「こんにちは、コロナ明けの未来からやってきました」



こんにちは、ヒデヨシです。

友達がいないので一人でZoom飲み会をやっていたら、突然「未来から来た」とのたまう人物から連絡がありました。


何を言ってるのかわからねーと思うが、僕も何が起こったのかわかっていません。

ただ一つだけわかるのは、僕のパソコンの画面に映っている人は未来人だということです。


せっかくなので、未来の話を聞いてみました。


* * *


──お兄さんはどちらからいらしたんですか?

「5年後の未来ですね。西暦でいうと...2025年かな」


──街の様子はどうですか?

「いたって普通ですよ。みんな普通に出歩いてます。

コロナのことを話す人も今ではほとんどいないですね。

あ、少し前にクラブだとか音楽フェスとかが復活しました。

3密業種の復活までにはかなり時間がかかりましたね」


──何か社会の様子は変わりましたか?

「いや、普通に通勤してるし、会議もしてます。

あの頃は『在宅勤務が主流になって、都会の魅力は相対的に落ちる』なんて言われてましたけど、そんなことはないですね。

あ、でも週に何回かは在宅勤務を選べるようになりましたので、多少は変わったと思います」

「あと、海外旅行に行きづらくなった分、国内旅行がめっちゃ流行ってますね。

早いうちに国内旅行のブログでも立ち上げておくと流行りに乗れるかもしれません」


──意識が高い人達はPost COVID-19の世界はリモートワークの世界だとか言ってますが...

「あ、NewsPicksですね(笑)NewsPicksは今でもありますが、良くも悪くも2019年頃の“意識高い風潮”はなくなりましたね。

新型コロナという圧倒的に悲惨な現実を目の前にして、地に足つかないフワッとした言論は人々に響かなくなったようです。

あの頃の意識高い言論は好景気に支えられたものだったのでしょう。

社会に余裕がないとフワフワした議論を楽しむことはできません」


「っていうか、プログラマーとかなら成果物をコミットすればフルリモートでも成果出ると思います。

たとえば、全世界の社員がフルリモートで働くGitLabのようにね。

でも、会社って全てが合理的に回ってるわけではないですよね。

根回しだったり、調整だったり、ちょっとした雑談だったり、顔を合わせて伝えなければ非効率になることや、伝わりにくいことってあるじゃないですか。

古い考えと言われるかもしれませんが、在宅勤務を強制されて逆に対面コミュニケーションの大切さに気付きましたね。

もちろんメリハリは大切です。在宅でこなせる業務は在宅でやるようになりました」


──都心に人は戻りましたか?

「はい、人でいっぱいです。

今から恵比寿で街コンに参加してきます」


──2020年では田舎への回帰が始まる、なんて言われてましたが...

「若者が都会に憧れるのって明治時代からずっと続いてきたんですよ。

コロナが5年続くならさすがに“人がいない東京”から離れていたと思いますが、1年と半年くらいで終わったんで。

やっぱり人がたくさんいるところで夢を追いかけたいですね」


──ありがとうございました。2020年の日本人に向けて一言お願いします

「喉元を過ぎた熱さを忘れられるのは人間の悪徳であり、美徳でもあります。

2019年に誰もSARSや新型インフルエンザの話をしなかったように、“新型コロナ”という単語が出てこない日は必ず来ます。

明けない夜はないし、終わらない感染症もありません。

それでは聞いてください。

私達の世界では46歳になった浜崎あゆみの


“SEASONS”


『今日がとても悲しくて

明日もしも泣いていても

そんな日々もあったねと

笑える日が来るだろう』


というわけで、明日を信じて頑張ってください」


ブツ....!

ブーン...


な、なんだったんだろう...

あれ、また新しい着信が......



* * *

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着信があったお姉さん

──お姉さんはどちらからいらしたんですか?

「2030年から来ました」


──2030年の未来はどうですか?

「とにかく税金が高いです。

2020年に使われていた言葉でいうと、私はいわゆる『バリキャリ』なんですが、高所得層の会社員の税金が大変なことになってますね」


──どうして税金がそんなに高くなっているんですか?

