ライフハックの研究ばかりを続け、いつまで経っても人生を向上させられない僕がまた新たな本を見つけた。
新宿の本屋でたまたま見つけた『時間術大全 人生が本当に変わる「87の時間ワザ」』である。
最近は「〜大全」シリーズがやたらと多いが、これはGoogle出身の著者二人が時間を有効に使う方法をまとめたものだ。
15年以上も生産性を向上させる方法に関する本を読み漁り、研究してきた人にはそこまで目新しいものはない。しかし人生で一度も時間術を研究したことがない人にとっては、色々な本で語られている内容がコンパクトにまとめられている良書だと思う。
特に時間を無限に奪うスマートフォンへの対策については、誰もが薄々気付いていることをきちんと文章にしてくれているという点で、ものすごく価値がある。
さて、この記事を読んでくれている人は今、スマホを開いているだろうか?
それともパソコンを開いているだろうか?
スマホのホーム画面に戻ってみてほしい。
どんなアプリがあるだろう?
ニュースアプリ、インスタグラム、フェイスブック、ツイッター。
これらは全部、僕たちの時間を無限に奪う魔物だ。
奪うのは時間だけではない。集中力も奪っていく。
朝イチでニュースアプリを巡回し、フェイスブックの更新を確認し、ツイッターのタイムラインを眺めて回る間にどれだけの時間が流れているだろうか。
フェイスブックやツイッターをスマホから消し去ろう。
実際にやってみると、自分がどれだけSNSに時間や集中力を奪われていたかがよくわかる。
一回のツイートに費やす時間は5分もかからないかもしれない。
でもそのツイートの反応を気にする時間、通知を確認する時間、リプライに返信する時間を全て合わせると、たった一つのツイートで30分以上を失ってしまう。
一度集中が途切れてしまうと、もう一度集中モードに入るのにさらに時間を必要としてしまう。
こうやって僕たちは集中力を失っていく。
フェイスブックやツイッターのタイムラインではいつも何らかの事件が流れている。
吉本興業の闇営業、凄惨な放火事件、自動車を暴走させる老人、怒れる炎上事件...
ものすごくたくさんの事件が毎日のように流れてきて、僕たちの関心を集めている。
でも、それらのニュースを毎日見る必要はない。
本当に緊急かつ重要なニュースは自然と耳に入るし、普段触れるニュースの99%はどうでもいいニュースだ。
『時間術大全』ではニュースは週に一度、まとめて読むことを推奨している。
週間のニュース雑誌の『エコノミスト』などを一週間に一度読んだり、新聞のダイジェストをまとめて読んだりだ。
僕は毎日の日経新聞の購読もやめた。
藤田晋社長が毎日新聞5紙読んでいる、という記事を読んで真似してみたが、別に新聞を毎日読んでも人生は変わらなかった。
代わりに月に一度、『月間新聞ダイジェスト』を読み、週に一度、『楽天マガジン』で経済雑誌を読むようにしている。
ほとんどの人にとって、毎日のニュース摂取は不要で、週末か月末にまとめて読むだけでいい。
「社会人たるもの、日経新聞を読むのは基本マナーだ」
と言われてきたので新聞の購読をやめるのは勇気がいるかもしれない。
断ち切る勇気がなかなか出ない人は、試しに一週間だけ「毎日のニュース摂取」を中断してみて、仕事に支障が出るか試してみるのがいいと思う。
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- 発売日: 2019/07/20
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ネットこそが最大の敵
もう誰もがわかりきっていることだと思うけど、僕たちの集中を無限に奪っていくのはインターネットである。
ブラウザを開けば何でも検索できる。どんなサイトにもアクセスできる。それが時間と集中力を奪っていく。
僕が高校生の頃はインターネットは遠い存在だった。
家にパソコンはなかったし、携帯電話でインターネットを見ることはなかった。
僕たちの時間を奪うものはメールだけで、好きな子から届かないメールが僕の集中を奪った。
大学くらいになるとmixiが出始めて、だんだんと「ネットの反応」が自分の精神を蝕み始めた。
2010年代になるとツイッターやフェイスブックによって、僕たちは反応中毒になり、いつもそわそわとネットの出来事に心を奪われるようになった。
ネットが人々の時間と注意力を奪う流れは止まらないだろう。
ネット企業の多くは、「いかにして人に時間を使わせるか」を常に考えている。
世界最高の頭脳がシリコンバレーに結集して、人の注意力を奪うために日々プロダクトを開発しているのだ。
この流れは自分で断ち切らなければならない。
ネットの誘惑は意志力では克服できない。仕組みを作って乗り越えるしかない。
ホーム画面からアプリを削除する
『時間術大全』を読んで真っ先に実施したのは、iPhoneからツイッターやフェイスブックなどのアプリを削除することだった。
Gmailアプリも削除した。Gmailが手元にあるといちいちメールを確認してしまうからだ。
アプリを削除して、次にLINEなどの最低限残したアプリの通知をオフにした。
通知なんていらない。自分が気になったときに確認すればいい。
通知によって動かされるのではなく、自分から能動的に、必要なときに必要なアプリを開けばいい。
ログアウトする
