統計で見る、勉強も運動もしない社会人の姿



数学検定準1級に合格した小学校6年生の合格体験記が面白い。
数検準1級は高校3年程度(数学Ⅲ程度)で、難易度はだいたい教科書レベル(基礎レベル)とのこと。

数検準1級に合格した小学校6年生は、進学校の理系卒業レベルの数学力を身に付けていると言ってもいいかもしれない。
私も来年は小学生に負けないように数学検定を受けたい。

そんな数検少女の合格体験記で面白かったのは、時々差し込まれる父親disだった。

わからないところを父に質問しても教えてもらえなかったので、なるべくわかりやすい解説の参考書を買ってもらいました。
しかし、数学Ⅲのどの参考書にも「行列」の解説はありません。

そこでいつも頼りにしている協会が発行している書籍「要点整理」と「記述式演習帳」を購入してもらい、行列の学習を進めることができました。

私が勉強する横でいつもお酒を飲みながらスマホをいじっているだけの父を横目に、「完全解説 発見」と「過去問題集」にもとりくみ、3か月という短い対策期間でしたが、一か八かで6年生の4月に受検しました。

(略)

いつも思うのは、数検は年齢に関係なく実力で評価されるところがとてもいいということです。

これからも数学を学び続け、いつかは1級に挑戦したいです。それと、父にも数学を勉強してほしいです。

引用元:年齢に関係なく実力が評価される「数検」

この合格体験記を書いた淵上理音さんは数検だけでなく英検1級も持っている才女で、林先生の初耳学にも出演したという。

そして娘にディスられがちなお父様は番組で

「私はスマホで遊んでいたのではい。スマホで娘の受験情報を調べていたのだ」

と、打ち合わせ中に居眠りした時のローランドみたいな言い訳をしていたそうだが、真相は藪の中だ。

ちなみにローランドは一大イベントの企画会議中に居眠りが見つかった時

「寝てません。まぶたの裏を見ていただけです」

と言い訳して、その場の空気を掴んだ。会社で居眠りが見つかったときに積極的に使ってほしい。

父はスマホで何かを調べていたとはいえ、娘からは「ビールを飲んでスマホをいじっているだけ」に見えたことに異論の余地はないだろう。

いずれにしても「お父様が子どもの横にいて勉強を見ていた」ことが学習効果を高めるために有効であったことには違いない。


oreno-yuigon.hatenablog.com


さて、前置きが長くなった上にかなり主題とずれてしまったのだが、この記事で書きたかったのは、

「大人がスマホばっかり見て全然勉強してないんじゃないか」

ということである。

最近このブログで紹介してきたエビデンスベースの議論ではなく、エッセイ調の記事で申し訳ないのだが、政府の統計情報を参考にしても
「日本の社会人の学習時間」は相当少ないようである。

たとえば「平成 28 年社会生活基本調査」を見ると、25〜34歳の「学習・自己啓発・訓練(学業以外)」は「10分」と、高校の昼休みよりも少ない。

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「平成28年社会生活基本調査」30ページ目

10分で何か勉強したつもりになっても、学んだ先に忘れていくはずなので、何もやっていないのとほぼ同じだ。
その他にも読書時間が「4分」だったり、およそ「学習」と呼べる行動を取っていないことがわかる。

社会生活基本調査から“平均的な”日本人男性の時間の使い方を眺めてみると、仕事に8時間、通勤に1時間、家では家事・食事・睡眠とテレビにほぼ全ての時間を費やしていて、運動もほとんど行っていないようだ。

勉強しないのも問題だが、運動時間が「6分」となると、健康にも悪影響があるように見える。


oreno-yuigon.hatenablog.com


「勉強もしない、運動もしない」と他人を批判したところで何にもならないが、数検準1級に合格するような子どもから見て「ちゃんと勉強している大人」に見えるような大人は少なそうである。

また、スマホを触る時間がかなり長いのも面白い。

プライベートの時間(仕事以外の時間)では平均して2時間以上スマホかパソコンを触っており、昼食中にも5人に1人がスマホを見ている。

こうやって書くと、「スマホが大人の学習時間を奪っている」ように感じなくもないが、おそらく明日世界からスマホが消えたとしても、結局別のことをして時間を潰し、いま勉強していない人が急に机に向かい出すことはないだろう。


たとえば、平成13年(2001年)の「社会生活基本調査」を見ても、30代の男女が学習に費やす時間はたった8分となっている。

スマホがあろうとなかろうと、平均的な日本人は社会に出てからロクに勉強などしておらず、自己啓発もせず、仕事と家事と育児に追われ、空いた時間はテレビを見て過ごし、一日10分も運動しないことがわかっている。

こうなると「海外はどうなのか」と気になるところだが、キリがないので日本人限定とする。

また「平均的な日本人」というと、都会の人間も田舎の人間も、DQNもエリートも含めての平均であるため、いわゆる「知識労働者の平均学習時間」は政府統計からはよくわからない。

ピーター・ドラッカーが述べていたように、現代が知識社会であるのなら、知識量や理解力の差が所得の差にもつながる可能性が高く、一日8分の勉強では知識社会で勝ち抜くのは正直厳しい、というのが実際のところだろう。


勉強や自己啓発活動が直ちに収入に結びつくとは限らない。
勉強ができても仕事ができない人はたくさんいる。

しかしながら、人間は無から有を生み出すのは大変難しく、勉強した知識の組み合わせが新たな付加価値を生むのも事実で、やはり

「勉強しないよりは勉強したほうがいい」

のは間違いない。


それで、「勉強時間をどう捻出するか」の観点で統計を眺めると削れそうな時間がたくさんあることもわかる。

たとえば、

  • 50分の通勤時間を20分にできる場所に引っ越し、30分勉強する。
  • 90分見ているテレビを30分に制限し、60分勉強する
  • スマホを触る70分を10分に制限し、60分勉強する

みたいな感じで、「やらないことを決意する」だけでずいぶんと時間の使い方が変わりそうだ。

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