「2020年に新型コロナが流行したときに、たくさんのお金をばらまいたからです。

お金は天から降ってくるわけではないので、どこかでツケを払わなければなりません。

また、1947年〜1949年のいわゆるベビーブームの時に生まれた団塊世代が2025年に後期高齢者(75歳)になり、社会保障費がかなり上がったのも影響が大きいです」


──つまり私達は未来の若者に負担を先送りしたというわけですね。

「そうですね。私の場合は2020年当時は高校生でした。

コロナに貴重な青春を奪われ、成人してからは税金によって富を奪われています。

2020年当時に意思決定した人たちの中に、今も現役の人は一人もいません。

あの頃は仕方なかったと思いますが、人間、未来の誰かの負担まで考えるのは難しいものなのですね」


──2020年の今は「こんな地獄は早く終わってくれ」とみんなが思ってますからね...

「ひどい地獄を抜け出したい気持ちはわからなくもありません。

ですが、高齢世代がひどい地獄を抜け出した後の未来で、私達の世代はぬるい地獄を生き続けることになります。


一度緩めた財政はどこかで締めなければいけません。

ですが、次の選挙が大事な政治家には財政を引き締めるインセンティブはありません。

景気対策のためには仕方がなかったと思いますが、バラマキのツケは将来必ず払わなければなりません。

2020年時点で30〜40代の人は『逃げ切れない世代』であることは自覚しておいてください」


ブツン...

なんか厳しいお姉さんだったな。

仕事できる女性の性格のキツさは10年後も変わらないんだろうか。

しかし若いバリキャリに会議で詰められる未来...悪くない...悪くないぞォ...!

ん、新しい着信が...


* * *

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連絡してきたおじさん

──おじさんはどちらからいらしたんですか?


我从15年后的未来」


──は?

「我从2035年的未来来到了这个世界」


──いや、日本語でお願いします。

「あ、失礼、私は2035年の未来からやってきました」


──なぜ中国語を...?

上司が中国人だからです。

日本の優良企業もけっこう中国企業に買収されましたよ。

今は完全に中華の時代ですね。

あ、5年前に『キングダム』も完結しましたよ。

振り返れば2020年の新型コロナ騒動が『中華の時代』を加速させた気もします」


──2020年が中華の時代を加速させた...とは?

「新型コロナが流行した2020年、米国も欧州も封じ込めに失敗し、経済活動の再開が遅れに遅れてしまいました。

死体の山を築きながら思い切った経済活動を始めることはできません。

その間、新型コロナを封じ込めた中国は経済活動を活発化させ、周辺の国々への影響力を高めていったのです」


──中国が強くなったというより、欧米が弱くなったということですね。

「そうですね。それに日本はグダグダと中途半端な対応を延ばし延ばしでやってきたので、

『封じ込められず、かといって思い切って経済を力強く再開させることもできず』

の状態が続きました。

いわゆる(徹底されない)“自粛の要請”だったり、“行動の変容をお願いする”だったり、はっきりと指針を示さず戦力の逐次投入を続けていたので、死者数は欧米に比べて少なかったはずなのにダメージは深刻になりました」


──2020年の我々がやるべきことって何でしょうか?

「感染症に対して個人ができることは少ないでしょうね。

手を洗う、人との距離をあける、よく寝てよく食べ、抵抗力をつけるくらいでしょうか。

国家が方針を示さないとどうしようもないですね。

自粛期間は人と遊んだりもできないしょうから、心をかき乱すインターネットからはできるだけ離れて、今のうちに語学でもやっておくのがいいのではないでしょうか」


──2035年の未来に生きる日本人は幸せですか?

「幸せそうな人もいれば、不幸そうな人もいます。

幸せはいつだって、自分の頭で考えなきゃ見つからないものですよ。

何が幸せかなんてのは人によって違うんだから」


「いま人生に絶望して辛い人は、『夜と霧』という本を読んでみてほしいですね。

アウシュビッツの収容所に向かう護送車の鉄格子の隙間から美しい夕焼けを見ることができた。

それだけでも人間は幸せになれるものなんですよ。

絶望の中で希望を見いだせる人こそが、幸福な人です」


夜と霧――ドイツ強制収容所の体験記録

夜と霧――ドイツ強制収容所の体験記録


──ありがとうございました。2020年を生きる日本人にメッセージをお願いします

「人生、なんとかなる。地獄はずっとは続かない。お前はきっと幸せになる。

⋯⋯みたいな感じですかね。

辛い時期はずっとは続かないから大丈夫です。

景気と同じで、良いときもあれば悪いときもあります。

前向きにいきましょう」