなくなり、中央軍の王翦は李牧っぽい軍略を使っているとはいえ、漫画的な派手さはない。

作者の原泰久先生が今後の展開のために「王翦のすごさ」を強調したいのはわかるが、どうしても地味な印象は拭いきれない。

ちなみに史実では王翦は超優秀な武将で、国を落としまくったそうだ(『史記 列伝』に王翦がたくさん出てくる)


今回の「鄴攻め」では倒さなければならない敵も大量に残っている。

李牧、龐煖、馬南慈、フテイ、カイネなど未処理のままだ。

これらを一人ひとり倒すのにもまだまだ時間がかかりそうであり、とにかく今回のキングダムは「闘いを大きく広げすぎた」というのが、つまらなく感じてしまう一因であるように思う。

この広げまくった風呂敷をどうやって閉じるのか。
どうやって最後に盛り上げていくのか、私はまだ期待は捨てていない。

合従軍のような盛り上がりで終わることを願っている。

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【2019年10月3日(木)の早朝 追記】
最新のキングダムを読んだ。

長いトンネルを抜けたかのように、物語が動き始めた。
王翦と李牧の王手の掛け合いから、終戦に向かって駆け出しつつある。

思えば鄴攻め・朱海平原編は「敵・味方のもみ合い」が多すぎた。
同じようなコマばかりに見えたことがやや退屈さを感じた原因だろう。

話が動き出すとやはりキングダムは面白い。
これからの展開に期待したい。

死んだ信が生き返る

2020年2月。

龐煖を斬った信が力尽きて死んだ。

もはや読者としては

「どうせ生き返るんだから余計な話を挟むな」

と言いたいところだろう。

ダチョウ倶楽部の「押すなよ、絶対押すなよ」以上の茶番だ。

信は絶対生き返るからだ。


現在は死んだ信のそばで、なぜか羌瘣が不思議な呪術を使い、信を生き返らせようしている。


「羌瘣がザオラルを使う」というのは今になって出てきた完全な後付け設定である。

最近のキングダムは浅い後付け設定が多すぎる。


「龐煖が人類を救うために武の極みを目指していた」

みたいな設定も、龐煖を良い奴にして死なせようとするためだけの不要な設定に見えた。

龐煖の親が人を助ける秘術を使える、という設定もいきなり出てきた。


なぜ話の後半になってから急に、秘伝のタレのように設定を継ぎ足していくのだろうか?

作者の才能が枯渇したのだろうか。


細かい伏線をずっと張り続け、今になって10年越し、20年越しに伏線を回収しているワンピースとの差が歴然としすぎて辛い。

キングダムはとにかく不要な設定が多すぎるし、話を引き延ばしすぎている。

展開がワンパターンなことに悩み、その打開策として、とりあえず信を死なせてみたのかもしれないが、読者が求めているのはそんな茶番ではないのだよ。

「死者を生き返らせる話」

は漫画では使いどころが難しい。

簡単に生き返らせてしまうと、ドラゴンボール並みに死が軽くなってしまう。

少なくとも現在(2020年2月)、主人公である信を死なせたのはあまり意味があるとは思えない。