ツイッターやフェイスブックからログアウトしよう。
パスワードを複雑なものに変えて、紙にメモを残し、そのメモを手の届かないところにしまっておく。
そうすると、ログインするのにたくさんの障壁を乗り越える必要が出てきて、そもそもログインする気がなくなってくる。
即レスしない
Slackが飛んできたり、メールの返信を急かされたり、グループLINEが届いたり、僕たちは即レスのプレッシャーに晒されている。
早く返事をくれ、早く返事をくれとせがまれて、新しいテクノロジーが開発されても僕たちはちっとも楽にならない。
というより、メールがチャットに変わったら余計に忙しくなった。四六時中誰かのチャットが飛んでいて、気が散って仕方がないからだ。
『時間術大全』ではメールの返信を遅くして、あとでまとめることを推奨している。
いちいちメールが来るたびに返していたら、自分の作業に全く集中できない。
ただし、この即レス否定に関しては、『時間術大全』の著者二人がエンジニアだということも考慮しておかなければならない。
机に向かってガリガリとコードを書く人間にとって、即レスは集中を阻害するものでしかない。
だがマネジメントが主な業務で、自分が返信しないとチームの仕事が全く進まない人にとっては、即レスこそが仕事の肝となる。
ネットから離れて退屈な時間を楽しもう
『時間術大全』を読んでからはスマホをあまり見なくなった。
通知も来ないし、そもそもツイッターやフェイスブックがないから見るものがない。
ブラウザアプリはSafariだけ残して、そのSafariも一番右の方に追いやった。ホーム画面から何度も右スクロールしないとSafariにはたどり着かない。トイレにスマホを持ち込むこともなくなったし、移動中にもスマホは見ない。
そうすると、今までスマホを見ていた時間が「何もしない時間」に変わる。
いわゆる退屈な時間だ。
スマホを常時見るようになって、「退屈な時間」が極端に少なくなった。
脳を休めて、アイデアが浮かぶような退屈な時間だ。
ネット断ちを始めると、退屈な時間が増えた。
この時間で新しいやりたいことが浮かんできたり、考えたことを整理したり、やってきたことを振り返ることができる。
スマホを見ない生活も悪くない。
断食は正義
毎日24時間のうち16時間は何も食べない、といったプチ断食が最近の流行りだ。
空腹だと食事がおいしく感じられるし、断食には心臓血管の健康維持や長寿、果てはがん発症リスクの低下などの健康効果もあるといわれる。
『時間術大全』では、
「断食の最大のメリットは頭をスッキリさせ、脳の働きを活性化して、優先事項に集中し続けやすくなることにある」
と述べられている。
朝食を抜いて、間食をやめるだけで体重増加は防げるし、集中力の妨げにはならない。
小手先の時間術を駆使しても、大きな無駄に対処しなければ意味がない
『時間術大全』では87個もの時間術を紹介してくれる。
どれも興味深く、面白いものだ。
しかしこの本の中でたった一つ、足りないものがある。
あえてこの記事で「88個目の時間ワザ」を追記したい。
88個目の究極の時間術。それは...
会社を辞めよう
である。
僕はずっと昔から時間をどうやったら有効に使えるかと考え続けてきた。
社会人になる前からずっとだ。
ひたすらに考え続けて至った結論は、
大きな時間を無駄にしているうちは、小さな時間の有効活用は無意味
ということだ。
社会人が最も時間を使うのは、会社だ。
会社にいる時間を「無駄なことやってるな」と感じるのなら、自宅での時間をいくら有効に活用してもたかが知れている。
日中の一番生産性の高い時間を会社に捧げるのだ。
ここの時間が無駄だと感じるなら、どんな時間術も意味がない。
そして会社の時間のほとんどは、自分だけで決められるものではない。
周りの人間や組織の慣習によって、デフォルトで会社の時間の使い方は決まってきてしまうのだ。
だから、大きな時間の無駄を改善が最優先だろう。
「会社を辞めよう」は言い過ぎというか急に実践できる人はほぼいないだろう。
「会社にいる時間を有効なものにする」を心がけるのが大切だと思っている。
意味のない会議をキャンセルしたり、チャットの通知を切ったり、できることはけっこうある。
ついでに89個目のワザは
「余計な予定は入れるな」
だ。
普段、頑張って時間術を駆使したとしても、予定一個入れば拘束時間だけで4〜5時間はかかる。
準備に1時間、移動に1時間、飲みに3〜4時間、飲みのアフターフォローや頭の切り替えに3時間。
こういう大きな時間の投入をまず改善しなければ、どんな素晴らしい時間術も焼け石に水となる。
家計の見直しをするときに家賃20万の家に住んでるのに日々の野菜のお金を気にしてもあまり意味がないように、時間の見直しをするときは大きな時間の改善が必須だ。
世の中の時間術系の本は大量に読んできたが、ここで述べた88個目、89個目のワザに触れているものはほぼないので、実践できればとんでもないライフハックになるだろう。その実践が一番難しいから誰も紹介しないのだとは思うが。
- 作者: ジェイク・ナップ,ジョン・ゼラツキー,櫻井祐子
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
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